経費使い放題、休みは自由 NETFLIXが伸び続けるワケ『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』

創業者と経営学者がコミュニケーションをとりながら企業文化を分析した
創業者と経営学者がコミュニケーションをとりながら企業文化を分析した

米国の動画配信大手・ネットフリックスが急成長を遂げたのはなぜか――。今回紹介する『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』(土方奈美訳)は、創業者のリード・ヘイスティングス氏が著名経営学者のエリン・メイヤー氏と組んで、強さの理由を解き明かした一冊だ。世界一「自由」な会社と形容される同社がつくったユニークな企業文化は、読む者を驚かせる常識破りの発想に満ちている。

◇   ◇   ◇

著者のリード・ヘイスティングス氏はネットフリックス共同創業者・会長兼最高経営責任者(CEO)です。1983年、米ボウディン大学卒業後、スタンフォード大学大学院で人工知能を研究して修士号(コンピューターサイエンス)を取得しました。1991年にピュア・ソフトウエアを起業し、97年に売却。この資金を元に同年ネットフリックスを共同創業しました。99年以降、同社の会長兼CEOに就いています。2000年から04年にかけてカリフォルニア州教育委員会委員を務めました。大学卒業後から大学院入学まで、米政府運営のボランティア組織である平和部隊の一員としてスワジランドで教員を務めた経験があります。

ヘイスティングス氏(右)とメイヤー氏

共著者のエリン・メイヤー氏は仏ビジネススクールINSEAD(インシアード)教授。ハーバード・ビジネス・レビュー誌やニューヨーク・タイムズ紙などにも紹介された『異文化理解力』の著作があります。1994年から95年にかけて平和部隊の一員としてスワジランドに滞在しました。2004年にINSEADにて経営学修士(MBA)を取得。現在はパリ在住です。

世界に約2億人のユーザー

ネットフリックスはめざましい成長を遂げました。上場してから17年後の2019年までに、株価は1ドルからなんと350ドルに上昇しました。190カ国、約2億人という会員数を誇り、オリジナル作品を次々とヒットさせています。2019年には自社制作の映画「ROMA/ローマ」がアカデミー賞の3部門で受賞しました。

創業者が極めてオープンに自社の経営について語っているのが、本書の魅力です。それに加えて、外からの視線を交えたことでより客観的で読みやすい内容になっています。外部の目とは、共著者である経営学者のエリン・メイヤー氏です。異文化理解の達人でもあるこの研究者は、米国の同社拠点をはじめサンパウロ、アムステルダム、シンガポール、東京で働く現役の社員と元社員に200回を超えるインタビューを行いました。

ネットフリックスの特徴は、優秀な社員だけが集まっていることです。ベストメンバーを集めてチームを作る米プロ野球のメジャーリーグやプロバスケットボールのNBAに近いと言えるでしょう。ただし、プロスポーツではメンバーの数が一定に限られていますが、ネットフリックスでは事業規模が拡大したら人材をどんどん増やしていきます。

優秀な社員にこだわり続けているのは、創業から4年後に直面した経営危機の経験があります。2001年のネットバブル崩壊で資金調達が困難になり、社員の3分の1をレイオフ(解雇)しなければならなくなったのです。当時は去る人、残る人の双方に大きなダメージを与えました。ところが、リストラ直後の大混乱の数週間を過ぎると、社内の雰囲気は次第によくなったといいます。コストカットを進めていたにもかかわらず、情熱やアイデアが満ちあふれる気風が出てきました。それから数カ月後、DVDレンタルの事業がV字回復をはじめました。すると「驚いたことに、残った80人の社員はかつてなかったほどの情熱をもって、全ての仕事を着実にやり遂げていった」とヘイスティングス氏は振り返ります。仕事時間は長くなったが、士気は驚くほど高まったのです。

このときの経験が、ネットフリックスの経営陣に「能力密度」の重要性を気づかせました。とても優秀な人から、そこそこ優秀な人までを含めた100人のチームがあるとします。その中から、優秀な人材を30人だけを選抜したチームを結成すれば、それが能力密度の高い状態をつくり出します。

ビジネス書などの書評を紹介
注目記事
次のページ
有効なフィードバックの方法とは
ビジネス書などの書評を紹介