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「決闘する恐竜」法廷闘争へて公開 倉庫で眠った14年

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ナショナルジオグラフィック日本版

10年以上、古生物学者たちが行方を気にしていた化石がある。有名な2つの恐竜ティラノサウルスとトリケラトプスが一緒に保存されている貴重な化石だ。しかも、2頭はしっかりと組み合い、まるで戦っているかのように見える。

化石には、「決闘する恐竜」というニックネームがつけられた。どちらの個体もそれぞれ優れたサンプルであるうえに、2頭の恐竜がひとつの化石に収まっているというのは極めて珍しい。死後にたまたま同じ川の砂州に流れ着いて重なり合ってしまったのか、それとも、本当に格闘したまま一緒に息絶えたのか。その答えを知りたくても、これまで科学者がその化石を研究する機会はなかった。

だが、それが今、変わろうとしている。長年の法廷闘争の間、倉庫にしまい込まれていた化石は、最近になってついに米ノースカロライナ州にあるノースカロライナ自然科学博物館(NCMNS)に引き取られることが決まった。民間の基金と、地方自治体、州政府による寄付のおかげで、非営利団体「NCMNS友の会」が化石を買い取ることになったのだ。購入金額は公表されていない。

化石は、2022年に同博物館にオープンする予定の新館に所蔵される。それに伴い、最先端の古生物学研究室も新設される。ノースカロライナ州立大学の古生物学者で、NCMNS古生物学部長を務めるリンジー・ザンノ氏は、「『決闘する恐竜』は、10年以上隠されてきた宝石です」とコメントを出した。

14年間の日陰暮らし

発見から博物館にたどりつくまでの長い旅の物語は、化石そのものと同様にドラマチックだ。

06年夏、熱い太陽が照りつける米モンタナ州の牧場で、化石ハンターのクレイトン・フィップス氏は、一生に一度の大発見に出くわした。いとこのチャド・オコナー氏が、何かの骨の欠片を発見したのだ。欠片はひとつだけではなく、点々と一本の筋を描くようにいくつも並んでいた。その筋をたどっていくと、ついに丘の斜面から突き出ていたトリケラトプスの骨盤を発見した。それから数カ月かけてその周囲を掘り起こすと、骨格がほぼ完全にそろったトリケラトプスの化石が現れた。しかも、同じ場所からティラノサウルスの骨が一緒に出てきたのだ。

フィップス氏のクルーは、化石を布と石こうで保護して牧場から運び出し、モンタナ州フォートペックにある民間の研究所に保管した。フィップス氏は、牧場主のリージ・モーリー氏とメアリー・アン・モーリー氏の夫妻とともに博物館に化石を売ろうとしたが、買い手がつかず、化石は何年も研究所にしまい込まれたままになっていた。

米国では、連邦政府が所有する土地で見つかった化石は、博物館など政府認定の機関に所蔵されることになっているが、今回のように民間の土地で発見された化石は売買することが認められている。

13年、英オークション会社ボナムズが、化石を競売にかけないかとフィップス氏とモーリー夫妻に持ち掛けた。買い手を選べないことには抵抗があったが、発掘にかけた費用を取り戻す必要があったため、3人はこれに同意した。ところが実際に競売にかけてみると、最低落札価格の600万ドル(約6億2300万円)を上回る入札がなかったため、競売は不成立となり、化石はニューヨーク州の倉庫に収められた。

それからさらに数年がたったころ、NCMNSのザンノ氏が化石を買い取りたいと申し出た。16年2月に倉庫を訪ねたザンノ氏と博物館の職員は、実物の化石を見て息をのんだという。

「今にも歩きだすんじゃないかと思うほど、生き生きとしていました。生きていた頃の姿が目に見えるようです」

交渉は順調に進んだが、化石を博物館へ運ぶ前に、何年も続いていた激しい法廷闘争を片付ける必要があった。

13年の競売に至る前、モーリー夫妻は、牧場の元共同経営者だったジェリー・セバーソン氏とロバート・セバーソン氏の兄弟が、夫妻に対して訴訟を起こそうとしているという噂を耳にした。05年に、モーリー夫妻は土地所有権のうちセバーソン兄弟が所有していた分を買い取ったのだが、その際にその土地に関する鉱業権の3分の2を、セバーソン兄弟が保持することで合意していた。セバーソン兄弟は、「決闘する恐竜」にも鉱業権が適用されるとし、その売却から得られる利益を受ける権利があると主張した。

それまで100年以上もの間、モンタナ州では、化石は土地の鉱業権所有者ではなく、土地の所有者に属するとの前提の下、発掘が行われてきた。そこでモーリー夫妻は、訴訟を起こされる前にモンタナ州の裁判所へ行き、化石は鉱物ではないというお墨付きをもらおうとした。

