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最高峰ヨットレースの過酷 海のエベレストと女性6人

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

怪物のような大波、クジラとの衝突、大海原の真ん中での転覆――いずれもヨットレース「ヴァンデ・グローブ」で起こりえることだ。このレースに出場する選手たちは、単独でどこにも寄港せずに世界を一周することが求められる。

ヴァンデ・グローブは「海のエベレスト」とも呼ばれ、およそ4万8000キロを3カ月かけて航行する、肉体的にも精神的にも究極のレースだ。完走者には世界からの称賛が待っている。最高の栄誉は、2016-2017年のレースでアルメル・ル・クレアッシュ氏が打ち立てた74日間という大会記録を破ることだ。

2020年11月8日に出航した33人のスキッパー(艇長)のうち、6人が女性であり、この数はヴァンデ・グローブ史上最多となる。女性の最年長は51歳のミランダ・メロン氏で、最年少は30歳のクラリス・クレメール氏(年齢はオリジナル記事掲載時のもの、以下同)。出場経験があるのは46歳のサマンサ・デイヴィース氏のみで、彼女にとって今回が3度目の挑戦だ。

過去に女性が優勝した例はないが、上位に入賞した者はいる。エレン・マッカーサー氏は2000-2001年のレースで、優勝者から1日遅れの2位に入った。デイヴィース氏は2008-2009年のレースで4位に入り、惜しくも表彰台を逃している。

「これはプロのセーリング界におけるジェンダー平等が進んでいる証拠です」と、デイヴィース氏は今回の女性選手の数について語る。「ほかの5人の女性たちには、大きな敬意を抱いています。彼女たちは皆、経験豊富なすばらしいセーラーです」

危険と隣り合わせ

1989年に創設されたヴァンデ・グローブは、今ではセーリング界の最高峰と言われている。4年に一度開催されるこの危険なレースを完走することは、それ自体が快挙だ。これまでレースに参加した167人のうち、ゴールに到達できたのはわずか89人にすぎない。

ヴァンデ・グローブのコースは、大西洋に面したフランスの街レ・サーブル=ドロンヌをスタートおよびゴール地点としており、世界三大岬(アフリカの喜望峰、オーストラリアのルーイン岬、南米のホーン岬)を越えて航行する。

とりわけ厄介なのは南極海で、スキッパーたちは強風と巨大な波、そして氷山と闘わなければならない。

ニュージーランドの脇を通り抜けると、艇はあらゆる地理的な目印から遠く離れた海域に入る。30ノット(時速約56キロ)の高速で航行していると、波にぶつかる衝撃はまるで車の衝突事故のようで、船外に投げ出される可能性もある。

そんなときは、いちばん近くから救助に向かえる者が、レースの参加者である場合も少なくない。サマンサ・デイヴィース氏は2008-2009年のレースの際、インド洋での事故で骨盤と脚を骨折したヤン・エリエス氏を救助するために迂回をしたスキッパーのひとりだ。

エリエス氏のような例は珍しくない。1993年には、ベルトラン・デ・ブロック氏が、緩んだロープが顔面を直撃して舌を切った。デ・ブロック氏は、医師からテレックス(第2次世界大戦の時代に開発されたファクスの前身)経由で届けられた指示に従って、針と糸を使って自分の傷口を縫い合わせた。

2000-2001年のレースでは、イヴ・パルリエ氏の艇のマストがインド洋の真ん中で折れてしまった。パルリエ氏は、自分のヨットと、ニュージーランド沖に浮かぶスチュアート島周辺の漂流物から素材をかき集めて、なんとかマストを再建した。しかしその後、氏はさらに大きな困難に直面する。食料が尽きかけていたのだ。魚と海藻で食いつないだパルリエ氏は、スタートから126日後にゴールした。

彼らはしかし幸運だった。ヴァンデ・グローブは悲劇と無縁ではなく、1992-1993年のレースでは参加者2人が海で命を落としている。

肉体と精神と

肉体的な厳しさに加えて、精神的な負担も相当なものとなる。睡眠不足は決断力を鈍らせ、感情は増幅される。「最初の24時間は、ヨットにもうひとりだれかが乗っているという幻覚を見ます」。メロン氏は冗談めかしてそう語る。「風が強くなると、どうしてもうひとりの人は帆を操作してくれないのかと、不思議に思うんです」

