2021/1/17
「S8」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5185×1945×1475mm、ホイールベース=3000mm。車重は2290kgと発表されている

だが、そのスーパーエリートな雰囲気は、極めて高度で精密なエンジニアリングに裏付けされている。くだんの県知事さんを含めて、そういう人にこそ、アウディの神髄はひたむきな技術信仰にあると言いたい。S8は、半世紀近く使われているあの有名なブランドスローガン「Vorsprung durch Technik」(日本語では「技術による先進」)を体現するものである。

プレディクティブアクティブサスペンションの「プレディクティブ」とは予測できるという意味だが、実はこのシステムこそ新型S8が満載する最新技術の真打ちともいえるものだ。ベースモデルのA8にも電子制御可変ダンパーに加えてマルチチャンバー式のアダプティブエアサスペンションが標準装備されるが、さらにプレディクティブアクティブサスペンションになると、4輪のスタビライザーリンクに備えられた電動モーターがホイールストロークを個別にコントロールするという。最大1100N・mという強力なモーターはマイルドハイブリッド用の48V電源で駆動される。

アクティブサスペンションという名前自体は以前から使われているが、S8のシステムはカメラに加えてフロントグリル下に備わるレーザースキャナーのデータも活用するのが最大の特徴だという(市販車へのレーザースキャナー装備はアウディが世界初)。電動駆動ゆえの素早く緻密な制御も大きなメリットだ。

ちなみに、カメラとミリ波レーダーに加えてレーザースキャナーのデータを“フュージョン”することで、完全自動運転にさらに一歩近づく(レベル3相当)というのがS8/A8の大きなトピックだったのだが、本国ドイツでも法整備が整わずまだ市場投入されていない。現状でも隣のレーンから急に割り込まれるような場合にレーザースキャナーは威力を発揮し、さらに車両全周を監視する各種センサーが側面衝突の可能性を検知した場合には、衝突される恐れのあるボディー側の車高を80mm上昇させ、より強固なサイドシル部分で衝撃を受け止めてダメージを軽減するシステムも備わっている。

インストゥルメントパネルのデザインは「A8」に準じたもの。メータークラスター用に12.3インチ、インフォテインメント用アッパースクリーンに10.1インチ、その下の空調操作や手書き文字入力用に8.6インチの液晶パネルを用いている。機械式スイッチを極力排したモダンなデザインが印象的だ

これぞマジックカーペット

スタンダードのA8は、スピードが増せば増すほどしなやかさとフラット感が強調されるタイプでもちろん快適だが、低速では路面の凸凹をコツコツと律義に伝えることもあった。だがS8は、特にドライブセレクトに加わった乗り心地最優先の「ショーファー」モードを選ぶと、低速でもこれまでに経験したことがないほど滑らかに、遠くでかすかに聞こえてくる程度に路面の不整をやり過ごしていく。

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