「令和時代のキャンプに必携のギア」として、2019年から急激に盛り上がりを見せているポータブル電源。その名の通り持ち運びできる大型バッテリーのことで、屋外でも家電製品の充電や使用ができると人気だ。中でも異彩を放っているのが、日本発のブランド「ラチタ」。その真価をひもといていこう。
防災とアウトドアで盛り上がるポータブル電源市場
コロナ禍でも人気のキャンプだが、昨今は電源がないと不便に感じることも多くなってきた。スマホやタブレットは充電しないと2日目の朝にはバッテリー切れになってしまうし、暗闇を照らす明かりも充電が必要なLEDランタンが主流だ。1泊のキャンプであればしのげるかもしれないが、2泊以上なら電源は不可欠な時代になってきた。
最近ではAC電源付きの高規格キャンプ場も増えているが、まだ数は少ない。また、ファミリー層やエントリー層から人気が高いため、すぐ予約でいっぱいになってしまうという難点もある。
ポータブル電源の価格は容量にもよるが、3万~16万円と決して安くはない。しかし、1台あればキャンプ場の設備に左右されず、充電や給電が好きなときにできるわけだから、キャンパーの間で人気が高まっているのもうなずける。
「ポータブル電源がキャンプ用途で盛り上がり始めたのは2018年末あたり。それまでは、DIYユーザーがメインで、あとは車中泊ユーザーだった。当社の製品も、まずはキャンプシーンをリードする方々が使い始めて、その様子をSNSでアップしたところ多くのキャンパーに広がっていったようだ」
こう語るのは、ポータブル電源のブランド「LACITA(ラチタ)」を手掛けるポスタリテイト(大阪市)社長の加藤真平氏。同社は15年2月に創業し、当初はモバイルバッテリーを扱っていたが、17年にポータブル電源に参入。18年6月末から販売を開始し、20年7月末までに約1万9000台を販売してきた。
「『ポータブル電源』という言葉自体、ここ2年ほどで誕生したまだ新しいジャンル。中国資本のメーカーが多い中で、最近では我々のように日本の企業も参入してきた。当社の予測では20年度のネットでの流通総額は約100億円。ラチタはシェア15%を目指して新商品の開発にも力を入れている」(加藤氏)
実際、筆者の周りでも「ポータブル電源が欲しい」といった声をよく聞くようになった。キャンプでの使用をメインというより、「キャンプでも使いたいけど、停電になったときのために用意しておきたい」といった、防災意識の高まりから購入を検討する人が増えてきているのだ。
とはいえ、他の家電製品と比べるとマイナーなメーカーが多く、何を基準に選べばよいか分からない人が多いのも事実。スペックを比較しようにも、あまり見慣れない単位が並んでいる。そこで今回は実際にキャンプ場で「ラチタ」を試しながら、その使い勝手や選択のポイントを解説していこう。
小さくて軽くて水にも強い「エナーボックスSP」
数あるポータブル電源の中でも、キャンプシーンをリードする人たちから支持を集めているラチタ。「シエルブルー(CielBleu.)」や「ネルデザインワークス(Neru Design Works)」といった、キャンプ愛好家であればおなじみのブランドオーナーたちの中にも愛用者が多い。
ラインアップは通常モデルの「エナーボックス(5万9800円・税込み、以下同)」と防沫モデルの「エナーボックスSP(7万2800円)」の2種類。今回はアウトドアとの相性も抜群の「エナーボックスSP」を持って、2泊3日のキャンプで使ってみた。
人気の理由はいくつもあるが、まず伝えたいのが圧倒的な小ささ。ポータブル電源といえば10キログラム前後の重量で、持ち運ぶにはやや大きすぎるモデルが多い。しかしラチタは重量5キログラムで、本体サイズも幅30.3×奥行き13.4×高さ18.4センチメートルとコンパクト。女性でも片手で持ち運べ、収納ボックスにも収まるサイズのため、アウトドアの利用には最適なサイズ感といえる。