睡眠の管理は重要で、研究者と協力して睡眠戦略を調整するスキッパーもいる。「眠れるときにはいつでも眠る。それが鉄則です」と、メロン氏。「警戒を怠ることはできません。レーダーにはアラームが付いていますが、海の状態は常に変化しますから」

クレメール氏は、ヨットからソーシャルメディアに動画を投稿するという楽しみを見出した。今年、フランスがロックダウン(都市封鎖)に入り、海でのトレーニングができなくなったときにも、氏は動画の撮影を行った。その動画では、防水服を着込んでヨット操作のまねをするクレメール氏に、もうひとりの人物がバケツの水を浴びせかけている。「1日ずつ着実に進んでいくことが大切なのです。非常に困難な目標があるときには、一歩一歩前進するしかありません。小さくて達成可能なタスクに集中するのです」

メロン氏は危険への実際的な心構えを重視する。「わたしはこう考えることにしています。『24時間何も問題が起こらないときには、用心しなくてはならない』」。それでも氏は、インターネットから離れて自由になれる時間を心待ちにしている。「海に出て、まだ人類が完全には汚しきっていない地球上最後の場所を探検するのが楽しみです。ただし海には、ゴミがたくさん浮いてはいますが」

デイヴィース氏がいちばん恐れているのは、レースを完走できないことではない。2012年の彼女の航海では、マストが破損し、索具を切り離して艇が沈むのを防がなければならなかった。「失敗は冒険のすぐそばにあります」と、デイヴィース氏は言う。

草分けとなった女性たち

不屈の精神と肉体に加えて、レースに出場する女性たちには、その帆に風を送ってくれる先人たちが付いている。「わたしが9歳のとき、母がナオミ・ジェームズ氏の講演に連れて行ってくれたんです。氏の話にわたしは心を奪われました」と、メロン氏は言う。ナオミ・ジェームズ氏は、1978年に喜望峰を通って初めて世界一周単独航海を成し遂げた女性だ。

大人になったメロン氏は、当時23歳だったデイヴィース氏とともに、トレーシー・エドワーズ氏の指揮の下、メイデン号で航海を行った。エドワーズ氏は、初めて女性ばかりのクルーで、世界一周最短記録を狙う「ジュール・ベルヌ・トロフィー」に挑戦した人物だ。「わたしが今ここにいるのは、トレーシー・エドワーズ氏のおかげです」と、デイヴィース氏は言う。

「彼女はわたしのヒーローであり、スポーツ界の女性たちのためにたくさんの扉を開いてくれた人です。彼女のレースを見ていた若いころのわたしは、自分がいつか彼女のクルーに加わるなんて想像もしませんでした」

女性として初めてヴァンデ・グローブに参加したのは、フランスの著名な海洋冒険家でヨットレーサーのイザベル・オティシエ氏とカトリーヌ・シャボー氏だ。強風に見舞われた1996-1997年のレースは、災難と悲劇の連続だった。それでもシャボー氏は6位に入った(140日)(オティシエ氏はゴールしたものの、舵(かじ)を修理するためにケープタウンに停泊したため失格となった。氏は嵐の中、海上で行方不明となったカナダ人スキッパー、ジェリー・ルーフス氏を探すために一度引き返していた)。

4年後、24歳の英国人スキッパー、エレン・マッカーサー氏がヴァンデ・グローブで2位に入賞した。優勝したミシェル・デジュワイオ氏(93日)との差はわずか1日だった。「彼女のレースはとても興味深いものでした」。マッカーサー氏は自分のロールモデルのひとりだと語るクレメール氏はそう述べている。「彼女は背が高くて筋肉隆々というタイプではありませんから」

ヴァンデ・グローブの参加者たちがカメラを忘れることはないだろう。彼らはそれぞれの冒険を、現代のコミュニケーションツールである動画やソーシャルメディアを通して、ユーモアとウイットを交えて記録している。

サマンサ・デイヴィース氏は、2008-2009年のレースの最中、北半球に向かう航路でシンディ・ローパーの曲に合わせて踊っている動画を撮影して話題を呼んだ。クレメール氏は、前回の単独での大西洋横断の際、フランスや英国のヒット曲に合わせたリップシンク(口パク)動画を公開している。

「パンデミック(世界的大流行)によって娯楽が減り、イベントが中止になっていることで、今年はわたしたちに注目が集まっていると感じます」と、デイヴィース氏は言う。「それは非常に大きなモチベーションになります」

(文 MARY WINSTON NICKLIN、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年11月18日付の記事を再構成]

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