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世界遺産ストーンヘンジに地下トンネル 賛否が交錯

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ナショナルジオグラフィック日本版

英国政府がストーンヘンジの世界遺産登録エリアの地下に、4車線のトンネルを建設する計画を承認したことで、論争が巻き起こっている。

現在ストーンヘンジのそばを走るハイウエーA303は、道幅が狭くて交通渋滞がひどいことで悪名高い。そこで総工費22億ドル(約2300億円)の改善計画が進んでいるが、問題となっているのはこの計画の一部である長さ3.2キロのトンネルだ。

このトンネルは、考古学者や環境保護活動家、そしてストーンヘンジをあがめる人々から強い反対があったにもかかわらず、承認された。賛成派は、トンネルにより本来の景観を取り戻し、年間160万人を超える観光客がより良い体験ができるようになると主張する。

「観光客は、すぐそばを走るトラックの大渋滞を見ることなく、ストーンヘンジのあるべき姿を味わえるようになります」と話すのは、ストーンヘンジをはじめ、英国の400以上の史跡を管理する慈善団体「イングリッシュ・ヘリテージ」のキュレーター長アンナ・イービス氏だ。

「ストーンヘンジは、単なるストーンサークル以上のものであり、一つの景観なのです。人々はそれを忘れているか、気づいていません」と同氏は言う。「トンネルの建設により、ここは再び散策に適した場所になるでしょう。例えば、南から近づく際に、命懸けでハイウエーを横断しなくてもよくなります」

一方、反対派はこのトンネル・プロジェクトが、まだ解明途中の古代遺跡に取り返しのつかないダメージを与える恐れがあると主張している。2020年6月には、ストーンヘンジの近くで、巨大な円周上に配置された20本の深い縦穴が発見され、これを調査する間、政府はトンネル・プロジェクトの決定を4カ月延期することを余儀なくされた。

「リモートセンシング(センサーによって遠隔でものを調べる技術)は、考古学に革命をもたらしました。そのおかげで、古代の景観に対する我々の理解が、変わりつつあります。よく知っていると思っていたストーンヘンジでさえもです」と、この思いも寄らぬ縦穴を発見した「ストーンヘンジ隠された景観プロジェクト」の共同リーダーを務める英ブラッドフォード大学の景観考古学者ビンス・ガフニー氏は話す。「あそこにこんなものがあるとは、誰も考えていませんでした。このほかにも何があるか、誰にもわからないでしょう?」

ハイウエーA303は、もともとロンドンとエクセターを結ぶ18世紀の馬車道だったが、今やイングランド南西部への大動脈の一つになっている。ストーンヘンジへの観光客のほか、コーンウォールやデボンの海辺に向かう多くのトラックや旅行客が通る。

A303の最も有名な渋滞箇所の一つは、ウィルトシャー州のエイムズベリーとバーウィックダウンの間の狭い2車線の区間だ。この区間こそ、英国で最も人気の高い観光名所の一つであるストーンヘンジからわずか180メートル以内をハイウエーが通る場所だ。

「この道路は、これほどの交通量を想定して設計されてはいませんでした」と、A303の歴史に関する本『Highway to The Sun(太陽へのハイウエー)』の著者トム・フォート氏は話す。「長い年月のうちに少しずつ改良して道幅を広げ、今では中央分離帯のある4車線のハイウエーになりましたが、ストーンヘンジ周辺の区間は常にやっかいな場所でした。ここをどうすべきか合意を得られたことは、これまで一度もありません」

この交通問題に対して、数十年で50以上もの解決策が提案されてきた。トンネル案が最初に出されたのは1990年代初頭のことで、その後何度か再検討されたが、高額なコストを理由に毎回却下されてきた。

今回承認された計画では、ストーンヘンジ周辺のハイウエーを4車線に拡張し、ストーンヘンジの南わずか200メートルほどの所を通過する長さ3.2キロのトンネルを地下に掘るという。

トンネル自体は地下約40メートルと、考古学的な遺物が見つかる層のかなり下を通るが、その進入路や出入り口は、遺物が大量に眠る可能性のある世界遺産の敷地内の表土を通る。ガフニー氏はこれを懸念している。「トンネルをもっと長くして、遺跡全体の下を通す必要があります。こんな風に世界遺産を掘り返すべきではありません。我々には、古代遺跡を大切にする義務があるのです」

この発表に先立ち、トンネルに反対する地方の農村や、遺跡・史跡を保護する団体は、政府に計画の再考を求めた。「仮にストーンヘンジでのA303の拡張が必要不可欠だとしても、地中深い場所を通る少なくとも長さ4.5キロのトンネルを建設すべきだ」と、15万人の署名を集めた請願書では述べられている。「これより短ければ、この景観に取り返しのつかないダメージを与え、世界遺産条約に違反することになるだろう」

また、反対派は、トンネル掘削に先立つ考古学的な予備調査が、学術的な発掘と同程度の高い水準で行われないことに対する懸念を表明した。

「もし私が一研究者として、ストーンヘンジのような世界遺産で発掘を行おうとすれば、表土を100%精査することに同意する必要があります」と、ストーンヘンジで長年発掘を行ってきた英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン考古学研究所のマイケル・パーカー・ピアソン氏は話す。「そうしなければ、許可を得られないのです。考古学的遺物の大多数は、表土で見つかるからです」。ところが、同氏によると、トンネルの建設業者は表土のわずか1%だけを調べればよいという。

一方、賛成派であるイングリッシュ・ヘリテージのイービス氏は、表土すべてを調査することは、この規模のプロジェクトでは標準的な方法ではないと言う。「この道路は、これまでにも調査や考古学的な評価が行われてきました。そして、適切な発掘や調査により、重要なものを何一つ見落とすことのないようにしてきたのです」と同氏は話す。

考古学者で「British Archaeology」誌の編集者であるマイク・ピッツ氏も同意する。「今回のトンネル・プロジェクトに関連する地域の表土は、何世紀にもわたり幾度となく掘り返されてきました。発見される可能性が高いのは、あらゆる考古学的文脈から外れた石器と、それを製造する際に生じる破片だけです」

英ボーンマス大学の考古学者ティモシー・ダービル氏も、「私はトンネルに大賛成で、できるだけ早く作ってほしいと思います」と言う。「世界遺産に道路を建設しようとしているわけではないということに注意する必要があります。一部の人が考えているようなものではなく、既存の道路を撤去して地下に移設するプロジェクトなのです」

現在の道路は一種の災害であり、改善が必要なことは誰もが認めるところだと、同氏は言う。「6月の夏至を祝うライブ映像を見ればわかります。車が通る音が、一晩中聞こえます。交通量が非常に少ないはずのロックダウン(都市封鎖)中だったにもかかわらずです」

さらに、トンネル計画を支持する理由がもう一つあると、ダービル氏は語る。「トンネル建設が進まない場合は地上での拡張になる可能性が最も高いと、ハイウエーの管理会社である『Highways England』は説明しています。そんなことは、誰も望んでいないのです!」

(文 ROFF SMITH、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年11月16日付]

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