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冬の感染症対策 カギは喉の保湿・保温と腸内環境

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NIKKEI STYLE

空気が乾燥し、気温も低くなる季節に流行するインフルエンザなどの感染症。これらに対する守りを固めるには、どのような点に留意すればいいのか。日常生活上の注意点や、病原体から身を守る最初のとりでとなる粘膜免疫を高めるための対策を探った。

「乾燥」「低温」で粘膜の防御力が弱まる

冬場は風邪やインフルエンザといった感染症の流行期。今年は新型コロナウイルスも猛威をふるい続けている。

「空気の乾燥と低温という環境要因は、上気道で病原体のバリアとなる粘膜の免疫能低下につながる」と、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの長谷川秀樹センター長は話す。

口や鼻から入って喉を通過する空気には、感染症の元となるウイルスや細菌などの病原体(異物)が含まれる。これらはまず気道などの粘膜に侵入して感染を引き起こすが、それを粘膜表面でブロックするのが、粘膜を覆う粘液層と線毛だ(下のイラスト)。異物は粘液でとらえられ、その中にある線毛がこれを押し出す。そして、喉からたんなどとして吐き出されたり、胃で消化されたり、便中に排出される。

ところが、空気の乾燥が口腔(こうくう)内まで及ぶと、粘液量が減り、線毛の働きも悪くなる。気温20度・湿度10~20%、もしくは同気温・湿度50%の環境でマウスを育て、インフルエンザウイルスに感染させると、湿度50%の環境では線毛機能が正常だったが、湿度10%環境では、線毛が異物を運び出す働きが低下し、気道上皮細胞の組織修復機能まで損なわれ、インフルエンザにかかりやすくなっていた[1]

「空気が乾燥し、鼻腔(びくう)や咽頭が乾くと、病原体と戦うために粘膜下から粘液中に分泌されるIgA(免疫グロブリンA)という抗体、インターフェロンやディフェンシンといった病原体に結合して不活性化や排除を図る抗菌・抗ウイルス物質の機能が低下する。そもそもこれらは粘液層のなかで働く性質を持っているため、乾燥状態では正常に働けなくなるから。低温も同様にこれらの生体防御機能を落とす」(長谷川センター長)。

風邪やインフルエンザといった上気道感染症はせきやくしゃみによって飛び散った飛沫を吸い込むことによる感染(飛沫感染)が主因の一つ。「空気が乾燥すると、ウイルスを含んだ飛沫が空気中に留まりやすくなる。粘膜の乾燥や低温環境、飛沫の拡散など、複合的要因によって冬には感染症の罹患(りかん)リスクが高まる」(長谷川センター長)

<乾燥すると線毛の排出機能が低下する>

[1]Proc Natl Acad Sci U S A. 2019 May 28;116(22):10905-10910.

離れた場所で共同作業、「上気道」と「腸」の粘膜免疫

病原体の侵入を防ぐとりでといえる「粘膜免疫」とは何か。それは、咽頭・呼吸器や腸などの上皮にあって、病原体の侵入口であり増殖の場となる粘膜組織に備わる免疫システムのこと。粘膜免疫の主役と呼べるのが、病原体を不活性化(中和)するIgAという抗体だ。IgAは病原体などの異物に反応して、何種類もの免疫細胞の連携プレーによって作り出される。(下のイラスト)

直接IgAをつくるのは抗体産生細胞という免疫細胞。この細胞により粘膜下でつくられたIgAは粘膜上に出てきて粘液中にとどまり、外から侵入し粘膜に迫りくる病原体と戦う。粘膜上に出てくるIgAのことを「分泌型IgA」(以下s-IgA)と呼ぶ。

s-IgAは粘膜免疫の主役で、鼻汁や唾液、気道粘液、消化管分泌液などに豊富に含まれ、口・鼻から肛門に至る「外の世界の延長線」、言い換えれば「体の外部」から各種臓器や血中に病原体が侵入するのを阻止する。

