「狙い目の業界、狙い目の仕事」という幻想

次によくある質問が「いま狙い目の業種や仕事はありますか?」。

この問いに素直に答えるとすると、IT(情報技術)業界やクラウドサービスのBtoB営業、薬剤師や建設関連の技術職だと答えることになります。いずれも、需給バランスがひっ迫していて、求職者数に対して求人数が圧倒的に多い「売り手市場」の傾向があり、各領域での経験や資格、スキルが合う人にとっては「狙い目」といえます。しかし当然ながら、大多数の人には無関係です。

また、狙い目の意味が、年収などの条件が良い、会社が安定しているなど、働く側にとって心理的安全性が高いという意味だとすると、それはそれで応募者が殺到するはずなので、勝率は極めて低いものになります。そもそも「狙い目だから応募する」「条件がいいから応募する」などの視点で転職先を選んでしまうと、結局は長続きしないことも多いのでお勧めできません。

やはり同業・同職種? 自分の可能性を決めつけすぎない

3つ目の視点も、転職検討者の会社選び、仕事選びについてです。

30歳を過ぎると、経験や知識がある程度たまってくるので、結果的にどうしてもこれまでのキャリアを生かしていきたいという気持ち(サンクコスト)が日に日に強くなります。

今さら別の業界に行っても、つぶしが利かないんじゃないかと考えて、結果的に「同業界・同職種」が暗黙の前提になってしまっている人が多い。これが最大の落とし穴です。

自分が過去の経験で培ってきたビジネスパーソンとしての普遍的なスキル(ポータブルスキル)をとらえて、それを売り込める先を探す手法で、異業種や未経験の職種であっても選択肢を広げて、可能性を最大化できるかもしれません。

「やりたいこと」探しではなく「生き生きできる居場所」を探す

転職の経験がない人ほど、転職活動を始めるには、「やりたいことを明確化しなければいけないのでは?」という強迫観念を持っていたりします。確かに、自分が希望する業界や職種、任務や権限など条件が定まっているほうが探しやすいことは間違いありません。

ただ、それが明確でない場合に、無理やりやりたいことをひねり出してまで時間をかける必要はありません。

特に、知人や友人経由で仕事を紹介してもらう場合や、転職エージェント経由で転職活動をする場合は、あまり限定せずに「こういう経験と実績を持つ自分は、どんな会社や仕事が合うと思いますか?」と相談してみるのも一つの方法です。

経験が長いエージェントであれば、過去の成功事例や失敗事例の情報も多く持っているはずなので、自分で求人サイトを見ている時には絶対にたどりつかないような求人を提案してくれる可能性もあります。

ポイントは、無理にやりたいことを深掘りせずに、あくまでも「自分が生き生きと働けることがゴール」であることを忘れず、余裕をもって選択肢を探していくことです。

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入社時点の条件より、入社後3年の見通しが重要
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