本当の流行は「読み」で分かる、「表記」とは異なる実像

最後に名前の読みの人気ランキングを見ておこう。実は名前の表記の人気ランキングだけを眺めていても、実際の流行がうまく観察できないことが多い。名前の表記の仕方にバリエーションが増え、流行の変化がランキング上で拡散・埋没しているからだ。

それには、名付けの方法の変化が大きく関係している。

昔は漢字の意味や字面の好みからストレートに名前を付けることが多かったが、今は「まず音感やリズムで好みの読みを選び、その後で漢字を当てはめる」という方法で名付けする親が増えているという。名付けのマニュアル本がそうした方法を紹介しており、それを参考に新生児の名前を付けているのだ。

「むしろ読みが同じだからこそ、表記の違いで他人とは異なる個性を出したい」という心理も働き、同じ読みなのに表記が異なる名前が増殖する原因になっている。たとえば「はると」の表記は「陽翔」を筆頭に「陽斗」「遥斗」「晴翔」「悠翔」「晴斗」「悠人」「悠斗」「遥人」「春翔」「晴人」「大翔」「陽人」「春斗」「暖人」「遥翔」「陽大」など33種類以上もある(2020年)。

「まず『はると』という読みを決めた後、漢字を当てはめる」というやり方で名前を付けている様子がうかがえる。だが「ゆうと」「ひろと」などと読める名前も混在しているので紛らわしい。

昔は「1つの表記に読みが1つ」という原則が多かったが、「最近は字面を見ただけでは読み方がなかなか分からない」と嘆く人も多い。学校や病院などでトラブルになるケースもありそうだ。

ゆうき→ゆうと→はると、「はると」黄金時代はまだ続く?

名前の読み方の人気ランキングを見ると興味深い。音を軸にした別の流行の変遷が浮かび上がる。

表は明治安田生命保険が調査・公開を始めた2000年以後の読み方の人気ランキングの推移をまとめたものである。流行が「ゆうき」→「ゆうと」→「はると」と大きく変化しているのが分かる。

「はると」は09年以来、12年連続で首位に君臨し、今も黄金時代が続く。2位は「そうた」で04年以降、根強い人気を維持。一方、00年から04年まで1、2位コンビだった「ゆうき」と「ゆうと」は徐々に順位を下げて勢いを失いつつある。「ゆうき」は12年を最後にトップテンから脱落。高い人気を誇ってきた「ゆうと」も今年は9位に後退した。今後の動向が注目される。

ランキングは時代に応じて生き物のように変化する。名前の流行も、ファッションと同様、興亡を繰り返している実像が分かって面白い。次回は女児編をお届けする。

(編集委員 小林明)

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