「口腔から続く気道や腸管は体内にあるにも関わらず外界と接し、常に病原体などの異物の攻撃にさらされるため、体にとって最大の免疫器官になっている。上気道には『扁桃(へんとう)』、腸には『パイエル板』という、病原体をとりこんでその情報を元にs-IgAを作り出す免疫細胞が集まる組織が存在する。そして、それぞれの免疫組織中の細胞は上気道と腸と離れた場所にあっても緊密に情報をやりとりしている。また、近年、粘膜上に存在するs-IgAには、血中などほかの場所にいるIgAとは異なり、2つ、4つがつながりあった形(多量体)をしているIgAがいることがわかってきた。この多量体はウイルスなどの病原体を不活性化する力が強く、その量が感染を阻止する力の強さに通じていると考えられる」(長谷川センター長)

ただ、多量体のs-IgAを多く作れるかどうかは遺伝的体質によって決まっているという。それを増やすことにつながる生活習慣があるかどうかはまだ未解明だ。

新型コロナウイルスのような新しい敵の侵入を受けると、それに対応したIgAが作られる。「ウイルスが侵入してくる前にすでに作られているIgAには、基本的に新型コロナウイルスを直接とらえる力はない。しかし、IgAをしっかり作る免疫システムが維持されていれば、新型コロナのような新しい病原体が侵入しても、素早くそれに対応するIgAが作られる可能性が高いと考えられる。つまり、IgA量が多いことは、新しいウイルスに対する対応力の高さの指標の一つといえる」(長谷川センター長)

また、コロナウイルスはかぜ症候群の約10~15%の原因になるウイルスだ[2]。類似したコロナウイルスに感染経験がある場合、新型コロナウイルスに対してもある程度の免疫が働き、重症度が低くなる可能性があるという指摘も出てきている。「交叉(こうさ)防御」という考え方だ。

こうした可能性を含めて、やはりしっかりIgAを作り出す免疫機構を維持しておくことは重要だ。

[2]Lancet 2003; 361:51-9.

腸粘膜への刺激が免疫維持に寄与

最初に挙げた乾燥や低温は、マスク・加湿器、こまめな給水、暖房といった手段を組み合わせることで防ぐことができる。それ以外に、粘膜免疫を低下させる生活習慣や、逆に高める方法はないのだろうか。

「食事を抜くと免疫は極端に低下する。食事で腸に刺激を送ることが、腸管免疫を高め、上気道の免疫にも好影響を与える。いざ病原体がやってきたときに、素早く免疫応答ができる腸内環境を整えておくことが大切。腸内細菌叢(そう)の状態によってワクチンの効果にも差が生じることがわかっている」(長谷川センター長)

実際に、口から食事を摂取せず腸への刺激がなくなると、IgA分泌量が低下し粘膜免疫が損なわれることが確認されている[3]

腸内細菌叢が乱れる抗生物質にも要注意だ。マウスに抗生物質をとらせて腸内細菌が死滅すると、IgA分泌が低下し、インフルエンザに対する免疫反応も低下することが確認されている(グラフ)。

腸管免疫に刺激を与えるという点では、乳酸菌、ビフィズス菌などのプロバイオティクスにも注目したい。ある種の乳酸菌では唾液中のIgAを増やすことが確認されているが、下のグラフの研究では乳酸菌摂取を開始して10~21日ほどでIgA量が増加している。 こうした菌の力を借りるなら、受験や、重要な仕事がある日などから逆算し、2~3週間前からとり始めておくのがよさそうだ。IgA産生力が高い状態、言い換えれば免疫能のスイッチが入ったアイドリング状態を維持し、新たな病原体が侵入したときにいち早く対応できる可能性がある。

一方、腸の有用菌のエサにもなる食物繊維には、粘膜を守る粘液の成分「ムチン」の分泌を高める働きがある[4]。これを確認する研究を行ったのが静岡大学農学部応用生命科学科の森田達也教授。「食物繊維が不足すると、腸内細菌叢のバランスが崩れ粘液量も減る。そのため粘膜もリスクにさらされるが、食物繊維をとるとこれを腸内細菌が食べることで産生される酪酸、酢酸といった短鎖脂肪酸がムチン産生に寄与する。さらに直接エサにならない硬い食物繊維(不溶性食物繊維)も、粘膜にあるムチン産生細胞に物理的な刺激を与えて、ムチンの産生を促進する」と言う。

<成人女性が乳酸菌b240摂取で唾液中IgAが増加>

[3]Ann Surg. 2006 Sep;244(3):392-9.

