新型コロナウイルス禍で企業向け(BtoB)取引が大きな変革を迫られている。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進むなか、BtoBマーケティングはどのように進化するのか――。日本経済新聞社が新設した「NIKKEI BtoBデジタルマーケティングアワード」の表彰式にあわせて開催した専門家による討論に、その未来を探った。
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「NIKKEI BtoB デジタルマーケティングアワード」は日本企業のBtoBマーケティングの発展を支援する目的で新設した。第1回は大賞と市場創造や認知活動に対する「ブランディング賞」にアスクル株式会社の「データ×テクノロジーによる『売らないマーケティング』」、顧客の獲得・拡大に対する「デマンドジェネレーション賞」にブラザー販売株式会社の「ニューノーマル時代に対応したマーケティング戦略の見直しと実施」を選んだ。
アスクルはコロナ禍による衛生用品の買い占めに対応、業種や購買履歴を分析して本当に必要とする施設を特定。推定される必要数と在庫に応じて施設ごとに提供する商品と数量を決定し、医療機関などが必ず購入できるシステムを構築した。ブラザー販売はBtoBマーケティングによる成長をめざして2019年に専門グループを新設。施策の自社最適化をはかり、短期間のうちに大きな成果を上げるとともに、コロナ禍への対応を推し進めた。
表彰式は11月に開催。あわせて審査委員らによるトークセッションを2部構成で開いた。
音部氏は大賞を受賞したアスクルの取り組みについて言及。「リスクを踏まえながらパーパス(企業の存在意義)に従い意思決定できたことは素晴らしい」と評価した。
後藤氏は「デジタルというと先進的なイメージで捉えられがちだが、顧客が考えていることを把握して、本当に求められるものを提供するのが大切だ」と指摘した。
コロナ下でのBtoBマーケティングのあり方についても議論が交わされた。音部氏は「よく『コロナ禍で業績が落ちた』と聞くがそれは分析ではない。コロナ禍で顧客の認識や行動がどう変化したかを考える必要がある」と説いた。
後藤氏は「OMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合)時代の本格的な到来だと思う」と指摘。デジタル化で顧客が得られる情報が増え、さまざまな領域でオープン化が進むとの考えを示し、「顧客とのコミュニケーションでもいい点だけを伝える、ということはできない」と話した。