厚労省のまとめでは有効求人倍率は08年9月のリーマン・ショック後の09年8月に0.42倍にまで下がった。しかし、景気回復や少子化による人手不足などで、17年6月以降は1.5倍を超す高水準となった。20年1月に1.49倍に下落、その後は新型コロナ感染拡大で低迷が続いている。

一方、全国求人情報協会(東京・千代田)が発表した10月の求人広告掲載件数は前年同月比48.9%減の76万7918件だった。3月以降、前年同月比マイナスが続いている。転職市場の拡大に急ブレーキがかかった状況だが、リクルートキャリアの藤井薫・HR統括編集長は「むしろ人材確保に今がチャンスとアクセルを踏む企業も少なくない」と強調する。

いま求められる「TS型」人材

藤井編集長によると、今求められているのは「TS(タレント・ショートターム)型」の人材だという。これは個人レベルで短期に成果を出せる人材ということだ。日本の大企業はこれまで新卒を大量一括採用し、長期育成により組織全体で成果を上げる「OL(オーガナイゼーション・ロングターム)型」の人材採用が主流だったという。

デジタル化が急速に進み、企業が抜本的な事業構造改革を迫られるなか、「多くの企業が、生き残りをはかろうと、TS型人材を求めるようになっている」と語る。

リクルートキャリア 藤井HR統括編集長

TS型とはどのような人材なのか。藤井さんは「変化に伴う新しい学びを貪欲に追求する一方で、過去のキャリアを必要以上に固執しないタイプの人。単純に英語やプログラミングができる人材というわけでもない」と説明する。

TS型人材とは、Purpose(目標)、Profession(専門性)、People(人々)、Privilege(特権)という「4P」を満たしている人材だという。つまり、自身が目指す目標やビジョンを語ることができ、企業の求める明確なスキルがあり、チームビルディングなど人間関係の対応能力が高く、自身が求める条件との擦り合わせができる――ことが求められるという。

コロナ禍によるビジネスを取り巻く環境の変化に対応して、従来の終身雇用などを前提とした「メンバーシップ型雇用」から、あらかじめ職務内容を定義して成果で処遇する「ジョブ型雇用」への転換を進める企業が増えつつある。日本でも欧米のように短期間で成果を上げられるTS型人材の転職は増えていきそうだ。

ただ、実際の転職活動にあたっては、優秀な人材であっても思わぬ落とし穴にはまるケースもある。営業職の人材紹介を手がけるセールスキャリアエージェント(東京・中央)の斎藤信人代表によると、採用側が面接で詳しく尋ねてくるのは、(1)転職理由、(2)業界への志望動機、(3)本人の成功・失敗体験――の3点。「面接で採用側が何を知ろうとしているのか正しく知っておく必要がある」と助言する。転職を志すなら、明確な目標とスキルを持ち、自らを正しく伝える能力を備えることが必要といえそうだ。

(代慶達也)

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