ご飯にかけるのはアリ? ナシ?=PIXTA

こうした状況にハウス食品の田村さんは「クリームシチューはビーフシチューと違い、外食ではあまり見られず、それぞれの家庭内で独自の進化を遂げてきた、ある意味“ガラパゴスメニュー”です。結婚しての『初シチュー』でそれぞれのご家庭の食文化がぶつかり、家庭内論争が勃発することもあるほど。製品自体はご飯とわけても、かけてもどちらでもおいしく召し上がっていただけます」と語る。

なるほど、外国からの文化であれば「本場ではこうして食べている」といった情報が、外食メニューであれば「隣のテーブルの人はこうして食べていた」といった事実が1つの基準として集約されていったのかもしれない。しかし、クリームシチューは日本発祥であり、家庭料理であるがゆえ、気づけばそれぞれの家庭でウミイグアナとリクイグアナくらいの進化の違いを遂げていたというわけである。

そして、ほかの文化と出合ったときの衝撃は大きかったのだろう。いわれてみれば、「わけかけ」論争はたいてい新婚カップルか同居したてのカップルの片方が「パートナーがシチューをご飯にかけて食べるのが許せない」とネットに書き込むところから端を発している。

ハウス食品ではこの「わけかけ」問題について2016年に投票を実施したことがある。結果は全国では「わけ派」が58%、「かけ派」が42%だったとのこと。興味深いことに都道府県によっても顕著な差が見られた。

「『かけ派』が東北エリアで比較的多い結果となりました。これは、あくまでも推測ですが、きりたんぽ鍋やせんべい汁など、鍋物の文化があり、汁ものに炭水化物を合わせることに抵抗がないのではと考えています。また、『かけ派ナンバーワン』はダントツ沖縄県で70%。色々なものを混ぜる、いわゆるチャンプルー食文化だったり、タコライス発祥の地で、具をご飯にのせて食べる食文化だったりと、かけシチューが自然発生する素地がもともと存在していたのではないかと推測しています」(田村さん)

ハウス食品からは2017年、「かけシチュー」専用製品の「シチューオンライス」が発売されている。沖縄は同商品のシェアが全国で最も高い数値になっており、やはりかけシチュー文化が根づいているようだ。

人は「未知との遭遇」を体験すると拒絶したり攻撃したりするもの。しかし、「こういう異文化がある」とあらかじめ知っていれば相手を理解しようとし、平和に向かって努力する。交際相手との「初チュー」ならぬ「初シチュー」の際には相手が「わけ派」「かけ派」どちらが多い県出身かを知っておけば、無意味な衝突が避けられるのではないだろうか。

(ライター 柏木珠希)

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