「落としそうで不安」の声に応える耳掛け型も

SHURE初の完全ワイヤレスイヤホン「AONIC 215 True Wireless」(2万9000円前後)。SHUREで、完全ワイヤレスイヤホンとしては珍しい耳掛け式で安心感がある。イヤホンを外さず外の音を聞ける「外音取り込みモード」も搭載

小沼 では、今年注目を集めたワイヤレスイヤホンで、小原さんの印象に残った製品を教えてください。この連載でもたくさん取り上げてきました。

小原 AppleがAirPodsを発売してから4年がたち、完全に定着しましたね。主な製品は連載で取り上げましたが、紹介できなかったものではシュア(SHURE)「AONIC 215 True Wireless」とノーブル(Noble)「FALCON 2」に注目です。

小沼 「AONIC 215 True Wireless」は4月の発売直後に「基準を満たしていない機能があった」として一度販売停止になり、10月に販売が再開されました。Noble「FALCON 2」は「FALCON」(記事『完全無線イヤホンNoble対オーテク 1万円台でも高音質』)の後継機ですね。

小原 「AONIC 215 True Wireless」は有線イヤホン「SE215」のイヤピース部分に、MMCXコネクターを搭載したワイヤレスモジュールをつけることでワイヤレス化しています。耳掛け式の完全ワイヤレスイヤホンはありそうでなかったもので、「完全ワイヤレスを使いたいけど、落とさないか心配」といった人には魅力的だと思います。

小沼 今年、鉄道各社が注意喚起をするなど、ワイヤレスイヤホンの落とし物が増えたみたいですからね。僕の実感では耳から外れてしまうことはなく、ケースにしまおうとするときに落としやすいと感じていますが、それでも不安な人はいるでしょう。もちろん音質も申し分ないですし、Apple「AirPods Pro」で二の足を踏んでいる人にとってもお薦めできるイヤホンですね。

小原 Noble「FALCON 2」は、音づくりの方向性は前モデルの「FALCON」を踏襲しつつも、音のレンジが広がり、細かな描写力が上がっています。

小沼 ケースが立方体に近くなる、カナル型イヤホンのノズル部分が短くなるなど、デザインも変化を遂げていますね。

小原 「FALCON」はノズル部分が長かったんですよね。実は「FALCON」を使っていたとき、耳の中でイヤピースが外れてしまったことがあったんですよ。すぐに取り出せましたが、「FALCON 2」ではこれを改善するために短くなったのかもしれません。

小沼 完成度の高かった前作をさらにブラッシュアップしたんですね。

小原 そうですね。音質も使い勝手も向上し、より良いイヤホンになったと思います。

小沼 これからも完全ワイヤレスイヤホンはたくさん新しい製品が出てきそうですね。2020年を振り返ると、巣ごもり需要で大型テレビ、テレワークに小型有機EL、自宅時間を豊かにするレコードプレーヤーなど、新たに生まれた機器へのニーズがあったようです。まだ先行きが不透明ではありますが、来年はどんな製品が出てくるのか、今から楽しみです。

小原由夫
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。2020年に買ってよかったAV機器はデスクトップ用アクティブスピーカーAIRPULSE「A80」

小沼理
1992年生まれのライター・編集者。最近はSpotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。2020年に買ってよかったAV機器はagの完全ワイヤレスイヤホン「TWS04K」