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菅義偉首相は記者会見に臨む頻度が前政権よりも落ちた

菅義偉首相は記者会見に臨む頻度が前政権よりも落ちた

菅義偉首相は記者会見や演説が好きではないようだ。苦手意識があるのだろう。安倍晋三前首相に比べて、格段に「自前の言葉」が少ない。しかし、菅首相には前任者とは異なる「強み」がある。秋田県出身だという点だ。

菅首相は秋田県出身者としては初の首相となった。東北生まれは全体でも5人目だという。つまり、レア感が高い。前政権からの「継承」というイメージが強いだけに、違いを際立たせるには、うってつけのテーマだろう。

しかも過去の東北出身首相は4人がそろって岩手県の出身だ。くっきりと「秋田」を打ち出せば、いっそう独自色が強まるはずだ。実際、「雪深い秋田の農家に生まれ」という生い立ちストーリーは所信表明演説にも盛り込まれた。

しかし、物足りない、心に迫ってこない。なぜかと考えると、菅首相の語り口に原因があるのではないかという結論に行き着いた。

菅首相のしゃべりには「特徴」がある。それは平板な棒読みという、お世辞にもほめられない個性だ。一部では「来賓のあいさつ」と呼ばれている。そつのないことを最優先する、抑揚と面白みの両方に欠けるしゃべり方だ。

理由の一つは、しゃべる中身に自信がないせいだろう。官僚が練り上げた答弁書のような文書を読み上げているだけであれば、棒読みになるのも無理はない。役人の作文に情感を込めて読み上げるのには、結構な力量が必要になるものだ。

もう一つの理由は、自分の声質に自信がないからではないだろうか。官房長官時代から人前でしゃべる経験は積んでいるのだから、他人の目におじけているはずはない。むしろ、引け目を感じているとすれば、自らの内なるまなざしだろう。つまり、一種のコンプレックスがあるようにみえる。

他人のコンプレックスを勝手に想像するのは、無粋で失礼な行為だ。通常は私もしない。しかし、一国のリーダーが異常なまでに「肉声」での記者会見を避けるとなれば、いくらか踏み込んで想像してみたくなる。それほどまでに菅首相の会見・演説嫌いは度が過ぎている。前任者が割としゃべるタイプだったせいもあって、落差が際立っている。

あえて勝手に想像するなら、菅首相はしっかりした持論や国家像に基づいて、多くの人を導くような指導者ではないと、自らが思い込んでいるのではないだろうか。兄の補佐役に徹した、豊臣秀吉の弟を論じた「豊臣秀長」(堺屋太一著)が愛読書だということも、「ナンバー2」志向を感じさせる。

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