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アジア初の「ストラディヴァリウスフェスティバル」を成功させた中澤創太氏

アジア初の「ストラディヴァリウスフェスティバル」を成功させた中澤創太氏

新型コロナウイルスのまん延はクラシック音楽界も直撃し、コンサートは軒並み中止や延期に。秋以降、再開の動きが活発化しているが、コロナ感染者が再び増加する中、予断を許さない。今回は、2018年にヴァイオリンの最高峰ストラディヴァリウス21挺(ちょう)を東京に集め、7日間で1万人以上を集客した「東京ストラディヴァリウスフェスティバル」を主催、その経緯を新刊『TOKYOストラディヴァリウス1800日戦記』(日経BP)にまとめた日本ヴァイオリン社長・中澤創太氏に、クラシック界の現状や課題などについて聞いた。

「無謀な若造」だから打てた、先回りの一手

『TOKYOストラディヴァリウス1800日戦記』(日経BP)

『TOKYOストラディヴァリウス1800日戦記』(日経BP)

――コロナ禍の影響はいかがですか?

中澤 2018年にアジア初のストラディヴァリウスフェスティバルを実現したことで、クラシックの本場ヨーロッパから遠く離れた日本の弦楽器商社である日本ヴァイオリンの存在を、広く国内外から注目いただくことができました。これを契機に世界各地でビジネスを展開すべく、今年2月には米ニューヨークでトランクショー(展示販売会)を日本の楽器商として初めて開催し、大きな手応えを得ました。しかしその後、新型コロナの感染拡大のため、英ロンドンや韓国ソウルなどで予定していたトランクショーはすべて中止になってしまいました。

――出はなを挫かれた格好ですね………。

中澤 ヴァイオリンは現物をしっかり吟味して選んでいただく形での取引が主なので、現地に行けなくなってしまったのは想定外の逆風でした。しかし、ビジネスとしては「先手」が効いて、痛手は最小限で済んでいます。

――先手とは?

中澤 フェスティバルの後、世界各地の楽器商と提携し、代理店契約を結んだのです。

ストラディヴァリウス21挺を東京に集め、展示と演奏を楽しんでいただくフェスティバルは7年前から企画を始動しましたが、周囲は「絶対ムリだ」といさめる声ばかりでした。実際、世界各地の楽器所有者に貸し出しを依頼しても梨のつぶて。冷静に考えれば、日本の小さな楽器商の若造が、いきなり「大切な宝物を貸してくれ」と言ってきたわけですから、断るのも当然ですよね(苦笑)。

それでも粘り強く交渉を続ける中で、ストラディヴァリウスを製作した名匠アントニオ・ストラディヴァリの故郷、イタリア・クレモナにあるヴァイオリン博物館のパオロ・ボディーニ館長など有力な方々の協力を得て、21挺の名器を東京に集めることができました。

その経緯は『TOKYOストラディヴァリウス1800日戦記』にまとめましたが、7日間で1万3000人近くを集客したのは、ヴァイオリンの展覧会としてはワールドレコードとのことで、反響は大きく、状況は一変しました。「無謀な若造」のもとに、シンガポールからは「私の国でもフェスティバルをやりたいので協力してほしい」と依頼が届き、これまでアジアの楽器商とは縁のなかった世界トップクラスの演奏家たちから楽器の選定の相談が舞い込んだりといった具合です。

世界的な知名度と信用を得た中、単独で海外展開を目指す選択肢もありましたが、現地の楽器商との競合による消耗戦より、共存共栄する道を選んだわけです。その時点ではコロナの影さえありませんでしたが、この一手で「中澤セレクト」の楽器を各地の提携先に届けておいたことが功を奏し、渡航制限中も取引を進めることができました。

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