「佐藤快磨監督が5年の歳月を費やした作品を一緒に撮れたっていうことが、うれしいことでした」

子どもと親を育てる「ナマハゲ」の面

『泣く子はいねぇが』は、1989年生まれの新鋭・佐藤快磨監督が、秋田県の「男鹿のナマハゲ」に着想を得て作り上げたオリジナル作品。その脚本に魅了された是枝裕和監督が企画として参加した。吉岡さんは、大人になりきれない主人公の後藤たすく(仲野太賀)と離婚し、シングルマザーとなる女性・ことねを演じている。

「オファーは、佐藤監督からお手紙でいただきました。まずお手紙をくださること自体がうれしくて、文面からは作品への愛情や、私に演じてほしいという気持ちが伝わってきたので、『これは絶対にやらなきゃいけない』という使命感とともに出演を決めました。

脚本は、生活での小さな心の動きが丁寧に描かれていて、普遍的な物語だと感じました。女性はおなかに赤ちゃんを宿すけど、男性はそれがない。いつ、どうやって父親になればいいのか分からないという葛藤が自然に描かれているところもいいなと思いました」

ことね役を演じる吉岡里帆さん(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

「ことねは特殊な技術が必要な役ではないので、大事にしたのは心の持ち方でした。特に子どもを持つ女性というリアリティーがないと成立しないと思ったので、子育てをしている友達に話を聞いたり、育児マンガをたくさん読んだりして参考にさせていただきました。『ああ、こんな瞬間に母親になったと感じるんだ』とか『こんな時間に幸せを感じるんだ』とか、いろいろと勉強になりましたね」

ナマハゲは、秋田県男鹿市で大みそかに行われる伝統行事。数人の青年が鬼の面をかぶって家々を訪れ、「泣く子はいねぇが!」と叫んで子どもたちを怖がらせる。18年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。

「ナマハゲって、『鬼がやってくるから、1年間良い子にしてなきゃだめよ』っていう、子どもに対する戒めの行事という印象だったんです。でもこの作品では親が子を守り、子を守ることで男を父親にしていくという、父性の象徴のような文化でもあるという佐藤監督の解釈を聞いて、この伝統文化を受け継いでいく重要性も感じましたね。

実際に触れると、鬼の面はかなり重くて、『こんなに重いものをかぶって家中を走り回るんだ』と思いました。劇中でたすくの父親が木を彫って作るように、地元の人たちの心がこもったものだと知って、現場に置いてあるだけでも、存在感がすごかったです。

完成した映画は、たすくが一歩を踏み出す姿に、エールをもらえるような作品になったと思います。私自身も、この作品を通して少し強くなった気がします。母親の役を演じるのは初めてでしたし、演じるうちに芯の強さみたいなものが芽生えてきて、何か吹っ切れるような感覚がありました」

「ナマハゲの魅力は、やっぱり怖いところ。子役の子が本当に泣いて、『いやだー!』って逃げようとするんですよ」
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