セバーソン兄弟はモンタナ州の住人ではなかったため、訴訟の場を連邦地方裁判所へ移したが、そこで16年、モーリー夫妻の訴えを認める判決が下された。セバーソン兄弟は、これを不服として上訴した。18年、連邦第9巡回区控訴裁判所はセバーソン兄弟の訴えを支持し、「決闘する恐竜」の所有権の大部分を兄弟に与えた。

これに対し、多くの古生物学者は、化石の発掘にとって壊滅的な判決であると抗議した。化石が鉱物とみなされれば、過去100年分の化石の所有権をめぐる主張がひっくり返されてしまう。それだけではない。土地の鉱業権は細かく分かれている場合が多く、今後民間の土地で化石発掘の許可を取得することはほぼ不可能になってしまうかもしれない。そこで、2000人の会員から成る古脊椎動物学会と、博物館の連合、モンタナ州土地所有者の団体が共同で、モーリー夫妻を支持する嘆願書を提出した。

フィップス氏とモーリー夫妻は、モンタナ州議会にも、化石の所有権は土地所有者にあるとする法案を可決するよう働きかけた。19年に法案は全会一致で可決されたが、「決闘する恐竜」に関しては連邦裁判所で係争中だったため、法律は適用されなかった。

19年、控訴裁判所はこの件を再審理することに同意し、モンタナ州最高裁判所に対して、化石が鉱物かどうかの見解を求めた。20年5月、州最高裁は、化石は鉱物とはみなされないと判決し、6月には控訴裁判所もこれに同意、化石の所有権はモーリー夫妻にあると認めた。

ティラノサウルス化石の半分は民間所有

全ての民間の化石が、博物館などの公的機関に渡るわけではない。20年10月には、「スタン」と名付けられたティラノサウルス・レックスの全身骨格が、裁判所命令により競売にかけられ、3180万ドル(約33億円)で落札された。落札者の正体は明かされていないが、民間の収集家とみられる。

その驚きの値段に、古生物学者からは怒りの声が上がった。今後、科学者と土地所有者の関係が悪化し、世界的に化石の闇取引が増える可能性があるからだ。

「決闘する恐竜」に関しても、手放しで喜べないと専門家は言う。ウィスコンシン州、カーセッジ大学の古生物学者でティラノサウルスの専門家トーマス・カー氏は、替えの効かない化石を取引することは道徳に反すると考え、米国での化石の商業取引を禁止すべきだと訴えている。そして、今回のことでそのような取引が正当化されてしまうことを恐れる。

「しっかりとした博物館に買い取られたことは良かったと思います。スタンの時のように化石がどこかに消えてしまったわけではありませんから。ですが、博物館はこれにいくら支払ったのでしょうか。この取引によって、科学者や博物館は商業的な化石取引に手を貸すようになったのか、と言われてしまいそうです」

カー氏によると、現在知られているティラノサウルス・レックスの化石のうち、およそ半数に当たる40体以上を民間や営利団体が所有しており、科学的研究は行われていないという。

今後の研究で解明したいことは

「決闘する恐竜」を晴れて手に入れた博物館では、ザンノ氏とその研究チームによる今後の研究に期待がかかる。2頭の恐竜は本当に戦いながら死んだのかという疑問も、明らかにされるだろう。

さらにザンノ氏のチームは、化石の発掘現場を訪れて、化石がどのように形成されたかを調査する許可も手に入れた。「実際に現場へ行って、そのデータを自分たちで集めることができなければ、化石の科学的な価値は大きく下がってしまうでしょう」と、ザンノ氏は言う。

恐竜が実際に戦っていたかどうかはともかく、2体の恐竜はどちらも驚くほど保存状態が良い。

このティラノサウルス類の化石は、ティラノサウルス・レックスの子どもだと考えられている。だとすると、卵からかえったあとどう猛な捕食恐竜へ成長するまでの過程を研究する貴重な資料となる。子どものティラノサウルス・レックスの化石は、まだほとんど発見されていないからだ。

しかも、この化石は骨格がほぼ完璧にそろっている。フィップス氏は、これはティラノサウルス類の小型恐竜ナノティラヌスだと主張するが、多くの専門家は、ナノティラヌスはティラノサウルス・レックスの子どもであると考えている。

骨を覆っている岩石にも、多くの秘密が隠されている。恐竜の皮膚の跡や、恐竜の軟組織が分解したものと思われる残留物も見つかっている。古生物学の目覚ましい発展により、将来は、胃の内容物や生きていた頃のたんぱく質の痕跡までもが発見されるかもしれない。

フィップス氏は、事態が一件落着したことに安堵し、近いうちにノースカロライナ州を訪問したいと話している。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年11月20日付]

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