[4]J Nutr. 2013 Jan;143(1):34-40.

感染防御作用を高める経鼻ワクチンの開発が進行中

防ぎたいウイルスに対応する抗体を、直接、粘膜上に増やして感染防御能を高める次世代ワクチンの開発も進みつつある。鼻の粘膜に噴霧する経鼻ワクチンというもの。

インフルエンザにかかったとき「ワクチンを接種したのに……」と思った経験はないだろうか。従来の注射による皮下接種型ワクチンは感染後の重症化抑制を主な目的にしている。「皮下接種型ワクチンは、主に血中に多いIgGというタイプの抗体を誘導することによって重症化を防ぐが、s-IgAのような粘膜免疫を誘導できないため、感染自体を防ぐには不十分であることが課題となっている」(長谷川センター長)

そこで、長谷川センター長が研究・開発しているのが経鼻ワクチンだ。「粘膜上にワクチンを噴霧することで、実際のウイルス感染で起こるのと同様の粘膜免疫が誘導できる。そのため、感染自体を防げる可能性がある」(長谷川センター長)という。

動物を対象にした試験で、経鼻ワクチンは同じ型のウイルスによる感染を阻止することが確認されている[5]。さらに、噴霧したワクチン株と異なる型のウイルスにも対応する交叉防御効果が高いことや、ヒトの鼻粘膜上で、インフルエンザウイルスの不活化力が高い多量体のs-IgAを増やすことが確認されている。「多量体のs-IgAは、ほかの抗原にも対応する『交叉防御』力が高いため、流行するウイルス株の予測が外れても効果を発揮する可能性がある」(長谷川センター長)といい、実用化が待たれる。

最後に、長谷川センター長による、この冬の感染防御のためのポイントをまとめた。

マスクなどで喉を保湿、保温
気温低下と乾燥から喉粘膜を守るために、マスクなどで乾燥を防ぎ、保温する。
食事制限などを避け、バランスのよい食生活を
食事摂取量を極端に減らすことを避け、さまざまな食材から栄養をバランスよくとる。特に、ビタミンDには抗菌物質ディフェンシンを誘導したり、広く免疫細胞を活性化したりする働きがあるため、これを多く含む魚類を意識して摂取し、難しければサプリメントで補いたい。ビタミンD合成を促す適度な日光浴や十分な睡眠の確保も重要。
歯周病は早めに治療
歯周病は口腔内の菌叢に悪影響を与える。歯周病の原因菌の中にはウイルスを活性化するものもある。唾液量が下がるとそれに含まれるIgA量も低下するため、口腔内の乾燥に注意して、清潔な状態を保とう。
腸内環境を整える
乳酸菌類や食物繊維をとることは、直接的な免疫細胞刺激作用を促し、腸管や上気道の粘膜免疫の維持につながる。

上気道と腸の免疫能低下に気を付け、冬の感染症を遠ざけたい。

[5]Microbes Infect. 2007 Sep;9(11):1333-40.

(ライター 柳本操 イラスト 三弓素青)

長谷川秀樹センター長
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター・センター長。北海道大学医学部医学科卒業。北海道大学大学院医学研究科、米国ロックフェラー大学、ユニバーシティカレッジダブリン、国立感染症研究所感染病理部を経て2019年より現職。実験病理学、感染症病理学を専門とし、経鼻粘膜投与型インフルエンザワクチン開発を行う。
森田達也教授
静岡大学農学部応用生命科学科。同大学大学院総合科学技術研究科農学専攻応用生命科学コースを兼任。岐阜大学卒業。食物繊維の栄養生理作用、腸内細菌叢と大腸生理機能、ムチンと粘膜バリアについて研究する。
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