「あるとき、当時の有名オーディオメーカー、トリオ(現JVCケンウッド)の創業者、春日仲一さんが来店してくれました。小さな店でしたが、春日さんが気に入って取引を始めてくれたのです。それがうれしくて、私は販売量にこだわるようになりました。ところが、春日さんからは『野島君、量を売ることはない。使っていただいたお客さまに満足してもらい、また買うときにノジマで買ってもらえればいいんだから』と言われてしまいました。他のメーカーと全く違うことを言う人だな、と不思議に思ったのですが、売り上げだけを求めてはダメだということだと目が覚めました。それが当社の『量を追わない』という現在の姿勢につながっています」

体を動かすことが好きで、休日は「何とか運動したくて、家内とゴルフすることが多いです」と言い、年に数十回はゴルフ場に通っていた。だが新型コロナウイルスの感染拡大で、「相模原のゴルフ場もずっと閉鎖されていたので、ほとんど行けていない」とぼやく。

――理想のリーダー像はありますか。

「やはり部下から尊敬されていない人はリーダーとして不適格だと思います。尊敬されるというと言い過ぎですが、上司の悪い点を部下が言いやすい環境をつくらなくてはなりません。部下の意見を抑え込む人は、リーダーとしてよろしくないと思います」

嫌なときほど、うれしそうな顔をしろ

「親子関係もそうです。親に何でも相談できる性格の子と、できない子がいますよね。でも子供が相談できないのは半分以上、親が悪いのだと私は思います。相談されたときに嫌な顔をしたりすると、子供は気を使います。私は父とうまくいかなくなった経験もあって、そう考えるのです」

「ですから『話しかけられて嫌なときほど、うれしそうな顔をしろ』と社内でリーダー候補だと思う人には言っています。そうすると部下の姿が見えるようになります」

――でも、忙しいときに話しかけられるといらつきませんか。

「イラッとします。会社でも、私が出かけようとするときに限って話しかけてきて、了承を求める社員もいるんですよ。イラッとして、『こんな忙しいときに、また持ってきて』と言葉に出しちゃいます。『こんなの決裁しないよ』と言いながらも、決裁しますけどね。本人に面と向かって言ってしまうのが私のスタイルなんです。欠点でもあるのでしょうが、思ったことをどんどん出してしまう方が、いいんじゃないかな。周りの人は多少困っているかもしれませんけど」

「人を叱るときはオープンな場で叱ります。一対一で叱れ、と言う人もいますが、他の人が聞いている方がいいと思います。裏で悪口を言わないように気をつけていますし、言い過ぎたと思ったときには謝ります。この年になって、その加減がようやく少し分かってきました」

野島広司
1951年神奈川県生まれ。73年中央大商卒、野島電気商会(現ノジマ)入社。78年取締役、94年社長。会長、会長兼社長などを経て2008年から現職。17年からアイ・ティー・エックス社長、20年からスルガ銀行副会長。

(笠原昌人)

(下)会社つくって、たくさん失敗 ノジマ社長の立ち直り方 >>

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら