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新型コロナの濃厚接触者 何を基準に決めるのか?

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日経メディカル

濃厚接触者は検査が求められ、2週間の外出自粛が…。しかし、濃厚接触者といわれても、何を基準に決められているのかよく分からないという人も多いのではないだろうか。ここでは、過去11年で3万人以上の初診患者を診察した大阪・梅田の開業医・谷口恭医師に、自ら経験した体験などを基に濃厚接触者の定義や航空機などにおける感染対策について語ってもらった。

◇   ◇   ◇

最近印象に残っている症例を紹介したい。当院には数年前より通院しており、日々、会社業務に多忙な30歳代の女性の経験談だ(ただし、プライバシー確保の観点からアレンジを加えている)。

ある日、「定期薬が切れそうだから」と当院に電話がかかってきた。現在"自粛中"で外出できないと言う。自覚症状は全くないものの、保健所から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の濃厚接触者」と認定されたとのこと。ところが「この自粛には納得できない」と繰り返し僕に訴える。そこで詳しく話を聞いてみた。

COVID-19が流行し出した2月以降、この女性は外出、出張はできるだけ控えていると言う。しかしながら、どうしても取引先と対面せざるを得ないケースがあり、約8カ月ぶりにある地方都市へ出張することになった。出張を無事終えた翌日、ある地方都市(出張先の都市ではない)の保健所から電話がかかってきた。「大阪への便に当地(その保健所管轄)の住民が搭乗していて新型コロナウイルス陽性だった。あなたが近くに乗っていたことを大阪府の保健所に通知した。もうすぐ大阪の担当者から連絡があるから検査を受けてほしい」と言われたそうだ。

女性によれば、陽性者がどの席に座っていたかを保健所は教えてくれなかった。大阪に帰るその便では、少なくとも近くに座っていた乗客は全員がマスクをしており飲食もせず始終無言だったとのこと。その地方都市の保健所が言ったとおり、同日に大阪の保健所から電話があり「濃厚接触者だから検査を受けてほしい。結果にかかわらず2週間は外出を控えてほしい」と言われたそうだ。

納得できないながらも保健所の指示を無視するわけにはいかない。PCRの結果は陰性だったが、2週間の自粛を強いられた。当然のことながら、2週間の自粛により経済的にそれなりに損害を被ることになったが、保障してもらえるわけではない。女性は僕に繰り返し訴えた。「機内では何度も換気をしているとアナウンスが流れていた。あれば何だったのでしょう」と。

換気十分な乗り物内は"3密"なのか?

飛行機搭乗がCOVID-19感染のリスクになることを、僕が認識したのは4月。きっかけはThe Guardianの記事(私たちが感染源になった。COVID-19のフライトアテンダントの罪'We're a part of the spread': flight attendant's guilt over Covid-19)だった[注1]。記事は1人の女性フライトアテンダントを取材したもので、その女性が搭乗した機内でその女性を含め同社のスタッフ7人が感染した。その女性は機内の後方でサービスをしており、移動のために搭乗していたパイロット2人はビジネスクラスに座っていたそうだ。同記事には乗客がどれくらい感染していたかについては記載されていないものの、当時(この"事故"が起こった日付は不明だがThe Guardianの報道は4月2日)はマスクの重要性がまだ十分に認識されていなかったことが影響したのか。

ちなみに、この機種、すなわちボーイング777-300は、皮肉なことに、同社のスタッフから「高"密"度機」と呼ばれていたそうだ。だが、航空機にはHEPAフィルターが設置されており、機内の空気は約3分で入れ替わる(国土交通省のサイト[注2])。"密閉"空間ではないのだ。

最近、3月にロンドンからハノイへの直行便で集団感染が起こった事例が米国疾病予防管理センター(CDC)によって報告された[注3]。2020年3月、この直行便に搭乗した217人の乗客と乗組員が調査され、陽性者は16人だった。ビジネスクラスに搭乗した1人の有症状者が、ビジネスクラスの他の乗客、少なくとも12人に感染させたとみられている。やはり、当時、マスクの使用は推奨されていなかった。

[注1]https://www.theguardian.com/world/2020/apr/02/air-canada-flight-attendant-exposed-to-covid-19

