日経ヘルス

2020/12/14

まずはインソールで改善を図る

だが足指の変形が進行し、日常生活にも支障をきたすようになってきたときは、早めに医療機関に相談することが大切だ。下北沢病院ではインソールを重視する。

(写真:すべて下北沢病院提供)

「外反母趾の進行に伴って、足にかかる体重の分布などが変わってくると、足のバランスはどんどん悪くなります。それを食い止め、足のアーチを整えて足にかかる負担を軽減していくためにインソールは役立ちます」

医師が「インソールが必要」と判断した場合は、その人の足に合ったオーダーメイドの硬いインソールを足専門の装具士に作ってもらうことが可能だ。アーチや足の変形などをインソールで矯正するのは、足病学(ポダイアトリー)においては当然のことだという。

「当院ではスニーカー用、パンプス用、ヒール用の3パターンがあります。スニーカー用のインソールであれば、症状改善のための機能をすべて持ったものを作れますが、もしパンプスに使うものとなると、かかとを薄くしたり、足指の方の素材は少しカットしてなくしたり、機能を少しずつ削いで、薄く作っていくことになります。5cm以上のヒールに関しては、治療用として有効なものを作るのは難しいと思います」

足の変形が重度になり、インソールなどで改善が望めない場合は手術を検討することも。「足の付け根の出っ張りのもとである第1中足骨を途中で切断します。そして出っ張りが出ないように骨をずらして固定する手術が主です」

足は日常生活をとどこおりなく進めていくための要である。

「だからこそ、自分で管理していくことが大切なのです。深刻な外反母趾を遠ざけるために、自分自身でできることは毎日コツコツ続け、自分の足を守っていきましょう」

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外反母趾とは逆、内反小趾になったら?

内反小趾とは、足の小指(小趾)が内側に傾き、付け根が出っ張ってしまう状態。「ただ小指は親指に比べて柔軟なので、症状として固着化はしにくい。靴に当たって痛いときは、つま先部分が広い靴にして刺激を避け、様子を見て」と、菊池さんはアドバイスする。

(イラスト:内山弘隆)
菊池恭太さん
 下北沢病院(東京都世田谷区)足病総合センター センター長。北里大学医学部卒業後、北里大学病院整形外科助教に。その後、横浜総合病院整形外科医長、同院創傷ケアセンターなどを経て現職。日本整形外科学会整形外科専門医。身体障害者福祉法指定医。日本足の外科学会会員。日本下肢救済・足病学会評議員。共著に、下北沢病院の医師たちがまとめた『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』(日経BP)。

(ライター:赤根千鶴子、構成:日経ヘルス 白澤淳子)

[日経ヘルス2020年4月号の記事を再構成]

“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ

著者 : 下北沢病院医師団
出版 : 日経BP
価格 : 1,595 円(税込み)