活力は自らの行動から

そもそも、個々の社員の給与水準はどう考えたらよいのでしょう。経営トップの給与水準をゴールとし、そこに向けて30年間で何%ずつ昇給させていけばよいか、逆算して考えれば昇給のイメージがわいてきます。さらにいえば、労働市場ができあがってきた今、給与を社内バランスではなく、マーケットをみて決めていくようになります。給与を中心とした待遇はどのように決すべきか。何もコンサルティング会社に頼らなくても、自ら考え、社内の議論を尽くすことで解決できることです。

私自身、GEグループに在籍した際、複数の会社を買収し、人事を含む様々な制度改革に取り組みました。議論を尽くし、行動し、制度を作る努力をすることは、活力を生むための大切なプロセスだと実感しています。企業にとって活力というものは大変重要です。

よって、雇用調整助成金等で衰退産業を必要以上に延命させることは避けるべきでしょう。もちろん、弱者を切り捨てて構わないということでは決してありません。セーフティーネットを用意し、機能させることがとても重要になります。その意味では、コロナ禍における助成金の特例支給は大いに推進すべきでしょう。失業対策についてもきちんと考えなければいけません。賛否両論がありますが、ベーシックインカムをまじめに検討してもいいでしょう。

「きれいごと」を心から大切にしたい

日本という国は、「人間を不幸にしない方法」をもっと考えるべきです。私がかつて所属したGEは、「世界で最も難しい課題を解決する会社」を標榜していました。成長と利益を追求するだけではなく、SDGs(国連の持続可能な開発目標)や「三方良し」に通じる思考を備える組織でした。

私のことを「きれいごとおじさん」と呼ぶ後輩がいます。決して皮肉でなく、いい名付けだと考えています。きれいごとを追い求めながら、世の中を変えていかなくてはいけないと心から思っています。過度に利己的、金銭的な目標の追求や達成が称賛されるような世の中であっては絶対にいけません。

何が正しいのか。本当の誠実さとはどういうことなのか。皆で一度、立ち止まって考えたいものです。そして、「やってはいけないライン」をきっちり引き、他者を危険なまでに追い詰めることは避けるべきです。自由な競争と正義を両立させ、社会や組織を良きものに変えていけたら大変素晴らしいですね。それも日本発で。こういうきれいごとをいつまでも大切にして発言し、行動を続けたいのです。

(聞き手は村山浩一)

八木洋介 people first代表
京都大学経済学部卒。1980年日本鋼管(現JFEスチール)入社。92年米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院で修士号(MS)を取得。99年から米GEで日本およびアジアの人事責任者を歴任。2012年からLIXILグループ執行役副社長(人事・総務担当)。17年1月people firstを設立。

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