本か映画か 若手コンサルはネットフリックスに学べ経済評論家・百年コンサルティング代表 鈴木貴博氏

「NETFLIX 世界征服の野望」  (c) NotApollo13, LLC. 2018
「NETFLIX 世界征服の野望」  (c) NotApollo13, LLC. 2018

「ビジネス経験の不足は間接経験で圧倒せよ」。戦略コンサルタントで経済評論家としても活動する鈴木貴博氏は後輩コンサルタントにこうアドバイスするそうです。世界最大の動画ストリーミングサービス企業に成長したネットフリックスに関する本と映画がこの秋から冬にかけて、相前後して発売・公開されました。この本と映画からビジネスの学びにつながる間接体験をするにはどうすればよいか。鈴木氏に語ってもらいました。

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若い経営コンサルタントの後輩からよく聞かれるのが「どうすればビジネス経験を早く多く身に付けられるのか?」という質問です。出入りの激しい外資コンサル業界では経験年数3年以下のコンサルタントの絶対数が多く、彼らにとっては経験不足が大きな悩みです。

その答えは「間接経験で圧倒する」ことです。他の経営者やコンサルタント、研究者が経験したことを記事、書籍、ケーススタディー、ドキュメンタリーなどから吸収する。いかに異なる業界、企業、経営者についての数多くの学習量を保てるかがコンサルの成長スピードに関係します。ただその際に私がプロの卵向けにふたつ強調しているコツがあります。

たまたまそのふたつのコツを非常にうまく体験できる教材があるので今回の記事でそれを紹介したいと思います。アメリカのIT企業でFAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグル)と呼ばれる5大企業の一角であるネットフリックスについての話です。

ドキュメンタリー映像には細部にも気づき

ひとつめのコツは「できるだけ映像で見る機会を増やすこと」です。これは間接体験に関する私なりのノウハウです。百聞は一見にしかずという通り、ドキュメンタリーの映像情報にはリアリティーがあり、細部の気づきもあります。ちなみにビジネスに関するドキュメンタリー映像の視聴量ではたぶん私は誰にも負けません。

ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開中

最近、試写会で見たのが12月11日から全国公開されたドキュメンタリー映画「NETFLIX 世界征服の野望」です。ネットフリックスの共同創業者マーク・ランドルフを中心とした創業メンバーたちのインタビューがふんだんに盛り込まれています。

今では世界最大のオンライン動画ストリーミングサービスであるネットフリックスですが、1997年の創業時はインターネットでのDVD注文サービスから事業が始まっています。映画の冒頭で紹介されるエピソードは当時、私も体験したネットバブル直前の起業ブームをまざまざと思い起こさせるものです。

当時マーク・ランドルフはもうひとりの共同創業者リード・ヘイスティングスとふたりで毎日サンタクルーズからシリコンバレーに通勤していて、その車中で新しい起業のアイデアを議論するのが日課でした。インターネットでのVHSビデオのレンタルもそのアイデアのひとつだったのですが、郵送料が4ドルかかるということで却下されたアイデアでした。

ある日マークが「もうすぐVHSがDVDに進化するらしい」という話をすると、ピンときたリード・ヘイスティングスがそのまま車をUターンさせてサンタクルーズのダウンタウンに戻るのです。それでDVDの代わりに中古CD店でCDを買って、文具店で封筒を買ってその中にいれ、郵便局で自宅宛てに投函(とうかん)します。

その翌々日、リードはマークに「届いたCDは無傷だった」と話し、ふたりは即刻、ネットフリックスの創業を決めるのです。このあたりのスピード感、ネットブームの頃のシリコンバレーの熱狂がよく伝わってきます。

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セルDVD事業を捨てたネットフリックス