小西真奈美 仕事場で愛用、友達からもらったストール
ドラマや映画、舞台と役者として幅広く活躍する、小西真奈美さん。4年ほど前からは、その柔らかで清らかなたたずまいとピュアでやさしい声を生かして音楽活動もスタート。2年前には全てのオリジナル楽曲で作詞作曲を手がけたアルバムをリリースするなどクリエイティブな才能を発揮している。着実にキャリアを充実させている小西さんの傍らには、いつもエルメスのピンクのストールがあるという。
「このストールは友達から、15年以上前に贈られたものです。夏場のスタジオなどでクーラーが強すぎるときに羽織ることも。柔らかな肌触りにいつも癒やされています。仕事場に持って行くため使用頻度はかなり高いのですが、優しい発色も風合いも損なわれない。上質なモノって、きちんと手入れをすれば一生ものなのだなと実感しています」
「贈ってくれた友達とは10代からの付き合い。『お互いに仕事を頑張っていこうね』と励ましあった仲です。その後、彼女は結婚。パートナーの仕事の関係で、いろんな国に住んでいますが、私との関係は変わらぬままです。今はコロナで難しいですが、お互いがどこにいても定期的に旅行もしていて。『アンコールワットが見たいから、カンボジアで集合ね』とか、『今度はメルボルン(豪)で落ち合おう』など、現地集合が基本。なので、あまり離れている感覚がないのかもしれません。
もうずいぶん前なので、彼女がなぜストールを贈ってくれたのか実は覚えてなくて……。女性同士って、記念日じゃなくてもモノを贈り合うことが結構ありますよね。私服にピンクが多い私を思って、ストールもこの色にしてくれたんだろうなと想像できるし、会わない時間もそうやって友情を感じられることが何よりもうれしくて。このストールがそばにあると友達から励まされているような気持ちになるし、頑張ろうと思える。目の前の仕事に対して丁寧に向きあえる気がして、いつも持ち歩くようにしています」
「今回、約2年ぶりにアルバム『Cure』を制作しましたが、レコーディングスタジオでも、このストールは活躍してくれました。いまから4年前に音楽劇『最高はひとつじゃない』に出演したとき、KREVAさんの曲をカバーしたご縁で音楽活動を始めましたが、それ以前も音楽はずっと身近でしたね。思い返すと、物心ついたころからテレビを見ない日はあっても音楽は毎日聴いていましたから、音楽活動をすることは自然の成り行きだったのかなって。
今回のアルバムは、4人のプロデューサーさんがそれぞれオリジナル曲とカバー曲を1曲ずつプロデュースしてくださるというコンセプト。そのなかのおひとり、亀田誠治さんは3年前にインディーズからリリースした2曲のクリスマスソングを制作したときにお世話になりました。そのとき、明るくてポジティブなお人柄に魅了されましたし、『この先も曲作りを続けていってね』と背中を押していただいたんです。以来、オフのときなど、リラックスした時間に曲を作り続けていましたし、またいつかご一緒できたらいいなと思っていました。ですから、今回のお話をいただいたとき、真っ先に亀田さんの名前を挙げさせていただきました。実は、アルバムのリード曲『君とはもう逢えなくても』は、亀田さんと一緒に作るのを前提に作詞作曲したものなんです。ほかのプロデューサーの皆さんも、素晴らしい方ばかり。後藤正文さんは、そもそも私がASIAN KUNG-FU GENERATIONのファン(笑)。なので、『プロデュースをお願いしたいのですが』と申し出たら、快諾していただけて本当に良かったです。
KIRINJIの堀込高樹さんとKan Sanoさんは、コロナ禍ならではの制作になりました。というのも、一度も対面せずに曲を完成させたんです。『データのやり取りやオンラインのミーティングだけで曲を作れるだろうか』という不安はありました。ですが、海外では国が違うアーティスト同士で盛んにコラボしていますよね。どうやって作るのか興味があったので、挑戦することにしました。口頭と文字で楽曲を形にすることの難しさを感じつつも、相手にどう伝えたらいいかを学べたことは良かったです。まったく対面せずに曲ができたのは面白い経験でしたし、曲作りの可能性も広がりました」
「カバー曲はオリジナルとは違った難しさを感じながら歌いました。椎名林檎さんの『ギブス』は、大好きな曲なので緊張しましたし、英語の曲は発音にひと苦労。ジャネット・ジャクソンの『Again』は、自分から歌いたいと言ったのですが、『なんでこの曲にしちゃったんだろう』って後悔しきり(笑)。呪文のように、口の中で何度も何度も繰り返しぶつぶつ歌ってなんとか発音を体になじませました。
子供のころから、私にとって音楽はなにものにも代えがたい治療薬のような存在。今回のアルバム『Cure』は、やはりコロナを抜きには考えられないなと思いながら制作しましたし、タイトルもそれを象徴するものになりました。キュアにはヒーリングよりも『深い癒やし』というニュアンスがあります。実際に、自粛期間を利用して曲を作ったことで私自身がすごく癒やされて……。音楽による『Cure』を実感したんです。
曲作りをするとき、今ではスイッチを切り替えられるようになりましたが、始めたばかりのころはお芝居との両立で戸惑うことも。曲のアイデアが浮かぶと、早朝だろうが深夜だろうが形にしないと気が済まなくて、寝不足になりながら曲作りしたこともありました。生みの苦しみはありますが、コロナを経て音楽のありがたみを改めて感じたし、作る側になれて本当に良かったです。気持ちが揺らぐ時代ですし、この作品を聴いてくださった方にも、なにかしらのCureな効果があったらいいなと願っています。
いま、気になるモノですか? また、音楽の話になりますが、自粛期間中は自宅にあるCDやレコードの、歌詞カードを眺めながらじっくりと聴いて音楽に浸る豊かな時間を過ごしました。CDを聴いているときは気にならなかったのですが、レコードを再生したときに『もっといい音で聴きたいな』と。以前はそれほどオーディオにこだわりはなかったのですが、音楽活動を始めてからいい音に触れる機会が増えて、『機材が違うとこんなにも音が違うの?』と驚いて。スタジオのエンジニアさんが薦めてくださるオーディオを購入しようと思ったら、びっくりするくらいに高額で。スタジオには最上級のモノを置くから当然ですよね。なのでもう少しランクを下げて、自宅に見合ういい音のレコードプレーヤーとスピーカーを探しているところです」
1978年10月27日生まれ。1998年の舞台『寝盗られ宗介』で女優デビュー。NHKの朝ドラ『ちゅらさん』の出演で全国区の人気者に。以後、ドラマや映画、舞台と幅広く活躍している。20年11月25日に2ndアルバム『Cure』を発表。4人の音楽プロデューサーとオリジナル1曲、カバー1曲ずつを制作。オリジナル4曲すべてで、自らがソングライティングに携わっている。目下ピアノの練習中で、SNSなどにその様子をアップしている。
(文 橘川有子、写真 藤本和史)
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