苦境の楽天モバイル、プランを増やす可能性は

ただアハモの影響は、大手2社よりむしろ新規参入の楽天モバイルやMVNOがより多く受ける可能性が高い。なぜならこれらの企業は、低価格を武器に大手から顧客を奪って成長してきたからだ。アハモの登場を機に大手3社間の料金引き下げ競争が加速すると、低料金を求めるユーザーが大手3社から乗り換える魅力が薄れてしまう。

とりわけ楽天モバイルは厳しい。同社唯一の料金プランで5Gにも対応した「Rakuten UN-LIMIT V」の料金は月額2980円とアハモとまったく同じ。自社エリア内であれば使い放題というメリットはあるが、肝心のエリアは整備途上で「全国どこでも」というわけではない。楽天モバイルは21年3月時点で人口カバー率70%を達成するとしているが、大手3社には遠く及ばない状況がしばらく続く。

楽天モバイルは20年4月に本格サービスを開始、月額2980円で自社エリア内ではデータ通信が使い放題の「Rakuten UN-LIMIT」を打ち出したが、エリア整備が途上であるためユーザーの確固たる支持を得たとは言い難い

それゆえ楽天モバイルは20年4月のサービス開始時から、先着300万人に1年間、Rakuten UN-LIMITの料金を無料にするキャンペーンを実施しているが、21年4月以降は無料キャンペーンが終了するユーザーが徐々に出てくる。無料期間が終了し、楽天モバイルのインフラに不満を抱くユーザーが、同じ料金で全国で快適に使えるアハモなどに乗り換える可能性はあるだろう。このため楽天モバイルは、より安価な料金プランを追加して差異化を図るなど、新たな戦略が求められることになりそうだ。

インターネットイニシアティブやオプテージ(大阪市)など、独立系のMVNOにもアハモの影響は少なからず及ぶ。NTTドコモはアハモより低料金で、よりデータ通信量が少ないプランをMVNOと協力して展開していく方針を示している。MVNOは少ない容量でいっそう安い料金プランに生き残りの道を探ることになるかもしれない。

NTTドコモはアハモより小容量でもより安い料金を求める層は、自社ではなくMVNOと連携してサービス提供するとしている

菅首相はアハモの登場に際して「本格的な競争に向けて一つの節目を迎えた」と語っており、料金引き下げの現状にまだ満足しているわけではない様子をうかがわせている。政府からの料金引き下げ圧力は21年も続くと考えられる。ユーザーは各社の動きから目が離せない1年になりそうだ。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。