こうしてクリードはピーク時、連結総資産1200億円の東証1部上場企業にまで成長した。しかし、2008年のリーマン・ショックで風景は一変した。09年1月、東京地裁に会社更生法の手続き開始を申し立てた。負債は650億円。利益が出ていたが、支払いにあてる現金が尽きて倒産する「黒字倒産」。金融機関の融資回収が決め手となった。

いったん転んだ宗吉だが、ただでは起きなかった。これまで人が誰もやったことのない手法で再び立ち上がる。使ったのは「DIP型」と呼ばれる会社更生手続き。破綻前の経営者が管財人として残ったまま手続きを進めるもので、適用は全国で初めてだった。「だからこそ意味がある」。宗吉自らが携わることで通常の2倍の速さで再建を果たし、債務を整理することができた。

再建が迅速に進んだことで、宗吉の第2のスタートも速まった。ただ、単純な再出発は選ばなかった。シンガポールの永住権を取得、次の舞台に選んだのは東南アジアだった。ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア――。「もはや日本には未練はない。次はアジアだ」。そう言い切り、平均年齢20~30歳の若い国々での第2の挑戦を決めた。

今のところ「選択は間違っていなかった」。日本では難しい1000戸規模マンションの巨大開発プロジェクトを東南アジアの国々で複数走らせ、いくつもの街をつくった。ベトナムで探し当てた現地パートナー、不動産会社のアンギアは、クリードに経営ノウハウを学び、2020年1月9日、ホーチミン証券取引所に上場を果たした。どれもこれも東南アジアでなければ体験することができないダイナミズムだった。

クリードのベトナムのパートナー、アンギアのモデルルーム。日傘で顧客をエスコート

もちろん誰もが同じ道を歩めるわけではないだろう。宗吉には伊藤忠時代に培った不動産と金融、経営の知識、それにクリードを立ち上げ、破綻後も会社をきちんと再建させた経験と実績がある。

宗吉をよく知る投資家の村上世彰は「不動産を見抜く目の確かさには僕に匹敵するものがある」と話す。宗吉に信頼をおく村上は「チマチマやってないで、ガツーンと行きなよ。ガツーンと」と攻めの姿勢を推奨する。

現在、宗吉は世界に5つの家を持つ。それぞれの地で、現地パートナーとの関係を深め、投資家を招き、新プロジェクトについて侃々諤々(かんかんがくがく)議論を戦わせている。新型コロナ禍で投資マネーが行き先を失っている今だからこそ、様々な可能性が生まれていると考える。

動乱はすべてをリセットする。それまでの秩序を壊す。弱者や敗者、これから成り上がろうとする者たちがはい上がるはしごが天から下りてくる。宗吉はまだまだ旬である。

=敬称略

宗吉敏彦
1965年生まれ。早大理工卒、伊藤忠商事に入社。不動産開発やコーポレートファイナンスに従事した後、1996年クリード設立。2012年からはマレーシアを皮切りに東南アジアでの不動産投資に着手、現在、シンガポールに拠点を移し、マレーシア、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナムで事業を展開している。

(前野雅弥)

負債650億円から蘇った男 アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

著者 : 前野 雅弥、富山篤
出版 : プレジデント社
価格 : 1,540 円(税込み)

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