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「風邪は抗生物質で治る」は間違い 薬効かない体に?

ストレス解消のルール

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

風邪のはやる季節だ。医療機関を受診する人も目立ちそうだが、気を付けなければならないのは「抗生物質信仰」に陥っていないかということ。もし、「抗生物質を飲んでおけば安心」だと思っているのなら、「薬が効かない体」になっている可能性がある。近年、この問題が世界中で広まっているのをご存じだろうか? 「特に風邪のはやるこの時期は注意が必要」だと警告を発する長崎大学大学院の迎寛教授に「抗生物質信仰NGルール」を教わった。

◇   ◇   ◇

風邪を引けば、「自分で治す」と、薬を飲まずに汗をかくほど暖かくしてとにかく寝ては、野生児のごとくムリヤリ(?)風邪を治すのが私の流儀だ。

とはいえ、風邪になると高熱に加えて「せき」が辛い。前回記事「周囲の目が気になる『せき』 止めるのNG、喉温めて」でも書いたが、「せき1回で2キロカロリーも消費」するといわれているのだから、一晩中寝込んでせきをしていれば、体中が疲弊するのは間違いない。そのため、風邪のために医療機関に駆け込む姿にも合点がいく。

「風邪を引いたから抗生物質を下さい」は間違い

――迎教授「結城さんは正しい治し方をしていますね。本来、風邪は自分の免疫力で治すもので、薬で治すものではありません。あくまで薬は症状を和らげるためのもの。風邪のウイルスを全滅させるものではないのです」

とはいえ、風邪を引くたびに「あぁ、クリニックで『抗生物質』をもらったから安心だ」とつぶやく声を耳にしては、「抗生物質は無敵なのか!?」と思ったこともある。

――迎教授「それが、現在医療で問題になっている部分なのですよね。まず気を付けていただきたいのは、医療機関で『風邪を引いたから抗生物質を下さい』と、気軽に言わないでいただきたいということです」

抗生物質は体によくないのだろうか?

――迎教授「いえいえ、そういうことではなく、風邪の『ウイルス』には効かない」ということです。風邪は、ノドや鼻にウイルスが感染することで炎症を起こす疾病です。『抗生物質』は『細菌』には効きますが、『ウイルス』には効果がありません。当然、新型コロナウイルスやインフルエンザにも効かないですね」

病原体としては、「ウイルス」や「細菌」などがあり、大きさや構造が違う。そのため、「細菌」に効く抗生物質は、「ウイルス」には効かないということのようだ。

ウイルスと細菌の違い

ウイルス


大きさは0.0001ミリメートル(0.1μm)程度(小さいものだと、ノロウイルスが0.04μm)。細菌の約10分の1~100分の1。自分では細胞を持たず、内部に遺伝子を持っただけの単純構造の微生物。他の細胞に入り込んで生存する。単独では増殖できないが、一度細胞に入りこむと、自分のコピーを増やして細胞を破裂させては他の細胞に侵入する。繰り返しコピーを作って増殖していく。新型コロナウイルス、インフルエンザ、風邪、ノロウイルス、風疹などがある。

細菌


大きさは0.001ミリメートル(1μm)程度。細胞を持ち、自己複製能力を持つ微生物。納豆菌や乳酸菌など体内で役立つ菌、人体の皮膚や腸内に住みついて環境を保つ菌まで種類は豊富。病気を起こす細菌には、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、結核菌などがある。

抗生物質をムダに使うと体内でクスリが効かない細菌が増える。

――迎教授「風邪のシーズンになると、『風邪を引いたから抗生物質が欲しい』と訴える患者さんに、私も出会うことが少なくありません。怖いのは、こういう誤った薬の飲用で体内に『薬剤耐性菌』が増えてしまうということです」

抗生物質が効かない、あるいは効きにくくなった細菌が「薬剤耐性菌」だ。本来、体内ではさまざまな菌がバランスをとりながら生活をしている。ところが、抗生物質を乱用してしまうと体に必要な菌まで死んでしまい、生存のために変異し薬が効かなくなる薬剤耐性菌が増加。つまり「薬の効きにくい体」になってしまうのだ。すると、細菌による感染症治療はもちろん、手術などでの感染予防を困難にするなど、さまざまなリスクを招くことになるのだという。

「必要なときにだけ使う」ことが大事

――迎教授「今は、『抗生物質を無駄に使うな』という時代。世界中で深刻な問題になっていて、国を挙げて警告をアピールしています」

2019年4月、国連は抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が世界的に増加し危機的状況にあるとして各国へ対策勧告。実際、日本でも2017年に国内で「薬剤耐性菌」によって8000人以上が死亡したとの推計もある(国立国際医療研究センター http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20201029_press.pdf)

