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50代のひきこもり 大切なお金の話、お小遣いもあげて

中高年のひきこもり(4)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

ひきこもり対応における親の役目は、本人が安心してひきこもれる関係づくり。子が親に弱音を吐けるような関係性になってこそ、ひきこもっている子の傷ついた心が癒やされ、凍った心が溶けていく。そして、次のステップである受診や支援機関へつながる段階へと進むことができる。具体的な対応の一つは対話を続けること、もう一つは「親亡き後のお金の話をきちんとしておくこと」と、精神科医の斎藤環さんはアドバイスする。最終回は、なぜお金の話が重要なのか、またライフプランの立て方、きょうだいの関わり方について、斎藤さんに伺う。

人間心理はお金があるほど働きたい気持ちが高まる

――斎藤さんは、「親亡き後のお金の話をきちんとしておくこと」が重要だとおっしゃっていますが、ひきこもりの対応に「お金の話」が重要なのはなぜでしょう。一人前として扱うということでしょうか。

斎藤さんよく「お金があると分かると、働く意欲をなくすのではないか」と心配する親御さんがいますが、私は逆だと思います。意外かもしれませんが、「余裕があると分かったので働く気になりました」と話す当事者も少なくありません。

お金は欲望の種なので、お金がない生活を続けていると、欲望そのものが消えてしまいます。小遣いをあげないということは、「社会参加をしなくていい」というメッセージになるのです。コロナ禍で消費を控えている人も多いでしょう。ですが、ひきこもっている人には、消費を促すことが重要です。小遣いをきちんとあげてほしいということです。とはいえ、無制限にあげるのもよくありません。

私が主催する家族会では月当たり平均2万3000円くらいが目安になっているようです。ここには通信費、交通費、服飾代、本代が含まれています。「いらない」と本人が言っても小遣いは、できれば現金であげるようにします。働いていないから悪いと思って受け取らない当事者もいますが、部屋に置きっ放しになっていても毎月渡します。本人名義の通帳を作り、振り込みをする方法でも構いません。用途はなんでもいい、1日で使い切ってもいい、無駄に使っていいお金を与えることが重要です。

ひきこもりに限らず、人は、100%義務感で働くのは無理なのです。自分自身がそうではありませんか? お金に困るほど、意欲や動機が弱まってしまう。むしろお金に困っていない方が、ゆっくり考える時間が生まれ、より良いキャリアを築きたいという、就労動機が高まるという仮説があります。親がベーシックインカムを保証してあげると、やりたいことをしたい、経験してみたいという欲求が湧いてくる。義務感で働き始めても長くは続きませんが、興味や好奇心で働ける仕事は、続くのです。

今すぐやってほしいライフプラン作り

――斎藤さんは、親子でライフプランを作ることも勧めています。斎藤さんと共著があるファイナンシャルプランナー(以下FP)の畠中雅子さんも「親も子も高齢化しつつある家庭では、働けない状態が続いても、お子さんの生活は成り立つのかを検討することをお勧めします」とおっしゃっていますね。

斎藤さん ええ。お金のシミュレーションは今すぐやってほしいと断言できるくらい重要なことです。日本の家庭は、金銭、セックス、死の話をしなさすぎるのです。これらは三大タブーのように思われていますが、少なくともお金と死後の話は、早い段階からやっておいてほしいのです。

お金の話をするということは、まともな人間として、一人前に扱われるということ。治療の一つと言ってもいいくらい大事なことです。実際に、家庭内暴力で荒れていた人の家庭にFPが入って、お金の話をひたすらしていたら暴力が消えてしまったというケースもあるくらいです。

「うちはお金がないから働いてもらわないと困る」と説得することは脅しであって、子ども扱いをしているだけです。そうした親御さんのやり方はまっとうで、おかしいことではありません。ですが、ひきこもりの対応としては全く効果がありません。ひきこもり当事者は、節約家であることも多い。むしろ、親の資産管理を子に任せてもいいくらいです。

家庭でお金の話をする際は、必ずひきこもり当事者に参加してもらい、FPに引き合わせることが大事です。子として家計の話に参加することは当然の権利ですから。

――具体的にはどのような話し合いが理想ですか?

