芸人活動の傍らで会社員として働くサーヤと、大学を中退して後輩の家に居候しているニシダによるコンビ・ラランドをテレビで目にする機会が増えてきた。芸能事務所に所属しないフリーの芸人ながら、昨年の「M―1グランプリ」で準決勝に進出し、ベストアマチュア賞を獲得。以来、「ぐるナイ!おもしろ荘」(日テレ系)や「ネタパレ」(フジ系)などに出演してきた。

2人は観客に性別を意識させることなく、会話で笑わせる漫才を得意とし、これまでの男女コンビでありがちだった容姿いじりをしないことからも、新しい価値観を持った芸人として注目されている。若手女性芸人が集合した9月放送の「アメトーーク!」(テレ朝系)では、容姿いじりで笑いを取ってきたガンバレルーヤのよしこに、サーヤが「心からそれをやりたいんですか? ブサイクと言われて一滴も涙を流したことがないんですか?」と投げかけてスタジオを盛り上げる場面もあった。
一方で、新世代の女性芸人としてのコメントを求められるようになったサーヤは「今までお笑いをやるうえで、性別について考えたこともなかったので、女芸人としての不満を語らなければならない場面は逆にやりにくい」とも語る。
結成は2014年。上智大学の同級生として出会い、先にお笑いサークルに所属していたサーヤが、先輩から「外国人か太った人を連れてきて」と頼まれたことから、同じ学科のニシダを勧誘してコンビを組むことになった。
日ごろのネタ作りは、「言いたいキーワードやフレーズを箇条書きにして、2人で話し合いながら作る」(サーヤ)、「台本は書かずにその場で動画を撮って覚える」(ニシダ)というのが一連の流れ。現在はネタ作りのペースは落ちているが、大学時代は毎月1本は新ネタを下ろしており、そのストックがふんだんにあるそうだ。
転機が訪れたのは昨年のこと。「広告会社で働くなかで、自分たちを商品として客観的に考えられるようになったのが大きかったです。衣装とかめっちゃテキトーだったなとか。ネタもコアファンにしか刺さらない偏ったものが多かったので、軌道修正していった結果、『M―1』で準決勝まで残れました」(サーヤ)と明かした。
フリーランスならではの機動力もプラスなようで、今はマネジャーがついているが、「自分で請求書やスケジュールを管理しているうちに、ダイレクトに“即レス”してたら、どんどん仕事が取れることに気付いて」(サーヤ)と説明する。
9月からは冠ラジオ「ラランド・ツキの兎」(TBSラジオ)がスタート。ニシダは「昔からラジオ好きで、ラジオのレギュラーは憧れだったのでうれしかった。長く続けたい」と喜びを語った。
目下の目標は「純粋にネタが面白い芸人として認められたい。あとは、ニシダの不透明すぎる裏の顔が徐々にバレていってほしい(笑)」とサーヤ。ニシダは「『M―1』の決勝でいつか結果を出したい」と意気込む。
そんな2人が現在力を入れているのは、ユーチューブ「ララチューン」だという。自由に、様々なフィールドで快進撃を続ける2人の飛躍が楽しみだ。
(「日経エンタテインメント!」12月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)
[日経MJ2020年12月11日付]