新型コロナの濃厚接触者 何を基準に決めるのか?

日経メディカル

飛行機内で感染者が出た場合、どこまでが濃厚接触者となるのだろうか? 写真はイメージ=(c)dedmityay-123RF
飛行機内で感染者が出た場合、どこまでが濃厚接触者となるのだろうか? 写真はイメージ=(c)dedmityay-123RF
日経メディカル

濃厚接触者は検査が求められ、2週間の外出自粛が…。しかし、濃厚接触者といわれても、何を基準に決められているのかよく分からないという人も多いのではないだろうか。ここでは、過去11年で3万人以上の初診患者を診察した大阪・梅田の開業医・谷口恭医師に、自ら経験した体験などを基に濃厚接触者の定義や航空機などにおける感染対策について語ってもらった。

◇   ◇   ◇

最近印象に残っている症例を紹介したい。当院には数年前より通院しており、日々、会社業務に多忙な30歳代の女性の経験談だ(ただし、プライバシー確保の観点からアレンジを加えている)。

ある日、「定期薬が切れそうだから」と当院に電話がかかってきた。現在“自粛中”で外出できないと言う。自覚症状は全くないものの、保健所から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の濃厚接触者」と認定されたとのこと。ところが「この自粛には納得できない」と繰り返し僕に訴える。そこで詳しく話を聞いてみた。

COVID-19が流行し出した2月以降、この女性は外出、出張はできるだけ控えていると言う。しかしながら、どうしても取引先と対面せざるを得ないケースがあり、約8カ月ぶりにある地方都市へ出張することになった。出張を無事終えた翌日、ある地方都市(出張先の都市ではない)の保健所から電話がかかってきた。「大阪への便に当地(その保健所管轄)の住民が搭乗していて新型コロナウイルス陽性だった。あなたが近くに乗っていたことを大阪府の保健所に通知した。もうすぐ大阪の担当者から連絡があるから検査を受けてほしい」と言われたそうだ。

女性によれば、陽性者がどの席に座っていたかを保健所は教えてくれなかった。大阪に帰るその便では、少なくとも近くに座っていた乗客は全員がマスクをしており飲食もせず始終無言だったとのこと。その地方都市の保健所が言ったとおり、同日に大阪の保健所から電話があり「濃厚接触者だから検査を受けてほしい。結果にかかわらず2週間は外出を控えてほしい」と言われたそうだ。

納得できないながらも保健所の指示を無視するわけにはいかない。PCRの結果は陰性だったが、2週間の自粛を強いられた。当然のことながら、2週間の自粛により経済的にそれなりに損害を被ることになったが、保障してもらえるわけではない。女性は僕に繰り返し訴えた。「機内では何度も換気をしているとアナウンスが流れていた。あれば何だったのでしょう」と。

換気十分な乗り物内は“3密”なのか?

飛行機搭乗がCOVID-19感染のリスクになることを、僕が認識したのは4月。きっかけはThe Guardianの記事(私たちが感染源になった。COVID-19のフライトアテンダントの罪'We're a part of the spread': flight attendant's guilt over Covid-19)だった[注1]。記事は1人の女性フライトアテンダントを取材したもので、その女性が搭乗した機内でその女性を含め同社のスタッフ7人が感染した。その女性は機内の後方でサービスをしており、移動のために搭乗していたパイロット2人はビジネスクラスに座っていたそうだ。同記事には乗客がどれくらい感染していたかについては記載されていないものの、当時(この“事故”が起こった日付は不明だがThe Guardianの報道は4月2日)はマスクの重要性がまだ十分に認識されていなかったことが影響したのか。

ちなみに、この機種、すなわちボーイング777-300は、皮肉なことに、同社のスタッフから「高”密”度機」と呼ばれていたそうだ。だが、航空機にはHEPAフィルターが設置されており、機内の空気は約3分で入れ替わる(国土交通省のサイト[注2])。”密閉”空間ではないのだ。

最近、3月にロンドンからハノイへの直行便で集団感染が起こった事例が米国疾病予防管理センター(CDC)によって報告された[注3]。2020年3月、この直行便に搭乗した217人の乗客と乗組員が調査され、陽性者は16人だった。ビジネスクラスに搭乗した1人の有症状者が、ビジネスクラスの他の乗客、少なくとも12人に感染させたとみられている。やはり、当時、マスクの使用は推奨されていなかった。

[注1]https://www.theguardian.com/world/2020/apr/02/air-canada-flight-attendant-exposed-to-covid-19

[注2]https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr5_000035.html

[注3]https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/11/20-3299_article

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント