問いのコツ教えます 学校って何?を探究する出張授業

渋谷教育学園渋谷中学高等学校での出張授業の様子
渋谷教育学園渋谷中学高等学校での出張授業の様子

「生徒が『良い問い』を立てられるようになるには、どうしたらいいでしょう」。学生に役立つサイトをめざすU22に最近、学校の先生からこんな相談が寄せられるようになった。探究学習や調べ学習など、生徒がみずから課題を見つけて掘り下げるカリキュラムの広がりが背景にあるようだ。問いを立てるのが仕事である新聞社の記者として、何かヒントを提供できるかもしれない。こうした思いから、U22は「問いの道場for school」を開講。学校現場への出張授業を実施した。

「問いの道場for school」は9月末に渋谷教育学園渋谷中学高等学校(東京都渋谷区)の高校1年の生徒約40人に対面で、10月下旬に自由学園(東京都東久留米市)の中1~高3の約40人にオンラインで実施した。今後も同様の取り組みを展開していく予定。

まずはウオーミングアップとして、「問い」をたくさん出す練習。いのししが街中に出没して暴れているという設定で架空の記者発表資料を用意し、模擬記者会見を開いた。

「けが人は?」「いのししの大きさは?」など、基本的な情報を確認するための問いから、「なぜ市街地にいのししが現れたのか」「今後の対策は」「過去にも同様の被害はあったのか」といった原因を追究するものや比較を伴うものなど、あっという間に多様な問いが集まった。

模擬会見の前に、問いのタイプを説明した。英語の疑問詞の頭文字を取って「5W1H」というが、問いは2種類に分けられる。「When(いつ) Where(どこ) Who(だれ)」の確認系と、「What(なに) How(どのように) Why(なぜ)」の探究系だ。このポイントを生徒らに意識してもらうことで、抜けもれなく問いを立てる練習になる。

場が暖まったところで、本題に移った。まずは、あるテーマに対し、制限時間内にできるだけ多くの問いをあげていく練習。今回は両校とも、「学校」をテーマにした。学校から連想することがらを、問いのかたちで生徒らに付箋やノートにどんどん書きだしてもらった。ハル・グレガーセン著「問いこそが答えだ! 正しく問う力が仕事と人生の視界を開く」(光文社)に書かれた手法なども参考にした。

あつまった問いの例
「なぜ学校では鉛筆を使うのか」
「なぜ教室の窓に網戸がないのか」
「友人は多い方がいいのか」
「すべての学びは先生から教えてもらうものなのか」
「なぜ学校で女子はスカートなのか」
「なぜ教壇があるのか」
「なぜ小学校が6年、中学が3年、高校が3年という分け方なのか」

5分程度の間に20個もの問いを1人で出せた生徒もいた。実際の取材でも、たくさんの問いをつくっておくことで、テーマに広がりを持たせることができる。

次は3人ほどのグループになってもらった。それぞれの生徒が出した問いの中から、「これをもっと深めてみたい」という問いを1つだけ選んでもらう。数十個の問いの中からたった1つを選ぶのは、ハードな作業だ。あえて1つに絞るのは、良い問いとは何かを生徒らに考えてもらうためだ。

なにが良い問いなのかについては、様々な考え方があるが、ここでは「良い問い」の定義を「みんな(=多くの人)が考えたくなる問い」としておいた。自分ひとりだけの問題意識はもちろん大切。ただ、グループの中で話し合い、メンバーから「一緒にこれを深掘りしたい」と共感を集めるような問いは、良い問いである可能性が高い。

グループになって問いを深めていく

ワークはさらに続く。「良い問い」を1つ選んだら、それに対してWhy(なぜそう思ったのか?なぜそれが大事だと思ったのか?)を5回繰り返して、問いをブラッシュアップしていく。

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問いが深まる過程を楽しむ