斎藤さん 今の資産状況を管理し、平均余命の間に想定される収入支出を計算し、親が老後に必要な資金も計算し、本人にどれくらい残せるかをFPに試算してもらいます。すると、「この生活ならあと何年間は現状維持できるけど、ここからは家計が持たないから福祉に頼ろう」、または「あなたが3万円稼いだら10年、5万円稼いだら15年、家計を持たせることができるよ」などと具体的な対応の話ができるようになります。親は、「共倒れになる前に、私たちはシェルターを確保するから、あとは自分でやってね」と言えるようになるんです。このように「見える化」した方が、子のモチベーションとしては上がります。お金のシミュレーションは、就労の動機付けになるのです。

大事なことは、利害関係のないFPに入ってもらうこと。きょうだいや親戚のおじさんに仲裁や調整役を頼んではいけません。ひきこもり期間に関係なく、お金の話をするタイミングは早ければ早いほどいいでしょう。親の定年退職を機にやってみるのも自然な流れです。当事者家族会に参加して、情報を得るのもいいでしょう。

きょうだいは関わらない 親亡き後は福祉に委ねよう

――家庭の中で、きょうだいの対応はどうしたらいいですか?

斎藤さん 親亡き後のことについて、きょうだいも交えて一緒に考えるのはよいことです。葬式の手配、相続の手続き、相続放棄をするのかといった点について、親が生きているうちにできるだけ早く話し合ってほしいと思います。ただし、ひきこもり当事者の生活について、きょうだいは一切関わらないことです。自分が支えてあげたいと思ったとしても、金銭的なサポートはせずに、両親に任せることです。親御さんが亡くなった後の本人の生活は、福祉に任せましょう。

関わりを断つのは忍びないなら、たまに会って雑談に付き合うくらいはいいでしょう。本人を責めない人の存在はプラスになります。でも、経済支援には手を出さない、説教もしないことを原則にしてください。つまり、無責任に関わってくださいということです。親に詰め寄るのもしないほうがいいでしょう。

親亡き後、きょうだいが自身の家庭や人生を犠牲にして面倒を見なければいけないというような状況は、悲劇を生みます。親御さんにも、きょうだいに責任を負わせないでくださいとアドバイスしています。

――なるほど。ありがとうございました。親の価値観で物事を進めようとすると、逆効果となる可能性が大きい。正しい導き方を知ること、共通認識のもと親御さんが対応していくことが大切だと分かりました。ひきこもり問題を解決していく上での土台となる対話を始めることも、小遣いを与えることも、すぐに実践できることですね。最後に、ひきこもり支援の課題があるとすればどのようなことでしょう。

斎藤さん 直近の課題は相談窓口を、さらに手厚くしていくことです。就労以外にも、様々な支援が用意されてほしいところです。たとえば訪問支援、アウトリーチ型の支援がまだまだ不足しています。本人が同意していない場合には、部屋の外から一言声をかけるといった程度の控えめな働きかけでもいいので、あると望ましいと考えます。説得やアドバイスではなく、マイルドなお節介程度にとどめ、時間をかけて丁寧に関係性を作っていく必要があります。

高齢者介護でヘルパーさんがお宅に伺うと、そこにひきこもっている高齢の子がいる。しかし、現状では高齢者介護のスタッフは、気づいても何も支援ができないのです。また、ここ数年で、障害者の就労は格段に改善しましたが、障害者手帳を作らないと支援が受けられません。手帳がなくても困っている「子」はいるので、区別せず支援してくれたら、もっと多くの人を救えるのにと思います。障害者支援のノウハウは、本当はスキルがあるけれどそれを生かす機会がないひきこもり当事者には、とてもいい福祉になると思います。

現状では親が相談機関につながることが、まず最初のステップです。ライフプランを検討した結果、本人を支えられないと分かったら、福祉サービスの利用を考えます。経済的な限界とセットでなら、本人も同意してくれると思います。社会参加の可能性を探るためにも、親亡き後に本人が、生きていくのが難しくなるほど追い詰められないようにしておくことです。どのような福祉制度が活用できるのかについても、自治体の「ひきこもり地域支援センター」の窓口で相談してください。

●ひきこもり地域支援センターの設置状況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000515493.pdf

(ライター 及川夕子)

[日経Gooday2020年11月17日付記事を再構成]

斎藤環さん
精神科医、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。1961年生まれ。筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、「ひきこもり」の治療、支援ならびに啓発活動。著書に『中高年ひきこもり』(幻冬舎新書)、『オープンダイアローグとは何か』(著訳、医学書院)、『新版ひきこもりのライフプラン「親亡き後」をどうするか』(共著、岩波ブックレット)ほか多数。テレビゲームやアニメなど、サブカルチャーにも造詣が深い。

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