募るJ-POPへの危機感 K-POPは世界標準(川谷絵音)ヒットの理由がありあまる(28)

日経エンタテインメント!

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今、世界中のヒットチャートを席巻する「K-POP」。日本も例外なくK-POPの勢いに飲まれています。今回は、1stアルバム『THE ALBUM』を10月に発売したBLACKPINKに焦点を当てたいと思います。

さらっと今までの曲を耳にしていた僕のイメージは、「EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)的な曲が多いなぁ」というもの。しかし、アルバム1曲目の『How You Like That』を聴いて衝撃を受けた。もちろん、EDMは中心にあるのだが、中近東風のメロディーをヒップホップ、EDMサウンドにマッチさせていて、このアレンジには思わず唸ってしまった。しかも様々なジャンルを足し合わせているのに、うるさくなっていない。逆にシンプルなのだ。そう感じさせる削ぎ落とした編曲の腕が光っている。

この連載では日本のヒットチャートについて書いてきたので、これには言及しないといけない。J-POPとK-POPの違いについてだ。まず根本的に違うのは、J-POPでは歌を乗せるためにビートが存在するが、K-POPではビートと歌が同時に補完し合いながら鳴っている。分かりやすく言えば、J-POPは、はっきりと歌を押し出していて、K-POPはリズムと歌で曲を押し出している。

K-POPが勝負をしているグローバルチャートでは、ヒップホップやEDM、R&Bだらけで、基本的にAメロ、Bメロ、サビのような、明確な展開はない。代わりにリズムとメロディーの反復、しかもコードもあまり変わらないことが多いのだ。

逆にJ-POPは、明確にメロとサビが分かれているし、Aメロ、Bメロで盛り上がりを作り、1番の聴かせどころをサビにするパターンがほとんど。だからJ-POPはサビを聴かないと曲が分からないし、といって頭をサビにしても、メロからの盛り上がったサビを聴かないと、曲の良さが分からない。長めに聴かないといけないのだ。しかし、K-POPのようなUSサウンドは役割分担がされていないため、どこを聴いても曲の良さが分かる上に、リズムが立っていて乗りやすい。まさにサブスク全盛期の今、BGMにもしやすいサウンドがトレンドなのだ。

実際、BTSの事務所の日本法人であるBig Hit Entertainment Japanの日本在住プロデューサー募集の応募要項には、「メロディーが鮮明で、ダイナミックな流れの起承転結がはっきりとした、定型化された曲の構造の音楽デモはご遠慮ください」と書いてある。これは暗にJ-POPはご遠慮くださいということだ。BLACKPINKの『How You Like That』もリズムと歌が合わさって、1つのメロディーになっている。他のアルバム収録曲を聴いてもJ-POPのように定型化された曲がない。

リリース間隔を空けても存在感

また、BLACKPINKは、リリースペースがかなりゆったりだ。シングルとシングルの間が1年も空いたりするこのやり方はカムバック商法というらしいが、ファンを焦らして、次のリリース時に熱狂を生み出す。誰にでもできることではない。このキャラの立った4人だからこそできるのだ。配信主体になった現在の音楽シーンではリリースペースがどうしても速くなる。配信はCDに比べ手間も少ないし、早く出さないと飽きられるかもという不安もあるからだ。そんななかリリース間隔を長く空けながらも、存在感を増していくBLACKPINKというグループは驚異的だ。

BLACKPINKやBTSが米ビルボードにランクインし、K-POPは世界が認める音楽ジャンルとなった。今作でも、セレーナ・ゴメスやカーディ・Bといった世界的スターとコラボし対等に渡り合っている。K-POPはアジア圏のアーティストに光を与えてくれた。これでJ-POPもどう変わっていくのか。僕もBig Hit Japanの日本在住プロデューサー募集の応募要項を見て考えることがあった。J-POPがダメだとかではないが、これでは世界で戦えない。変化の時が来ている。

川谷絵音
1988年12月3日生まれ、長崎県出身。ゲスの極み乙女。、indigo la End、ジェニーハイ、ichikoroといったバンドのボーカルやギターとして多彩に活動中。2月17日にニューアルバム『夜行秘密』をリリースするindigo la Endは、新曲『フラれてみたんだよ』を配信中。

[日経エンタテインメント! 2020年12月号の記事を再構成]

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