石段が映える寺社10選 日本屈指のパワースポットも

自然と調和する石段のある寺社は全国に多い。写真を眺めても、コロナ禍が一服してから訪れてもいい。石段が映える寺社を専門家が選んだ。

■1位 出羽三山神社(山形県) 520ポイント
神仏宿る静寂と荘厳の空間

樹齢350年を超える巨大な杉木立に守られるように続く苔生(こけむ)す石段。出羽三山神社は羽黒山の中にある。「東北を代表する霊山で石段も神仏の一部」(鵜飼秀徳さん)。老木の杉林には「空気が張り詰め、いにしえの歴史の香りが漂う」(石橋睦美さん)。

600年前に再建されたと伝わる国宝の羽黒山五重塔が「静寂の林に溶け込むようにたたずむ姿は見る者を圧倒する」(小塩稲之さん)。日本屈指のパワースポットとしても知られ、「荘厳な石段を登ると、自然からの力をもらえるように感じる」(加藤誠治さん)。

山形県の中央にある月山(がっさん)、羽黒山、湯殿山を出羽三山といい、それぞれに神社がある。羽黒山は現在、月山は過去、湯殿山は未来を表し、江戸時代から広がったこの三山信仰は日本遺産に認定された。雪深い冬は出羽三山神社だけ参拝できる。「山岳修行の厳しさを感じながらも、陽光を反射してきらめく清流の脇を歩くと、凜(りん)とした空気に身が清まる思いがする」(Mr.tsubaking)。2446段の石段参道は約1.7キロメートルも続く。

「石段を上がるごとに空気感が変わるパワースポットでありフォトスポットでもある」(富本一幸さん)。冬場、人けの少ない参道を歩けば「静寂と巨木に抱かれ、自分の内面と向き合える」(山田祐子さん)。(1)羽黒山の表参道石段(2)http://www.dewasanzan.jp/

■2位 金刀比羅(ことひら)宮(香川県) 480ポイント
並ぶ店舗 長丁場楽しく

「こんぴらさん」の愛称で親しまれる、全国に約600ある金刀比羅神社、琴平神社などの総本宮。年間300万人以上が参拝に訪れる。「香川屈指の観光スポットで、長く伸びた石段の参道はあまりにも有名」(山内絵梨さん)だ。石段沿いに土産物店や飲食店が並び「長丁場だが楽しく参拝できる」(加藤さん)。

石段は参道口から御本宮までは785段、奥社までは合計1368段。雰囲気の違う石段が続く。「途中で振り返ると、香川の素晴らしい景色が望める」(三ツ橋典子さん)

御本宮横の展望台からは讃岐富士と呼ばれる飯野山や讃岐平野の田園風景、遠くには瀬戸大橋が見渡せる。「登り切ったところで感じる風は心地よい」(小塩さん)(1)旭社前の石段(2)http://www.konpira.or.jp/

■3位 長谷寺(奈良県) 430ポイント
四季の美映すたたずまい

真言宗豊山(ぶざん)派の総本山。屋根付きの399段の長い階段「登廊(のぼりろう)」は長谷寺ならではの景観だ。「果てしなく真っすぐに見えるしつらえが圧巻」(加藤さん)で、「国宝の本堂に続く石段の廊下は独特の美しさ」(山内さん)がある。時間帯によっては「登廊に差し込む日の光が変化を与える」(富本さん)。「春は桜、秋は紅葉に彩られる登廊のたたずまいを楽しめる」(石橋さん)

清少納言や紫式部も上ったといわれ、「色とりどりの装束を着たお坊さんとすれ違うこともあり、階段と色彩の調和が目に楽しい」(Mr.tsubaking)。この時期、「敷地が広く人混みにならないのも良い」(三ツ橋さん)。大みそかから新年にかけて登廊の各段の両側が点灯される「観音万燈会」が開かれる。(1)登廊(2)https://www.hasedera.or.jp/

■4位 立石寺(りっしゃくじ)(山形県) 410ポイント
芭蕉も一句 格別の原風景

「山寺」の名前で親しまれる。「860年に建立された東北を代表するお寺」(小塩さん)。急勾配の山上まで続く石段は1015段。まさに石段の寺で1位に選んだ専門家も。斜面には伽藍(がらん)が並び「山寺信仰の痕跡を感じる」(石橋さん)。

「閑(しづか)さや岩にしみ入る蝉(せみ)の声」と松尾芭蕉が詠んだ句にちなんだせみ塚が途中にあり、「芭蕉と同化できる」(鵜飼さん)。「表情を変える麓の美しい風景が望める」(加藤さん)、「五大堂から望む山形の原風景は格別」(山内さん)との声も。冬場は登山靴を準備した方が安心だ。(1)開山堂に向かう石段(2)https://www.rissyakuji.jp/

■5位 室生寺(奈良県) 390ポイント
お堂への一歩 別世界気分

高野山(和歌山県)が女人禁制の霊場だったのに対し、室生寺は女性の参詣ができたため「女人高野」の別名がある。金堂に向かう石段・鎧(よろい)坂は「昔から参詣人に踏み締められてきた趣がある」(石橋さん)。四季折々の風情があり「周囲の豊かな自然と調和した景観が生まれている」(Mr.tsubaking)。

「一段一段上ると重厚な金堂が姿を明らかにする様がいい」(富本さん)。いずれも国宝の金堂、本堂、五重塔へと石段が続き、「御影堂の重厚な木組みが見えると、現実を離れた別世界に入る不思議な気分になる」(宮澤さん)。(1)鎧坂(2)http://www.murouji.or.jp/

■5位 鵜戸(うど)神宮(宮崎県) 390ポイント
海と断崖絶壁 圧巻の景観

日向灘(ひゅうがなだ)を望む断崖にたたずむ鵜戸神宮一帯の景観は国の名勝に指定されている。「海辺の崖にある洞窟の中に本殿が建てられている」(小塩さん)。岩場に白波が打ち付ける光景を眺めながら本殿へ降りていく石段は「海の国・日本の原風景」(宮澤さん)。

目の前に広がる「海と断崖絶壁からの景観は圧巻」(三ツ橋さん)。色彩美も特徴で、「潮香る崖に朱色の欄干が鮮やか」(石橋さん)。「海と空の青に朱色の対比がフォトジェニック」(山田さん)。海の石段に対して「寺があった場所の山の階段も雰囲気がある」(鵜飼さん)。(1)本殿に向かう石段(2)https://www.udojingu.com/