タレント・ハリー杉山さん 父の言葉は常にストライク
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回はタレントのハリー杉山さんだ。
――お父様は米ニューヨーク・タイムズ紙の東京支局長などとして活躍された英国人のヘンリー・スコット・ストークスさんです。
「一番尊敬する人で親友です。前回の東京オリンピックの年に来日して以来、日本をベースに活動してきました。約10年前から認知症と筋肉が硬くなるなどの症状があるパーキンソン病を患い、現在は自宅近くの介護施設にいます。以前は毎日2時間面会していましたが、3月以降は新型コロナウイルスの感染予防でタブレット端末の画面越しにしか会えず、フラストレーションがたまりました」
――ファーストネームで呼び合う仲とか。
「日本人の母と僕の3人家族で、子どものころから母のまねをして『ヘンリー』と呼んでいました。英国ではマナー違反ですが、たしなめられることはありませんでした。寛容で、原稿の締め切り1時間前でも一緒にサッカーをしてくれるなど、いつでも息子を優先してくれました」
――取材現場にも連れて行ってくれたそうですね。
「6~9歳のころ日本外国特派員協会の会見に連れていってくれました。『おまえもフリーランスのジャーナリストだから』と質問するよう促され、当時小結の舞の海関に『好きな技は何ですか』と聞いたのを覚えています。『友人に会うから』と韓国に連れられて、大統領就任間もない金泳三氏やサムスンの会長らに会ったこともあります」
――11歳で英国に渡り、13歳で中高一貫の名門パブリックスクール、ウィンチェスター・カレッジに入学されたのはお父様の指示ですか。
「まったくありません。尊敬する父に少しでも近づき、父と同じ道を歩もうと、すべて自分で決めました」
「ただ、父方の一族で過去200年、名門のオックスフォード大かケンブリッジ大を受験して合格しなかったのは自分だけでした。ずっと心残りでしたが、後にテレビ番組で父と対談したとき、『You failed upwards(君は上に向かって失敗したんだ)』と言われました。後の成功につながる、いい失敗をしたという意味です。胸のつかえが取れました。父はいつもストライクの言葉を投げてくれます」
――タレント活動に専念するにあたって何か言われましたか。
「自分にしかできないこと、やりたいことをするよう励ましてくれました。タレントは自分のブランドで自分の言葉を自由に発信できる21世紀のジャーナリズムと思い、誇りを持ってやっています」
「実はつい先日から1日15分、父に直接面会できるようになり、近々会いに行きます。今回の東京オリンピックは父と競技を見られるチケットが当たっていました。来年こそ一緒に見に行きたいです」
(聞き手は生活情報部 堀聡)
[日本経済新聞夕刊2020年11月24日付]
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