前菜のメニューの一番上に「SALADE OLIVIER」とあり、おそらく現在でもロシアの定番料理であることがうかがえる

「ポテトサラダの起源は、諸説ある中でも、19世紀にモスクワのレストラン『エルミタージュ』のシェフ、リュシアン・オリヴィエが考案したオリヴィエ・サラダ説が有力です」(キユーピー広報・グループコミュニケーション室の森田里佳さん)。

FAOSTAT(国際連合食糧農業機関統計データベース)によると、2018年度のジャガイモの世界生産量は、1位中国、2位インド、3位ウクライナで、ロシアはそれに続く世界第4位のジャガイモ大国だ。そしてこの「サラダ・オリヴィエ」、パリ市内、筆者宅近所のロシアレストランのメニューにも、前菜の一番上に載っているではないか。

ロシア発祥のポテトサラダは世界各国に広がり、国ごとに独自のレシピを発展させたという。例を挙げてもらうと、「たっぷりの酢を効かせた野菜サラダにポテトを加えたイメージの『アメリカ風ポテトサラダ 』、ミルクやマヨネーズ、野菜やリンゴの角切りを混ぜた『上海ポテトサラダ 』、タラコが特徴の『タラモサラダ』はギリシャ、トルコの家庭料理です」(森田さん)

ここフランスにもゆでたジャガイモを使ったポテトサラダはあるが、基本的にマヨネーズを使わずにオイルとワインビネガー、マスタードなどであえることが多く、よりさっぱりとした味わいだ。私がマヨネーズを使って日本風ポテトサラダを作ると、決まって仏人配偶者は「これはジャガイモのサラダでなく、ピュレ(加熱した野菜や肉などをつぶしたり、ミキサーにかけたり、裏ごししたもの)だな」と言う。日仏の食文化の違いを感じるときだ。

一方、日本ではどう発展したのだろう。森田さんによると「日本では、大正時代に帝国ホテルでポテトサラダが考案されました。当時はハイカラな高級料理だったと想像できますが、戦後日本人の食生活ががらりと変わるなかで、学校給食にもキャベツ入りポテトサラダが登場するにいたり、日本独自の味に進化していきます」。

なぜ米食中心の日本でこれほどポテトサラダが好まれたのか、きっとマヨネーズにもなにかこだわりがあるに違いない。「海外では全卵タイプが主流ですが、当社の『キユーピーマヨネーズ』は発売以来一貫して卵黄タイプにこだわっています。卵黄タイプのマヨネーズはコクがあり、うま味が強いことが特徴で、海外でも人気があります。そしてこのこだわりこそが味噌やしょうゆのように『ご飯に合う味』を作りだしてくれるのです」(森田さん)。

また、マヨネーズに欠かせないのが「酢」だ。さらに聞いてみたところ、「適度な酢の酸味は食の対比効果でジャガイモの甘味を引き立て、重くなりがちな後味を引き締める効果があります。当社のマヨネーズは酢にもこだわっており、創始者が自ら思い描くマヨネーズの実現のためにキユーピー醸造という会社を作り、マヨネーズ専用のお酢を作りました。現在は、重厚なモルトと華やかな風味のリンゴのお酢をブレンドした『キユーピー マヨネーズ』専用のお酢を使用しています」とのこと。

フランスのとあるスーパーのマヨネーズ売り場。左半分はマスタード売り場、マヨネーズは右4分の1に限られ、成分表をみると、多くのマヨネーズにマスタードが入っている