女性に多い外反母趾(ぼし)というと、ただ親指が外側に曲がることと思っている人もいるだろう。確かに、「外反(外側へ曲がる)+母趾(足の親指)」と書く。ただ、それだけが問題ではないようだ。今回は、外反母趾について、足を専門的・総合的に治療する下北沢病院足病総合センター長の菊池恭太さんに聞いた。
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「外反母趾とは、親指が外側に曲がることに加え、付け根側が逆に内側に出っ張ることを指します」と菊池さんは説明する。骨の配置を見ると、親指が外側に曲がるだけでなく、親指につながる足の骨、中足骨(ちゅうそくこつ)が開いていることがわかるだろう。

実際、日本整形外科学会の『外反母趾診療ガイドライン』でも、親指の骨である基節骨(きせつこつ)と中足骨がなす角度(外反母趾角)をレントゲンで確認し、20度以上ある場合を外反母趾と規定している。また、その度合いによって重症度を判定している。
アーチの崩れが外反母趾の要因に
では、外反母趾はなぜ起こるのだろうか。
「土踏まずの部分が地面についてしまう『扁平足(へんぺいそく)』だと外反母趾になりやすいといわれていますが、それは正確な表現ではありません。扁平足になったらすべて外反母趾になるかというと、決してそうではないからです。ただ、扁平足を含む“足のアーチの崩れ”が外反母趾につながりやすい、とはいえるでしょう」
私たちの足には、3つのアーチがある。かかとと親指の付け根を結ぶ「内側の縦アーチ」、かかとと小指の付け根を結ぶ「外側の縦アーチ」、そして5本の指の付け根を結ぶ「横アーチ」だ。私たちの足は、このようなアーチ構造を持つことで全身の体重を支え、着地時の衝撃を受け止めている。
「しかし、加齢や体重増加、身体の機能の衰えなどにより、『内側の縦アーチ』に過度な負担がかかってくると『扁平足』になります。さらに前足に負担がかかると、5本の指の付け根を結ぶ横アーチが押しつぶされ、足の横幅が広がった『開張足(かいちょうそく)』になってくることもあります。どちらが起こっても、踏み返しのときに、親指の付け根には大きな負担がかかってしまいます。親指の根元のMTP関節はこの踏み返しの外力を横に逃がすために外側に曲がってくる。だから、裸足で歩いても外反母趾にはなるのです」