「ばかばかしさ」を追求して 怒濤の日々(井上芳雄)第81回

日経エンタテインメント!

今だからこそコメディーをやる意味

この7人以外にも、すご腕のミュージカル俳優たちががっちりと脇を固めてくれていて、みんなで毎日真剣に全力で笑いに向き合っています。幕が開く前は、今の時期にこんなにふざけたコメディーをやっていいのだろうかと思わなくもなかったのですが、開けてみたら、今だからこそやる意味があったのかなと思いました。お客さまは、何も考えずに大笑いできて、現実を忘れられる時間や、劇場の非日常空間を楽しんでいただけていると思うので。結果的には、よかったのかなと感じています。

ミュージカル『プロデューサーズ』の舞台(写真提供:東宝演劇部)

日本では11月から大きなミュージカルがたくさん幕を開けました。これは世界的にはまれな状況です。ブロードウェイの劇場街は2021年5月まで閉鎖が決まっているし、欧米の人からすれば、今ミュージカルの公演をやれていること自体が奇跡的。だから演劇界を代表してやらせていただいているという思いもあるし、同時にいつこの状況が覆るかも分からないから、1回1回の舞台をかみしめながら、という気持ちも強いです。

今年はコロナ禍で大変なことがいろいろありましたが、1年の締めくくりに、こんなにゴージャスでばかばかしいミュージカルをできるとは、なんて幸せなことだろうと思います。願わくば、このミュージカルの力が多くの人に希望と勇気を与えられますように。

さて、最後にお知らせがひとつ。この連載が初めて単行本になります。2017年7月から3年半にわたって連載してきた記事をテーマ別に再編集して、書き下ろしを加えました。『夢をかける』という書名で12月21日(月)に全国の書店で発売されます。よければ、ぜひ読んでみてください。

『夢をかける』 井上芳雄・著
ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に今年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(12月21日発売/日経BP/2700円・税別)
井上芳雄
1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第82回は2020年12月5日(土)の予定です。

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