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食べ物の無駄をなくして心身ともにすっきりと暮らす

食べ物の無駄をなくして心身ともにすっきりと暮らす

「もったいない」の文化が世界に知られているはずの日本で、まだ食べられる食品が大量に捨てられている。こうした「食品ロス」をなくす活動を続けているジャーナリストの井出留美さんが、このほど『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)を刊行した。食べ物を無駄にせず、すっきりと暮らすコツを、著者インタビューとともに紹介する。

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コロナで世界は「無駄」に気づいた

新型コロナの拡大をきっかけに、世界中の多くの人たちは「あるものでまかなう」生活を経験することになりました。ロックダウン(都市封鎖)や外出制限で、買い物にすら出かけにくい事態に直面した結果です。イギリスで非営利団体WRAP(ラップ=廃棄物・資源アクションプログラム)が2020年4月に調査したところ、主要4品目のパン・牛乳・鶏肉・ジャガイモで家庭内の食品ロスがコロナ前より34%減ったそうです。多くの人が買い物前に食品庫や食器棚を頻繁にチェックするようになったのが一因と見られます。日本ではハウス食品グループ本社が2020年7月に実施したアンケート調査で、1年前と比べて家庭で食品・食材を捨てる人の割合が10%減少したことがわかりました。

食品ロスが社会問題として注目されています。国内の食品ロスは17年度で612万トン。これは小売店での売れ残りや返品、外食店や家庭での食べ残しなどを合計した量です。国民1人あたりでは、茶わん一杯分のごはんを毎日捨てていることになります。大量廃棄を止めるため、2019年10月には「食品ロス削減推進法」が施行されました。行政、事業者、消費者などが連携して取り組むことが求められています。

食品流通の慣行がロスを生む

本書は食品ロスが発生する原因について詳しく解説しています。食品業界に目を向けると「欠品ペナルティ」と「消費期限と販売期限の設定」が一因になっていることがわかります。

食品メーカーの欠品とは、発注数が揃わなくて納品できないケースを指します。この状態になると、コンビニやスーパー、百貨店などの小売店に対しメーカーは「欠品ペナルティ」と称される罰金を払う必要がでてきます。罰金どころか、悪くすると取引停止になります。小売店としては「売れる分だけ最大限売った方が売り上げが大きくなる。欠品で商品棚を空けてしまうと、お客さんからのクレームにつながる恐れがあり、最悪、売上や顧客を失う可能性がある」と考えます。欠品ができないから、メーカーは常に多めに納品します。結果として、売れ残って廃棄される食品が増えます。欠品を防ぐためのコストや廃棄のコストは最終的に消費者が負担することになります。

「消費期限と販売期限の設定」については食品業界の「3分の1ルール」が問題視されています。食品を製造した後には、まず「いつまでに納品する」という「納入期限」が設定されます。その後に「いつまでに売る」という販売期限と「この時期までなら品質は大丈夫」という消費期限が到来します。それぞれの期限を3分の1ずつにするのが業界のルールです。3年間の消費期限を設定してある食品なら製造の1年後に納品期限、2年後に販売期限が到来します。つまり、消費期限まで約1年が残っていても、「販売期限が過ぎたので売れない」ということになるのです。モノがまだあるのに、店はわざわざ新しい商品を仕入れなくてはなりません。

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