専門家お薦め洋酒ケーキ10選 香り高く、大人の味わい
洋酒をふんだんに使ったケーキは香り高い。箱を開けた瞬間から、華やいだ気分になる。聖夜におすすめのケーキを専門家が選んだ。
1位 マロンドール
苦み・刺激 食べた後もしっかり
「ヘネシーブランデーケーキ〈V・S・O・P〉」 戦後に地元の商店街で開業した洋菓子店。現在はバラをかたどった焼き菓子やレモンケーキなど、地元の名産品をテーマとしたお菓子を親子2代で作っている。
地酒「保命酒(ほうめいしゅ)」を使ったケーキを開発した際、洋酒にも転用できると、2010年ごろに今のブランデーケーキのレシピを考案した。主に自分へのご褒美用として、正月や出世した際などに購入されるケースが多いという。
素材本来の味わいを生かすことを主眼に置き、注文を受けてから一つ一つ手作りしている。
ブランデーが練り込まれた生地の、味の秘訣は混ぜ加減。長年、培ってきた職人の勘を頼りに、日々の気候や湿度に合わせて「その都度、調整しながら混ぜ合わせる」(初代の徳永誠一さん)。
コニャック「ヘネシーV.S.O.P」を、焼き上がった後に表面へ丹念に塗り込む。そのため「お酒の存在感はあるが、辛みだけでなく奥ゆかしいフルーティーな味わい」(松本学さん)に仕上がっている。
「口に含むと、洋酒の香りが押し寄せる」(下井美奈子さん)、「ブランデーの苦みと刺激が食べた後までしっかり残ってとてもいい」(友田晶子さん)と、最初から最後までお酒を楽しめる一品だ。お酒、スイーツいずれの専門家からも支持された。
(1)3564円(2)https://marrondor.net/(3)製造日から5日以上寝かせて
2位 ロイヤル
お玉でムラなくしっとり
「ブランデーケーキエクセレントXO」 1973年創業の洋菓子店。創業者が修業時代から得意とするメニューを変わらぬ製法で作り続ける。「香り高くしっかりと洋酒を感じられる一品」(松尾民子さん)。生地の目をあえて粗くし、お酒の染み込みをよくしている。「生地がほどけてブランデーがじゅわっと広がる」(永井里果さん)
焼き上がり後に底の浅いお玉で、コニャック「ヘネシーX.O」入りのシロップを職人がムラなくかける。「かかり具合も分量もベスト」(薬師寺隆専務)という。「全体に染み込んでいるのが、見た目にもはっきりわかる」(平岩理緒さん)のは、1週間おきに上下を変え、出荷まで寝かせるため。「上質なコニャックのお供としたい」(高野勝矢さん)
(1)4104円(2)http://so-royal.com/(3)賞味期限直前
3位 リョウラ
バニラの香りと酒の辛み
「ブランデーケーキ」 3年間フランス各地で修業した経験のある菅又亮輔オーナーシェフが、2015年に開業した店。焼き上がったケーキをブランデーの「アルマニャック」にぜいたくに浸して作る。
1年を通して同じ味わいと香りを楽しんでもらえるよう、湿度と温度によって工程を調整するという。「どこを切ってもお酒の風味が漂い、作り手の愛情を感じる」(里井真由美さん)
「お酒本来の味わいと相性がいい」(菅又シェフ)というバニラビーンズを使い、酒の辛みを受け止める。「心地よいお酒の香りが口中に広がる」(谷宣英さん)。小麦粉は粒子の細かいものを使い「まるでテリーヌ」(沼田美樹さん)と評されるなめらかな食感に仕上げた。
(1)2530円(2)https://www.ryoura-online.com/(3)購入したらすぐ
4位 オークラ東京
5年寝かせたシャンパンの風味
「シャンパンケーキ」 1962年の創業時からホテルで提供するシャンパン「ポメリー」を使う。未開栓のマグナムボトルを5年ほどセラーに寝かせて熟成することで、ナッツやカラメルの風味も引き出した。「ブドウの甘い香りが立ち、食べる前からわくわく」(隈部美千代さん)
生地にシャンパンを練りこみ、特別なオーブンで香りが飛ばないよう低温で保湿しながら焼く。「生地がほろほろと口の中で溶けて芳醇(ほうじゅん)な香りが広がる」(平岩さん)。5日ほど真空パックの中で味をなじませてから出荷する。「チーズの風味も感じられる。お酒と合わせるもよし」(沼田さん)
(1)5400円(2)https://theokuratokyo.jp/dining/list/chefs_garden/(3)買ってすぐ~1週間程度
5位 佐野洋菓子研究部
酒とバニラの香りが調和
「ブランデーケーキ」 1970年に初代がパン屋として創業した店。店名は部活動を想起させ、楽しげな印象を醸し出そうと、あえて「部」とつけた。ブランデーの風味を最大限引き出すため、焼き上がりにはシロップを使わずコニャック「レミーマルタン」のみを塗る。「やわらかな酒の匂いと、生地そのものから立つバニラの甘い香りがほどよい」(松尾さん)
卵には黄身が色濃い地元栃木の「御養卵」を用い、小麦粉はしっとりした歯触りに焼き上がる「宝笠ゴールド」を使っている。「クリーミーな口溶けの中にブランデーの味わいが心地よく残る」(谷さん)
(1)3240円(2)http://www.sanoyogashi.com/(3)購入してから5日程度
6位 オヴァール
口に含むと果実の味わい
