2020/12/27
上信越自動車道の下り、黒姫野尻湖PA手前にあるトンネルを行く「V90 B6 AWDインスクリプション」。余分な神経を使わずに運転できることが、高速道路の巡航ではありがたい

急ぐ旅ではないので、ACCをセットして左車線を悠々と走る。血気盛んなドライバーが運転するSUVが白黒ペイントのセダンに停車させられるのを横目に見ながら、安楽な運転を決め込んだ。ボルボは時代遅れのスピード競争からすでに離脱している。新しいV90は最高速度が180km/hに制限されており、さらに低速でリミッターが作動するように設定できる「ケアキー」が付属している。先進安全機能の「インテリセーフ」がフル装備されているのはもちろんだ。

安心して運転の一部をクルマに委ねておけるので、車窓からの景色を眺める余裕がある。上信越自動車道に入って北上するにつれ、山々が色づいていくのがわかった。目をつり上げて運転していたら、紅葉を楽しむことはできない。サンルーフの恩恵を受けられる後席は、上質なくつろぎの空間だ。開放感あふれる視界が開けていて、レッグルームにも十分なゆとりがある。3人乗車なら余裕だ。荷室の広さは過剰なほどで、1泊用の荷物とカメラ機材を積んでも半分以上のスペースが空いていた。

荷室容量は5人乗車の通常使用時で560リッター。今回、1泊2日の試乗取材に臨んだスタッフ3人分の荷物と撮影機材を積んでも、十分余裕があった

紅葉の盛りが過ぎた山々が茶色くなってくると、その向こうに雪をかぶった山脈が見えてきた。巨大な壁のようにそびえているのは立山連峰である。突っ切っていくのはもちろん無理で、道はいったん東へと向かって妙高山を迂回(うかい)していく。

その前に、高速を降りて野尻湖を目指した。湖畔をのんびりと走るのかと思ったら、道は次第に上り坂になって山の中へ。ワインディングロードではあったがすれ違うのが難しい狭さで、スポーツ走行は不可能。ただ、前方視界がいいのでさほどストレスは感じずに済んだのはありがたかった。

野尻湖の周囲にある紅葉真っただ中のワインディングロードで、「V90 B6 AWDインスクリプション」のハンドリングを味わう
野尻湖の湖畔にたたずむ「V90 B6 AWDインスクリプション」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4945×1890×1475mm、ホイールベースは2940mm

金沢市内では一苦労

再び高速道路に乗って、しばらく進むと日本海が見えてきた。村上春樹の長編小説『騎士団長殺し』では、主人公が東京から関越道で新潟まで走る。夜を徹して運転し、明け方に日本海に着いた。マニュアルトランスミッションの「プジョー205」に乗っていたから、疲労は激しかっただろう。ある理由で彼にとってはギアシフトを繰り返しながら運転することが救いになっていたのだが、ボルボV90に乗っていたらストーリー展開は違うものになっていたかもしれない。

海辺のレストランで食事休憩をとるまで約350kmをひとりで運転しても、ほとんど疲労感はなかった。終点まで行けそうだったが、海鮮を味わった後は交代して後席へと移る。乗り心地は申し分ない。体をしっかり支えてくれるシートに身を委ね、スマホのプレイリストをシャッフル再生して聴いていたらだんだん眠くなってきた。秋の北陸としては望外の天気に恵まれ、降り注ぐ陽光に包まれてしばしまどろむ。運転するのもいいが、後席は極楽である。

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日没間近の砂浜を走る
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