[注2]https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr5_000035.html

[注3]https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/11/20-3299_article

 国内にも興味深い報告がある。3月23日、関西から那覇への便に搭乗していた乗客が感染していたことが分かり、その便の乗客141人のうち122人に連絡が取れ、合計14人が感染していたことが分かったのだ。関西・那覇の国内線では有症状者がマスクをしておらず搭乗中激しい咳をしていたと報告されている。激しい咳き込みのある患者がマスクなしで近くに存在する環境では、いかに換気が良くても、2時間という短時間でクラスターとなり得ることを示したこの調査は貴重だ。

以上から、機内では、マスクなしの咳嗽(がいそう)は感染リスクを高めると考えられそうだ。

では、冒頭で紹介した当院の患者の例はどうだろう。少なくとも(恐らく感染者を含めて)女性の近くに座っていた全員が始終マスクをしており、飲食をせず、黙っていたのである。それでも近くの席に座っていたというだけで濃厚接触とみなされ、PCRは陰性であったものの2週間の自粛を強いられている。

ここで濃厚接触者の定義を再確認したい。

濃厚接触者の定義(国立感染症研究所による「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要項」(2020年5月29日版)に準拠)[注4]

「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」(「無症状病原体保有者」を含む。以下同じ。)の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。

・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・その他: 手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

[注4]https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/2019nCoV-02-200529.pdf

これによれば、適切な感染防護をしない状態で、15分以上の接触があった場合が濃厚接触者ということになるわけだが、換気が十分な場所であればどうなるのだろうか。日経メディカル編集部に頼んで、厚生労働省に確認してもらった。その答えは、一言でいうと、「適切な感染防護をしていれば、感染者に接しても濃厚接触者とはならない」。日々、医療機関で実施していることだ。その他は以下にまとめる。

COVID-19濃厚接触者の定義について(厚労省の担当官の見解)

・リスクとは有無で判断するものではなく、高低(グラデーション)であり、どこかで線引きすることはできない。そのため、状況をよくヒアリングした上で、現場(保健所)が、濃厚接触者とするか否かを判断することとなっている。15分という線引きは再考すべきかもしれない。

・患者の症状にもよるが、マスクしていて換気も十分であれば、航空機内に患者が乗り合わせていても、濃厚接触ではないとの判断はあり得る。また、お茶を飲むためにマスクを外す云々は、リスクを高める要因としてあまり考えなくてよいだろう。

・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者とあるが、この「長時間の接触」とは同居に匹敵するような時間を想定しており、1~2時間程度のフライトは実は想定外だった。

・航空機上でのクラスター発生は多くなく、航空機の換気性能は認めている。ただし、換気の良しあしは機種にもよるので一概には言えない。

・必要以上の行動制限をかけたいわけではない。

・濃厚接触者の定義は世界保健機関(WHO)によるものに準拠しており、WHOが定義を変更しない限り、国内の定義を変更する予定はない。

現在、公共の交通機関は3密を回避するために様々な努力をしている。「密閉」回避のための換気もその一つだろう。濃厚接触者か否かを決める保健所は、換気の有無も十分考慮するべきだろう。国が言う「事例ごとの適切な判断」──その責任を担う覚悟を、保健所の担当官にはぜひ持ってほしい。

また航空会社もさらなる努力として、搭乗中のサービスを見直してもいいのではないだろうか。

個人的な話になるが少し前に講演のため、飛行機である都市に出張した。搭乗中一度もマスクを外さなかったが紙パックのジュースが配られた。心の中で「みなさん、飲むのなら降りてからにしてください」と叫んだが、そのような祈りが届くはずもない。配られれば飲みたくなるもので、多くの乗客がストローでそのジュースを飲み始めた。僕のように直ちに鞄に入れることの方が失礼なのかもしれない。

マスクを外す行為を促進するのだから、たかだか1時間程度のフライトであれば飲み物を配らなくてもいいのではないか。実際、別の航空会社(ANA)では無料のドリンクサービスや機内誌のシートごとの配布をやめているようだ。

[日経メディカル2020年12月4日付記事を再構成]※情報は掲載当時のものです。

谷口 恭さん
太融寺町谷口医院院長。1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

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