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左から2位「和菓子のアン」、1位「舟を編む」、3位「オレたちバブル入行組」

左から2位「和菓子のアン」、1位「舟を編む」、3位「オレたちバブル入行組」

主人公が仕事に取り組む姿を描き、プロ意識や職務を全うする大切さを教えてくれる「お仕事小説」。書店員ら12人の専門家が、仕事と改めて向き合うきっかけになる作品を選んだ。

1位 舟を編む 三浦しをん

 1540ポイント
天職に出合う瞬間 目の当たり

玄武書房・第一営業部所属で入社3年目の馬締(まじめ)光也はあるとき辞書編集部にスカウトされる。長年辞書作りをしてきたベテラン社員が退職を控え、その後任として「言葉への鋭い感覚を備えている」(浦田美穂さん)とみた馬締を引き抜いた。営業部ではお荷物だった馬締だが、新しい辞書「大渡海」の編さんで才能を開花させ、読者は「人が天職に出合う瞬間を目の当たりにする」(間室道子さん)。

辞書編さんに奮闘する人間ドラマやその編集の裏側がふんだんに描かれていて「こんなにも文化的な仕事を舞台とした小説なのに、団体競技スポーツに挑む人たちを応援しているような気持ちにすらなる」(藤村結香さん)。

「『お仕事小説』として多くの共感を生んでいる」(赤須恵美さん)作品だけに、2012年に本屋大賞を受賞、13年に映画化、16年にはアニメ化も実現した。

(1)出版レーベル 光文社文庫(2)税込み価格 682円(3)文庫版出版年 2015年

2位 和菓子のアン 坂木司

 1040ポイント
きめ細やかな気配りや誠実さ

高校を卒業して将来に悩む梅本杏子(アンちゃん)はデパ地下の和菓子店でアルバイトを始める。「私が唯一得意と言えるのは、食べること」というアンだが、和菓子については知らないことばかり。

最初は1カ月くらい働けばいいと考えていたものの、同僚が働く姿を見たり、来店客の言動に触れたりするうちに、次第にプロとしての意識が芽生えていく。「一つ一つの和菓子に込められた意図やメッセージを読みとり、お客さんに説明していくきめ細やかな心配りと誠実さから多くを学べる」(浦田さん)

読者は和菓子の持つ歴史や背景を知ることもできる。一癖も二癖もある登場人物たちとの関係なども面白い。ミステリータッチで「なんといってもお店に持ち込まれる『小さな謎』が読みどころ」(間室さん)。

「和菓子が無性に食べたくなってしまう」(中沢佑さん)。「主人公が販売する和菓子を買いに行きたくなる」(藤村さん)といった意見もあった。

(1)光文社文庫(2)734円(3)12年

3位 オレたちバブル入行組 池井戸潤

 920ポイント
「半沢直樹」の原作、不条理に立ち向かう

大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系)の原作となった小説の第一作。東京中央銀行大阪西支店の融資課長、半沢直樹は支店長が命令した「西大阪スチール」への半ば強引な融資の責任を負わされその回収に奔走する。「不条理に立ち向かう半沢の姿は読むものに力を与えてくれる」(芝健太郎さん)

銀行組織やその仕事ぶりも読みどころだ。「そこまでするのかと思ってしまうような、登場人物たちの仕事人間ぶりも面白い」(赤須さん)。萩原健太さんは「どっぷり引き込まれる人間模様がある」と評価。「自らの正義を貫くために徹底的に不正を暴きやり込める様は、並のビジネスパーソンには不可能だが留飲が下がる」(浦田さん)。融資候補先の業績を正確に判断し、適正な融資とそれに見合う担保という「銀行員の仕事の基本を再確認できる」(堺憲一さん)と評価する声もあった。

「スカっとしたい気分の時に読みたい一冊」(金子圭太さん)

(1)文春文庫、講談社文庫(2)770円、858円(3)07年、19年

4位 コンビニ人間 村田沙耶香

 900ポイント
求められていることを察知

主人公は36歳の現在まで、コンビニエンスストアのアルバイトとして18年間働き続ける古倉恵子。子どものころから周りとのズレを感じてきたが、コンビニの仕事をしていると世の中の一部になった気分になれる。

コンビニ店員という仕事を超えて、自分がどんな人生を選び取っていくかのヒントが得られる作品。藤村さんは主人公の考え方や生き方を読みながら「私は私。そう思えることの勇気と素晴らしさが伝わってくる」と称賛する。第155回芥川賞受賞作。

(1)文春文庫(2)638円(3)18年

5位 これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~ 青木祐子

 760ポイント
「任せたら大丈夫」の安心感
(C)青木祐子/集英社

(C)青木祐子/集英社

入社以来、経理部に所属する森若沙名子。同部に持ち込まれる領収書の内容などから社内の人間関係の変化などに気づき、解決していく。「一番一緒に仕事がしたいタイプと思う森若さん。この人に任せたら大丈夫、という安心感が伝わってくる」(藤村さん)

「決められた段取りでてきぱきと仕事を片付けるその姿はすがすがしく爽快なほどである」(浦田さん)など、仕事の描写にも評価が集まった。19年に多部未華子主演でドラマ化された。

(1)集英社オレンジ文庫(2)605円(3)16年


6位 校閲ガール 宮木あや子

 630ポイント
地味な部署になっても奮闘

熱烈なファッション誌愛を面接で訴え、憧れの出版社に採用された河野悦子。ただ、配属先は文書や原稿の不備や誤りを調べる校閲部だった。「地味な校閲部に配属され、不満を言いつつも奮闘する姿が描かれた作品」(赤須さん)。浦田さんは「地道な労をいとわず、正確性を追求していく姿勢に頭が下がる」と評価する。

「校閲という仕事を世間に広げた一冊」(芝さん)との声もある。16年には石原さとみ主演でドラマ化された。

(1)KADOKAWA/角川文庫(2)616円(3)16年


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