「シャンパンケーキ1本タイプ」 90年以上前にひよこの雌雄を見分ける研究から始まった会社で、卵へのこだわりが強い。生地に使う「ルテイン卵」は、マリーゴールドの花弁からの抽出物を飼料に加えており、なまぐささが少なく、熱を加えると黄身が色濃くなる特性を持っている。
シャンパンの風味を存分に感じられるよう、目が細かなカステラに近い製法で焼き上げる。「ドン・ペリニヨン」を中心に複数のお酒をブレンドした液に浸した後、1カ月熟成。「口に含むと果実の味わいが心地よく広がる。酒が持つパンチの強さや風味の広がりをしっかり使って仕上げている」(高野さん)
(1)4320円(2)http://www.onlineshop.ovale.jp/(3)賞味期限間際
7位 オリジン
ふんわり口溶けよく
「究極のナポレオン・ブランデーケーキ」 創業者の地元、奈良県で1985年に出店した。新鮮さが大切な卵は、顔の見える生産者のものを使いたいと、店舗の南30キロメートルに位置する五條市の鶏卵農場から買い付ける。「ふんわり口溶けのよい生地ながら、カステラのような味わいで満足感もある」(永井さん)
材料の混ざり加減は手作業で最終確認する。「手作り感やぬくもりを感じさせるケーキ」(里井さん)。焼き上がりに、一つ一つブラシで150ccほどのブランデーシロップを塗り込んでいる。「ずっしりとブランデーが染み込んでいて大人の味わい」(友田さん)
(1)2484円(2)https://originbk.com/(3)冷蔵保存で製造から3カ月程度
8位 ロンシャン洋菓子店
とろとろ食感 プリンのよう
「熟成ブランディーケーキ」 1971年創業。地域の洋菓子屋としては先駆的で、地元民から親しまれている。30年ほど前に、日持ちするお菓子のメニューを加えたいとレシピを考えた。その後、2代目の滝沢良恵さんの発案で、1カ月寝かせてから出荷するように。熟成期間でアルコールの刺激的な匂いがとれ、「ふんわりとブランデーの味わいと香りが広がる」(福田育弘さん)。食感も「プリンのようにとろとろ」(谷さん)。
気泡が潰れるよう材料を丹念に混ぜ、目が詰まった生地を作る。「ケーキとしてきめ細か」(友田さん)
(1)1300円(2)https://www.amazon.co.jp/dp/B008QYNBMQ?ref=myi_title_dp(3)出荷日から2週間後~賞味期限まで
9位 シミズ
ふくよかに香るカステラ生地
「浅草ブランデーケーキ ナポレオン」 東京・浅草の菓子店。小麦粉に「ゆきはるか」を使うなど、主な材料は国産を吟味した。「シンプルなお菓子だからこそ素材と製法にこだわる」(清水陽介専務)。「サイズと味わいを考えると、コストパフォーマンスがよい」(下井さん)
マドレーヌの要領でバターを焦がして使い、コクを出す。生地の焼き上がりにブランデーを吹き付ける。2種類のブランデーをブレンドしており、理想の比率にたどり着くのに7年かかった。1週間寝かせてから出荷するため、「弾力あるカステラ生地全体にブランデーが行き渡り、口に含むとふくよかに香る」(平岩さん)。
(1)2473円(2)https://asakusashimizu.com/(3)お好みに合わせて
10位 くにひろ屋
ラム酒の後味が爽快
「洋酒ケーキ」 地元で半世紀にわたり愛される。創業者がラム酒を使うフランス菓子「サバラン」の味わいに着想を得て開発した。引退時にその味わいを絶やさぬよう、現社長が看板と製法を引き継いだ。
日本人に古くから親しまれるカステラをベースにし、焼いたカステラ1本をまず1切れずつカットしてから、ブランデーとラム酒を混ぜ合わせたシロップに手作業で浸す。「フォークが刺さらないほど(ブランデーが)染み込み、とろける口当たり」(沼田さん)。「熟成した酒のまろやかな風味が口の中を満たし、ラム酒の果実味が香る後味で爽快」(松本さん)に仕上がっている。
(1)10個入り1400円(2)電話0847-62-2449(3)冷やしてお好みに合わせて
酒とスイーツ 古代から密接に
古代ギリシャ時代、お菓子が熱いうちにワインに浸して食べた記録が残るなど、スイーツとお酒には古くから密接な関係があった。日本国内で作られる洋酒のケーキの発祥は明確ではないが、10位のくにひろ屋がフランス菓子のサバランをベースに洋酒ケーキを考案したように「甘味とお酒の香りの調和を日本国内でも広めたい」という作り手の思いから、生み出されたものも多いようだ。
戦後の高度経済成長期からバブル期にかけて、海外土産として洋酒の人気が高まるなど、洋酒は欧米文化を象徴する憧れの飲み物となった。そんな中「酒をメインに据えた商品が生まれたのでは」と松本学さんはみる。
酒の種類もラム酒やブランデーにとどまらず、シャンパンを使ったケーキなども現れた。今回ランク入りしたケーキは、個包装となっている10位のくにひろ屋を除き、長さ20センチ前後、高さは7センチ前後の大きさ。カステラやパウンドケーキをベースとする店が多いためだ。熟成させながら少しずつ味わうのもおすすめだ。
ランキングの見方
調査の方法
今週の専門家
(生活情報部 田中早紀)
[NIKKEIプラス1 2020年12月5日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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