問いが深まる過程を楽しむ

厳密にWhyに答える形になっていなかったり、5回繰り返すのが難しいといった声も生徒からあがった。大切なのは、表面的な形式ではなく、問いがどんどん深まっていく過程で学校に対する見方が新しくなっていくこと。問いから発見へのプロセスの体験だ。それぞれの学校のグループワークの一例を見てみよう。

<渋谷教育学園のグループワークの一例>
「どうして学校には昼寝の時間がないのか?」
why→眠くなる欲求にはあらがえないから
why→結果的に授業を聞けなくて非効率
why→時間がもったいない
why→せっかくハイレベルな授業を受けられるのに
why→自分の意思に反して学びたいことが学べないから

「そんなに授業中、寝ているの?(笑)」と先生方からすかさずツッコミが入ったが、「昼寝」という意外なテーマを考えた女子生徒は大真面目で、「時間や場所にとらわれる対面授業って非効率な面がある気がする」と話した。コロナ禍でオンラインなど新しい授業の形がでてきて、学校での時間の使い方に疑問を持つようになったという。

<自由学園のグループワークの一例>
「なぜ学校では年齢で区切られるのか」
why→好きなタイミングで学校に入ってもいいと思うから
why→みんなが同じように成長するわけじゃないから
why→年齢でわけなくてもお互いを高め合えるから
why→同じ年齢だと共通点が多いのかもしれない
why→(年齢が混ざっていれば)いろいろな価値観を知れていいことがあるかもしれない

学校では同じ学年の生徒らで過ごすことが多いが、その「常識」に素朴な疑問をぶつけている。こうした問いをきっかけに、「学校がない時代はどうしていたのか」「日本の生徒は学校に何を求めているのだろう」など、様々な角度から考えを巡らせていた。

各グループの「問い」と「発見」には、ある傾向があった。はじめの問いの段階では、「なぜテストがあるのか?」「なぜ受けられる科目は決まっているのか?」など、学校について日々不満に思っていることが目立った。しかし、問いをブラッシュアップした後の発見は、「学校は幸せを求めるところ」「芸術は人生を豊かにするもの」など、ポジティブな表現に変わっているものが多かった。

問いから発見に至るプロセスを楽しむ

今回の取り組みに参加した渋谷教育学園には、全生徒が自分なりの問いを持って論文を書くという独特のカリキュラムがある。社会科教諭の大貫礼史さんは「社会がどんどん変化するなかで、世の中で一般的に言われている常識に疑問を持つ力はいっそう重要になる」と指摘。「知識と問う力の両方がそろうことで、生徒たちは世の中の問題を自分ごととして考えることができるようになるはずだ」と話した。

自由学園も今年度から探究学習を授業科目として設定した。生徒が自分で興味のあるテーマを定めるという。自由学園副学園長・最高学部(大学部)特任教授の成田喜一郎さんは「学園もいままさに、様々な改革の最中。(問いの道場の中で出た)生徒らの問いや発見からヒントをもらうことができた」と感想を述べた。

学習指導要領の改訂によって、高等学校の「総合的な学習の時間」が2022年度から「総合的な探究の時間」に変わる。「学習」ではなく、あえて「探究」という言葉が使われたのは、複雑化する社会において、生徒による主体的な課題設定が求められるようになるからだ。問う力が今後さらに重要になるのは間違いなさそうだ。

(講師役=桜井陽 安田亜紀代)

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