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『「太平洋の巨鷲」山本五十六』著者の大木毅氏。戦略、作戦、戦術の3段階から山本長官を分析した

『「太平洋の巨鷲」山本五十六』著者の大木毅氏。戦略、作戦、戦術の3段階から山本長官を分析した

今年は太平洋戦争(1941~45年)開始からちょうど80年。緒戦の米ハワイ・真珠湾攻撃を構想・成功させたのが山本五十六・連合艦隊司令長官(元帥、1884~1943年)だ。海軍を代表する名将との評価がある一方、具体的な指揮などでは一部で批判されている。軍事史を研究する現代史家の大木毅氏は『「太平洋の巨鷲」山本五十六』(角川新書)で「戦術、作戦では平凡だったが戦略面で卓越していた」と位置づける。

◇   ◇   ◇

――2021年の今日でも、太平洋戦争時の提督といえば山本元帥を連想する人が少なくありません。対米戦争に反対したにもかかわらず戦場の指揮をとらざるを得なかった悲劇の名将というイメージです。

「1930年代までは軟弱な親英米派として山本の世評は芳しくありませんでした。しかし真珠湾攻撃などで大きな戦果を挙げると一転して名将のイメージが固まりました。大戦中の大仏次郎、山岡荘八、戦後の阿川弘之各氏らによる伝記が刊行され、人気俳優を山本役に起用する邦画も相次ぎました。しかし旧海軍出身者からの批判も根強く、そうした論調の本が80年代から出版されました。ミッドウェー海戦の敗北、米戦闘機に待ち伏せされての戦死といった点に注目する『凡将』論です。ただ山本への高い評価も続いており、ジャーナリストの半藤一利氏の著作も刊行されています」

真珠湾作戦を成功させた山本五十六・連合艦隊司令長官には批判の声も一部残る

真珠湾作戦を成功させた山本五十六・連合艦隊司令長官には批判の声も一部残る

――欧米の軍事史研究では戦略・作戦・戦術の3階層で戦争を分析するのが主流だそうですね。戦略は幅広く戦争計画の策定や国家資源の戦力化、同盟関係の分析などを含みます。作戦では戦略次元で設定された戦争目的を達成するための軍事行動の立案、戦術は戦闘・交戦に勝つための方策です。

「真珠湾攻撃を除いて作戦・戦術レベルの山本はミッドウェー海戦やガダルカナル戦役など平凡か、それ以下の指揮しか示せていません。作戦目的の二重化、兵力の分散、航空優先の不徹底などが指摘されています。ミッドウェーで米軍の攻撃が5分遅れていれば逆転勝利できたというエピソードは戦後の創作でしょう」

「しかし戦略レベルでの山本のセンスはズバ抜けていました。航空総力戦を予想しての戦力整備、日独伊三国同盟への徹底した反対、対米戦争は必敗との認識などです。当時日本必敗論に達した人はわずかで、明確に表明した者はもっと少なかったのです。不本意な戦争を強いられた後のリスクの大きな連続打撃、短期戦略論も80年後の視点で分析すれば最適解を求めたと言えるでしょう」

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