2021/1/17
「S8」の燃費値はWLTCモードで7.8km/リッター。今回の試乗では271.9km走行し、満タン法で6.7km/リッターを記録した

いっぽう「ダイナミック」モードではコーナリング時にはまるで逆ロールしているかのように(実際に一定条件下では“カーブチルティング”が作動する)、フラットな姿勢を維持、横Gだけが高まっていく。

人によってはロールしないことに最初は違和感を覚えるかもしれないが、フラットさのレベルはあらかじめ設定することも可能だ。何しろ、このクルマはダイナミックオールホイールコントロール(4WS)に加えて、トルセンデフの進化型のセルフロッキングセンターデフを使う正統派のクワトロであり(通常時は前後40:60、状況に応じて最大70:30から15:85まで可変制御)、リアにはスポーツデフも備わっている。

最近では電子制御クラッチを採用する“クワトロ”も増えてきているが、4輪が常に機械的に結ばれているクワトロは、コンディションが過酷になればなるほどその真価を発揮する。山間部が多い県の知事さんなら、その走破性は必須のはず……いや、もうこの辺にしておきます。

バルコナレザーを用いた「コンフォートスポーツシート」と呼ばれる前席には、ヒーターやベンチレーションのほか、マッサージ機能も備わっている
後席の左右には、シートの高さや前後スライド、座面角度といった調整機構に加え、空気圧式4ウェイランバーサポートやメモリー機能などが備わる

洗練の力ぞ技ぞ

2基のツインスクロールターボをVバンクの内側に収めた4リッターV8直噴ツインターボエンジンは、フォルクスワーゲン/アウディグループ内で広く利用されているものだ。「ランボルギーニ・ウルス」ほどではないが、ポルシェの「カイエン ターボ」用よりもさらに強力な最高出力571PS(420kW)/6000rpmと最大トルク800N・m(81.6kgf・m)/2000-4500rpmを発生する。

これはA8の最強力版「60 TFSIクワトロ」用ユニットよりも111PSと140N・m強力だ。しかも48V駆動のBAS(ベルト駆動オルタネータースターター)を備え、クルージング時には頻繁にコースティングするし(しかもエンジン停止とエネルギー回生を巧妙に使い分ける)、V8の半分の気筒を休止するシリンダーオンデマンドも付いている。

4リッターV8ツインターボエンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムが組み込まれたパワーユニットは最高出力571PS、最大トルク800N・mを発生。8段ATを組み合わせている
荷室容量は505リッターで、これはベースとなった「A8」と同じ数値。後席背もたれのセンターには、スキーホールが備わる。バンパー下の足の動きで作動する「オートマチックトランクリッド」も標準装備されている

ボディーはアルミニウムやCFRPなどを多用する最新のASF(アウディスペースフレーム)構造である。全長ほぼ5.2m、ホイールベース3mという巨大な4WDサルーンだけに車重はおよそ2.3tにも及ぶが、フルスロットルを与えると野太く迫力満点の音とともに猛烈な加速を見せる。0-100km/h加速は3.8秒という。

だが、フラッグシップサルーンとしてのS8の神髄はその高性能と、這(は)うような速度でも徹頭徹尾滑らかに静かに走る上品な挙動を両立させていることだ。ふさわしい人が適切に使えばとんでもないパフォーマンスを発揮する。それでいて価格はこちらも2000万円程度である。リーズナブルというよりお値打ちではないだろうか。

(ライター 高平高輝)

■テスト車のデータ
アウディS8
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5185×1945×1475mm
ホイールベース:3000mm
車重:2290kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:571PS(420kW)/6000rpm
最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)265/35ZR21 101Y/(後)265/35ZR21 101Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
燃費:7.8km/リッター(WLTCモード)
価格:2010万円/テスト車=2269万円
オプション装備:エアクオリティーパッケージ(9万円)/パノラミックルーフ(25万円)/アシスタンスパッケージ<アダプティブウインドスクリーンワイパー、センターエアバッグ>(15万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム<23スピーカー>(82万円)/カラードブレーキキャリパー<フロント&リア>(15万円)/コンフォートパッケージ<インディビジュアル電動シート[リア、3人乗車]+コンフォートヘッドレスト[リア]+ランバーサポート[リアサイドシート]+マトリクスLEDインテリアライト+リアシートリモート+リアミュージックインターフェイス>(40万円)/アルカンターラヘッドライニング<ブラック>(25万円)/HDマトリクスLEDヘッドライト アウディレーザーライトパッケージ<アウディレーザーライト+OLEDリアライト>(48万円)

[webCG 2020年12月11日の記事を再構成]

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