――迎教授「ひとつの薬が効かなくなったので別の薬を開発しても、これもまた効かなくなり……と、医療界での耐性菌対策はイタチごっこ状態。菌が近くの菌に情報を与えて耐性菌が広がることもあります。いつの間にか体内に『耐性菌』が存在してしまったために、初めての感染治療で使ったことのない抗生物質でも効かないという困ったケースが出てきているのです」

国立国際医療研究センター病院「抗菌薬意識調査レポート2020」によると、「『抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける』は間違いである」の正解者は18.1%。「『抗菌薬・抗生物質は風邪に効果がある』かどうか」についての回答も、正解が25.3%、間違えた回答が34.3%と正解を上回った。

――迎教授「本当に必要なときに抗生物質を効かせるためには、必要なときにだけ使うことがとても大切。まずは正しい知識を持っていただきたいですね」

症状が長引けば抗生物質が処方されることもある

実は私、以前、風邪が長引いてしまって医療機関に駆け込んだ際に「抗生物質を処方しましょう」と言われた記憶がある。効かないのに処方されてしまったのだろうか?

――迎教授「それはウイルス感染から細菌感染に変わったからでしょうね。目安は『たんを伴う』かどうかです」

風邪を引いて「たん」が気になりだすのは、引き始めよりも長引いたときという印象がある。

――迎教授「どちらかというと、ウイルスによる風邪の場合はたんよりもせきが目立ちます。症状が長引いて膿性痰(のうせいたん)つまり緑色の汚いたんが出てきたら、『細菌による感染症に移行したのではないか』と医師は疑います。細菌感染ならば、抗生物質が有効になるのです。ちなみに、肺炎や慢性細菌感染、結核などの細菌感染症でもたんを伴います」

風邪から「細菌感染に移行する」ことがあるのは、どうしてだろうか?

――迎教授「ウイルス感染により免疫力が弱くなったり正常な気道粘膜が傷つけられたりすると、細菌に感染しやすくなるのです」

『細菌感染症』と診断されて抗生物質を処方された際に、注意することはあるのだろうか?

――迎教授「症状が改善したからといって、自己判断で抗生物質をやめたり量を減らしたりしてはいけません。感染症をぶりかえしてしまう恐れがありますし、薬が減れば体内に生き残っている病原菌が薬に慣れて耐性菌に変わってしまうリスクもあります。体内から完全に病原菌がいなくなるように、薬は医師から処方された量と回数通りに飲み切ってください。また、薬である以上抗生物質も副作用が出ることがあるということも分かっておいていただきたいですね」

抗生物質が効かなくなる薬剤耐性は、今や世界的な脅威だ。

日本では政府が11月を「薬剤耐性(AMR : Antimicrobial Resistance)対策推進月間」に定めている。

――迎教授「新型コロナウイルスも怖いですが、肺炎・尿路感染症・菌血症などの細菌感染症の脅威も忘れてはいけません。抗生物質の効かない耐性菌は20、30年前よりも確実に増えています。そのためにも、まずは『抗生物質を無駄に飲まない、飲み方を間違えない』ことが非常に大切です」

風邪やインフルエンザに加え、今年は新型コロナウイルスの脅威が吹き荒れている。

手洗い、うがい、マスクなどの感染症対策はもちろん、処方された「薬」は正しい飲み方を心がけ、「薬の効く」体で、あらゆる感染症に打ち勝ちたいものだ。

【抗生物質信仰NGルール】
ルール1「風邪を引いたから」と、医療機関でむやみに「抗生物質」を欲しがるのはNG
ルール2「治ったから」と自分の判断で薬の服用をやめるのはNG
  ⇒必ず、処方通りの量と期間を守り、処方分を飲みきる
ルール3「自分は大丈夫」だと手洗いなどの感染対策を怠るのはNG
  ⇒感染症の予防には手洗い、うがい、マスク、ワクチンを忘れずに

(イラスト 斎藤ひろこ[ヒロヒロスタジオ])

迎寛さん
長崎大学病院副病院長。長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 呼吸器内科学分野(第二内科)教授。1985年長崎大学医学部卒業後、長崎大学医学部第二内科、宮崎医科大学第三内科を経て、97年カナダブリティッシュコロンビア大学 Pulmonary Research Laboratory留学。2007年長崎大学大学院医歯薬学総合研究科准教授。09年産業医科大学医学部教授。15年長崎大学大学院教授、19年長崎大学病院副病院長に。
結城未来
エッセイスト・フリーアナウンサー。テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。農林水産省水産政策審議会特別委員でもある。

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