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特設の平台にパネルとともに展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

特設の平台にパネルとともに展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、都心部のオフィス街の人出は再び減少傾向にある。ビジネス書の売れゆきもさえない。そんな中、書店員が注目するのは、1996年から今日まで四半世紀の日本銀行の動きを丹念に追いかけた経済記者による迫真のドキュメントだった。

「試練と苦悩の四半世紀」に焦点

その本は西野智彦『ドキュメント日銀漂流』(岩波書店)。著者の西野氏は時事通信社を経てTBS記者となり、日銀や首相官邸、大蔵省(現財務省)、自民党などの取材を担当、金融動乱の時代を間近にみてきた経済記者だ。その著者による「日銀の『試練と苦悩の四半世紀』をドキュメントしようという試み」が本書だ。

プロローグは96年3月、日銀本店の一室から始まる。じっと考え込む男は福井俊彦副総裁(当時)。日銀法改正論議に乗るべきか、距離を置くべきか。即断即決でなる福井氏が黙り込み悩んでいる姿が、そこから始まる日銀の「試練と苦悩」を暗示する。この日銀法改正への対応と、改正日銀法が可決、公布された後から始まる未曽有の金融危機をめぐる日銀の動きに焦点を当てるのが第1章「松下時代」だ。そこから第2章「速水時代」、第3章「福井時代」、第4章「白川時代」、第5章「黒田時代」と歴代総裁ごとに章を立てて、25年の動きを追いかける。

内部文書や備忘録も集める

この間の経済の激動ぶりは多くの人の記憶に残っているだろう。ゼロ金利から量的緩和、リーマン・ショック、異次元緩和を経てコロナショックに至る。そうした激動への対処に日銀はどう動いたのか。日銀幹部らそれぞれの思惑、内部での政策論議、大蔵省や財務省、政治との駆け引き、学者やエコノミストを巻き込んだ政策論争……。重要な政策決定の局面を丹念に拾いながら、関係者の記録や証言を集めて、政策形成過程を跡づける。「できるだけ多くの当事者から話を聞き、公開・非公開の内部文書や個人の日記、備忘録等もかき集めた」というだけあって、当事者たちのやりとりは迫真に満ちる。中央銀行の独立性を追い求める戦いだったはずが、どの局面においても政治に翻弄される。当事者や関係者の動きを読んでいくと、そんな姿が浮き彫りになる。

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