「この研究では、体重1kg当たり1.5gのアルコール摂取と、かなり多めの量を飲んでいます。体重が80kgの被験者が120gのアルコールを摂取しているということになります。ウオッカ60mLを4杯なので、どう考えても日常的に飲む量とはいえませんよね」(藤田さん)

…ということは、もっと少ない量であれば、筋肉の合成に影響はあまりないということなのだろうか? また、お酒の種類によって影響の大きさが変わったりしないのだろうか。わずかな希望を持って、藤田さんに聞いてみた。

「現在、どれくらいの量なら問題ないか、というデータはありません。ただ、先ほど挙げた研究の結果から推測すると、筋トレから十分に時間を空ければ、ビール(350mL)1~2缶くらいであれば影響が少ないのかなと思います」(藤田さん)

筋肉の合成が高まるのは筋トレの直後で、その後、合成率がだんだんと下がっていく。先ほどの研究も、2~8時間後の合成率について調べたものだ。そのため、十分に時間を空けて、少なめの量のアルコールを飲む分には、影響は少ないのではというわけだ。

「それから、お酒の種類はあまり関係なく、トータルのアルコールの量が問題になります。ですので、ワインのように、食事とともにゆっくり飲めるお酒か、低アルコールのお酒を選ぶようにするといいと思います。血中のアルコール濃度が急に上がらないようにするのがポイントです」(藤田さん)

朝筋トレして、夜ビール1缶ならOK?

明確なエビデンスはないにせよ、「350mLのビール1~2缶は許容範囲」と考えると、筋トレラブの酒好きとしては、ちょっとホッとする。

ホッとしたところで、藤田さんに気になる質問を1つ。先生ご自身は筋トレ後にお酒を飲むのでしょうか?

「きましたね、その質問が(笑)。僕は朝トレーニングして、夜にほぼ毎晩、ビールを1缶(350mL)飲んでいます。自宅ではこれ以上、飲みません。筋トレ直後に飲まないのは、筋トレ後の筋肉の合成のピークが1~2時間後だから。夜にお酒を飲むのであれば、朝に筋トレを行うのが効率的ではないかと思います。筋トレを行う時間帯による筋肉合成の差は少ないと考えられます。さらに言うと、注意しているのは空腹で飲まないということです。体内におけるアルコールの吸収を緩やかにし、血中アルコール濃度を急激に上げないようにするためです」(藤田さん)

朝筋トレ! これは良さそう。オンライン取材で、パソコンの画面越しでもわかる引き締まった藤田さんの姿を見ると、説得力大である。

「大切なのは、継続する、習慣化するということ。私の場合、トレーニングは毎朝30分で、筋トレとジョギングを15分ずつです。筋トレは、部位を日によって『今日は下半身』『今日は上半身』のように変えれば、飽きずにできます。筋トレは、やり方によっては週2~3回でも効果は出せますが、『明日にすればいいや』などと言い訳して先送りしそうなので、毎日することにしています」(藤田さん)

藤田さんが言うように、何より大事なのは「継続」。筋トレの効果がイマイチという方は、酒量と筋トレの時間を見直すと同時に、飲みを優先してサボっていないかを振り返ってみよう。そして、繰り返しになるが、「トレーニング直後に飲むのは絶対NG」だ。

次回は筋肉の合成に欠かせないたんぱく質の効果的な摂り方について、引き続き藤田さんにお話を伺っていく。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト、図版制作:増田真一)

[日経Gooday2020年11月9日付記事を再構成]

藤田聡さん
立命館大学スポーツ健康科学部 教授。1970年生まれ。1993年、ノースカロライナ州ファイファー大学スポーツ医学・マネジメント学部卒業。1996年、フロリダ州立大学大学院 運動科学部 運動生理学専攻 修士課程修了。2002年、南カリフォルニア大学大学院 キネシオロジー学部 運動生理学専攻 博士課程修了。2011年より現職。運動生理学を専門とし、老化と共に起こる筋量と筋機能の低下(サルコペニア)に焦点をあてた骨格筋タンパク質代謝についての研究を行っている。監修本に『筋肉がつく! やせる! タンパク質データBOOK』『図解眠れなくなるほど面白い たんぱく質の話』、共著に『スポーツサイエンス入門』など。

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