第2ラウンドでは「消費者接点を握る少数のプラットフォーム」と「B(事業者)サイドの業務・機能に強みを持つプラットフォーム、サービス企業」が並立し、「競争しながら協業」すると考えられています。

デジタル化競争の主戦場は、これまでの消費者の買い物、コミュニケーション、エンターテインメントから、今後、まずは企業や政府の「デジタルに置き換えやすい業務」に、さらには、企業の基幹業務や社会インフラにシフトしていく。つまりは、人の生命に直結する領域でのデジタル化が競われる。安全性、信頼性、継続性、トラブル発生時の可用性(システムなどが使用できる状態を維持し続ける能力)が、より強く求められるのだ。機械化が進んでも、最後に残るヒューマンな要素の重要性は変わらない。AI技術を活用して効率化を進めるためには、どのようなデータをアルゴリズムに与えるかという業務知識や、その業務領域のデータにアクセスできることが前提となる。日本企業が磨いてきたリスク管理を重視した業務プロセスが武器になるだろう。
(第11章 日本企業にはチャンスがある 365ページ)

日本がDX戦略で学ぶべきこと

多くの日本企業がデジタル・トランスフォーメーション(DX)で苦労しています。その根本原因は、「既存の事業モデルや組織を温存したまま、デジタル技術を導入しようとする」姿勢にあるようです。

著者は最後に、こう指摘します。「本書のケース分析を通じて、中国のIT企業、伝統企業のいずれも、『戦略転換に組織マネジメントを対応させる』課題に直面していることがわかった。日本企業、中国企業のいずれも、変革を実行する経営力が問われているのだ」。本書には事例がふんだんに盛り込まれています。読者の皆さんそれぞれのビジネス分野や関心のフィールドで、参考なる知見が必ず見つかることでしょう。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・田口恒雄

本書は、NTTデータのスタッフとして1990年代半ばから中国でシステム関連事業に関わり、その後、北京現地法人トップ、中国金融機関グループとの合弁会社経営陣に加わるなどの経歴をもち、中国のITビジネスの表裏に通じている著者による初の単著です。

中国では、ネット利用人口が飽和点に達し、人々が製品・サービスの品質をより重視するように変わりつつあり、アリババ、テンセントなどの既存勢力に、バイトダンス、美団点評などの新興勢力を巻き込んでの「インターネット第2ラウンド」をめぐる競争、「ネットとリアルの融合」をめざす競争が激しく展開されています。

本書では、中国ITビジネスの全体像、主要各社の戦略、中国政府の政策を含めて、そうした競争の構図が、さながら曼陀羅(まんだら)のように、鳥瞰的かつ虫瞰的に、濃密に描かれています。

本書を貫いているのは、立ち遅れたインターネット・ビジネスで、どうすれば日本企業がリードできるのか、という問題意識です。中国ITビジネスの全体を俯瞰する冷静な視点と、日本企業への著者の熱いエールが絡み合った力作で、日本のITビジネスを展望する上で参考になる本です。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

中国デジタル・イノベーション ネット飽和時代の競争地図

著者 : 岡野 寿彦
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 2,750 円(税込み)

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