激レアな白いピューマ ブラジル育ち、ネットを闊歩

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/1/4
ナショナルジオグラフィック日本版

ブラジル南東部のセラ・ドス・オルガンス国立公園を歩く、リューシズム(白変種)のピューマ。2013年7月5日撮影。これ以降、このピューマの目撃情報はない(PHOTOGRAPH BY ICMBIO)

白いピューマが脚光を浴びている。ブラジル南東部の大西洋岸森林のセラ・ドス・オルガンス国立公園を闊歩(かっぽ)する白っぽい若いオスをとらえた2013年の写真が、最近になって写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿され、再び注目を集めているのだ。野生のピューマでリューシズム(白変種、体の大部分が白くなる遺伝子変異)が確認されたのは、これが初めてだった。

「極めて珍しいことです」と、野生生物保護協会(WCS)の大型ネコ科動物保護プロジェクト「Big Cats Program」のエグゼクティブ・ディレクターを務めているルーク・ハンター氏は話す。「とても印象的な写真です」。氏は、書籍『野生ネコの教科書』(エクスナレッジ)の著者でもある。

全身の色素が欠乏するアルビニズム(先天性白皮症)や、リューシズムなどの遺伝的な色素の多型は、野生のネコ科動物の間では比較的よく見られる。だが、カナダからチリにかけて君臨する捕食者で、南北米大陸最大の野生のネコ科動物でもあるピューマに関しては、ほとんど前例がなく、その理由はわかっていない。

例えば、メラニン色素(黒色素)が過剰に生成されるメラニズム(黒色素過多症)は、既知の野生のネコ科動物40種のうち14種で確認されているが、黒いピューマの記録は、これまで飼育下でも野生下でも確認されていない。

一方、色素をまったく生成できず、目が赤っぽくなるアルビニズムに関しては、2例だけだが記録があると、ハンター氏は言う。1つは動物園で、もう1つは猟師たちが米国西部で野生の個体を木の上に追い詰めたときのものだ。

リューシズムのピューマの例は、同氏によると、このブラジルの個体を除いて知られている限り1つだけだ。それはネット上の写真で、動物園(詳細不明)で撮影されたものだという。

「私の生きている間に、白いピューマがもう1頭現れることはないかもしれません」と同氏は話す。

バリエーションが少ないピューマの毛色

ピューマ(クーガーやマウンテンライオンとも呼ばれる)は、全体的に毛色のバリエーションが非常に少なく、ほとんどが目立たない黄褐色や灰色などの土のような色合いだ。

なぜピューマに関しては、色を変える遺伝子がこれほど珍しいのか、その理由は誰にもわからないと、ハンター氏は言う。