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タイで話題「陸を行進するエビ」 捕食者の間をなぜ

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

タイには、毎年雨期になると、川を出て神秘的な夜の「行進」をするエビがいる。バンコクで生まれ育ったワチャラポン・ホンジャンラシルプ氏は子どもの頃、テレビのそんな報道に心を奪われた。

ホンジャンラシルプ氏は生物学の学士号を取得した後、2017年にナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)になり、米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で魚類の攻撃行動とコミュニケーションを研究した。それでも、子ども時代に強烈な印象を植え付けられたエビのことは忘れていなかった。

「わずか5分間の放送でしたが、20年間ずっと頭の中にありました」

行進するエビは観光客に人気があり、地元の民間伝承にもよく登場するが、エビが水から出る理由を研究した前例はなく、エビの種すら特定されていないことがわかった。「タイの人々の助けになり、同時に、環境保護にもつながるプロジェクトをつくりたいと思いました」

そしてこのほど、エビの行進についての研究成果を、20年11月9日付の学術誌「Journal of Zoology」に発表した。

エビの行動を実験室で再現

18~19年、ホンジャンラシルプ氏はタイ北東部ウボンラーチャターニー県のラムドム川を監視し、8~10月の雨期に無数の淡水エビが急流から出る2カ所を特定した。そして、エビの動きを映像に収めるため、(静止画をつないで動画のように見せる)タイムラプス撮影の暗視カメラを設置した。

論文によれば、エビたちは特に強い流れを回避している可能性が高いという。川の流れが強ければ強いほど、陸にはい出て、上流に向かって歩き、流れが穏やかになったところで川に戻ることが多かった。

行進にはエビが絶えず出入りしていることがわかった。水から出ている時間は個体によって異なり、20メートル近く行進する個体もいた。

ホンジャンラシルプ氏は野生のエビを研究室の水槽に入れ、水から出るよう促すことにも成功した。ただし、その行動を引き出す完璧な条件を見つけるまでに2年かかった。それは、エビたちが暮らす川の水を使い、水流を速くすることだった。

「最初のエビが水槽から出るのを見たとき、喜びのあまり叫んでしまいました。なにしろ自然の神秘を解き明かしたのですから」

不思議なことに、水温が低いことと光が少ないことが、エビたちが水から出る重要な合図になっているようだ。ホンジャンラシルプ氏は光量、流れの強さ、水温といった要素を変えて実験を繰り返した。

研究の最終段階では、エビの遺伝子解析を実施。その結果、テナガエビ科のMacrobrachium dienbienphuenseという種であることが判明した。1970年代に初めて確認された種だが、行進するエビだということは知られていなかった。

川沿いで待ち構える捕食者

M. dienbienphuenseは水を出ると、さまざまなリスクにさらされる。つまり、腹を空かせた陸生動物たちだ。よく遭遇する捕食者はカエル、トカゲ、ヘビで、ホンジャンラシルプ氏はハサミムシやハシリグモの犠牲になる瞬間も目にした。

ハシリグモは川沿いでエビがやって来るのをじっと待っている。ホンジャンラシルプ氏はこの戦略を回転ずしに例える。

毎年雨期になると、このエビの集団が食物網に大量のタンパク質をもたらしている可能性が高い。ホンジャンラシルプ氏はさらに研究を続けたいと考えている。エビが移動することで、「水圏生態系から陸上生態系にいくらかエネルギーが移動します」

オーストラリア西オーストラリア州生物多様性、自然保護、観光部門の淡水生態学者ピーター・ノバク氏は、エビの行進が繁殖のような節目となる出来事と関連していないという結論に興味をそそられたと述べている。

「(この発見は)何のために上流に移動するのかという興味深い疑問を投げかけています」。ノバク氏は今回の研究に参加していない。

M. dienbienphuenseの近縁種の中には、河口で生まれた後、産卵のため上流に移動するものがいる。M. dienbienphuenseも同様の回遊をするかどうかは確認されていないが、生活環の一部として、川の異なる部分を行き来しているのではないかとノバク氏は推測している。

M. dienbienphuenseは絶滅の危機にひんしているわけではないが、観光がマイナスの影響を及ぼす可能性はあるとホンジャンラシルプ氏は警告している。人々が懐中電灯で照らすと、エビたちが水に戻る合図と勘違いし、その結果、あっという間に下流に流される恐れがあるためだ。

ホンジャンラシルプ氏によれば、ウボンラーチャターニー県がユニークなエコツーリズム体験としてPRしていることもあり、行進するエビはこの数十年、年間10万人以上の観光客を引き付けているという。

行進できる環境の保護を

ホンジャンラシルプ氏は今回の研究をきっかけに、生息数が減少しているほかの淡水甲殻類の保護が強化されることを願っている。

例えば、ダムがエビの動きを妨げることもある。オーストラリアやアフリカでは実際、M. dienbienphuenseの近縁種の個体群がダムによって分断され、移動できなくなっている。今回の研究が「エビ専用はしご」をつくるきっかけとなり、希少な仲間たちが救われたらうれしいとホンジャンラシルプ氏は述べている。

「自然はすべての単位が重要です。それを理解し、保護のために動かなければなりません」

(文 JAKE BUEHLER、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年12月3日付]

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