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温暖化対策に朗報か 注目されるメタン排出少ないウシ

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ナショナルジオグラフィック日本版

令和3年(2021年)、干支(えと)は丑(ウシ)だ。言うまでもなく、ウシは乳製品や食肉として欠かせない家畜である。ただ、ウシが温室効果ガスであるメタンを排出する生物であることは忘れられがちだ。持続可能性を考え、数年前からメタン排出が少ないウシの研究が進められている。そこで、過去のナショジオの記事から、低メタン牛に関する記事を年初に紹介することにしよう。

◇      ◇      ◇

草を食べるウシは、草の繊維質を複雑な消化器系を使って分解することで、炭水化物を得ている。この消化の過程で生じるガスが、温室効果ガスとしても知られる大量のメタンだ。米環境保護庁(EPA)の推定では、米国が排出するメタンの約25%がウシによるものだという。たかがげっぷとは侮れない量なのである。

メタンが大気中にとどまる時間は二酸化炭素(CO2)より短い。しかし、その温室効果は二酸化炭素に比べてはるかに高い。気候変動の影響を軽減しようとするなら、メタンの排出量を減らすことは重要な目標だ。

19年に、学術誌「Science Advances」に発表された研究で、ウシを選択的に交配することで、ウシから排出されるメタンを削減できる可能性が示された。

この研究によれば、ウシの腸内にはメタンを生産する微生物がいて、その多くが代々受け継がれているという。つまり、メタンを生成する微生物が活発にならないような遺伝的形質をもつウシに改良していけば、「環境に優しい」ウシが増えるというのだ。

世界では、牛肉や乳製品の消費は過去10年連続で増えており、多くの国が人口増加に見合う食料を確保しつつ、温室効果ガスの排出量を削減しようと奮闘している。それだけに、今回の研究に科学者は期待を寄せている。

ヨーロッパのウシ1000頭の調査で判明

12年、欧州連合(EU)は家畜とメタン排出量の関係を調べるため、30人を超える科学者チームに調査を依頼した。

この研究プロジェクトは、ウシ、スイギュウ、ヤク、ヒツジなど、反芻(はんすう)動物を指す英語「ルミナント」にちなんで、「ルミノミクス」計画と名付けられた。反芻動物の胃は4つに分かれているが、食道を通った食物が最初に入る胃が「瘤胃」(りゅうい、ルーメンとも)だ。この胃で食べた草を発酵させる。ある程度消化すると、次の胃へと送るのだ。この発酵の過程で発生するのがメタンだ。そうしてできたメタンの95%は、げっぷによって大気中に排出される。

瘤胃におけるメタン生成プロセスはこうだ。まず草など炭水化物を細菌が分解(発酵)する過程で水素が出る。この水素と二酸化炭素から、メタン菌という古細菌がメタンを生成する。

 これまでも、ウシにはメタンの生成を制御する遺伝子群があるのではないかと考えがあったが、詳細はよくわかっていなかった。

論文の著者、英アバディーン大学のジョン・ウォレス氏は、「三角形のように」考えるといいと説明する。「ウシの反芻は三角形の頂点のように、3つの要素があります。第一にメタンの排出量、次に炭水化物を分解する瘤胃内の菌の状態、そして最後が菌の宿主動物であるウシの遺伝子です。今回の研究の狙いは、この3つの要素の関連を調べることにありました」

研究は次のように行われた。まず、英国とイタリアのホルスタイン種、スウェーデンとフィンランドのノルディックレッド種の乳牛を対象とした。ウシの口に真ちゅう製の管を挿入して瘤胃の中の液体を採取し、原生動物、細菌、古細菌、DNAなどのサンプルを収集。ウシの呼気のサンプルも採取し、ウシのげっぷに含まれるメタン量を測定した。

この結果、ウシの瘤胃内にいる微生物の中から、次世代のウシにも受け継がれる「遺伝的な」菌を特定したとウォレス氏は言う。また、サクシノビブリオなど、ウシに普通に存在するいくつかの菌は、生成するメタン量が比較的少ないことがわかった。

環境への負荷が小さい酪農へ

「ウシの遺伝と微生物とのかかわりがわかった今、乳量を向上させながら、温室効果ガス排出量も削減する性質を併せ持つウシを育種できると考えています」とウォレス氏は話す。「ウシの子にメタン生産能が低い細菌叢(さいきんそう:微生物の集まり)を移植できれば、死ぬまでウシの胃に残り、消化の過程で発生するメタン量は今よりずっと少なくできるでしょう」

米カリフォルニア州では、メタン排出量を40%削減するという目標を掲げている。低メタン牛が増えれば、「解決策の1つになり得る」と話すのは、米カリフォルニア大学デービス校のエルミアス・ケブレアブ氏だ。

同氏は、今回の研究結果に興奮したと言い、実用化にはまだ数年かかるだろうが、素晴らしい第一歩だと述べた。ケブレアブ氏自身の研究テーマは、ウシのメタン生成量に対する餌の影響だ。既に18年、飼料にメタンを添加すると、メタン排出量が大幅に減少することを発見した。

ただし、「メタン排出量が低いウシを育てるように、農家を説得するのは簡単ではない」とケブレアブ氏とウォレス氏は口をそろえる。農家は、牛乳の生産量や体の大きさなど経済的利益を優先しがちだからだ。特に、明確な温室効果ガス排出量の削減目標がない地域では、農家を経済的に優遇する必要があるだろう、とケブレアブ氏は言う。

(文 SARAH GIBBENS、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年7月6日付の記事を再構成]

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