石津「プリント柄のネクタイはいいですね。なんか新鮮だなあ。レジメンタルタイなんて決まり切っていて面白くないもんね。昔もプリントの小紋がはやって、よく着けていたけど、ここまで(柄で)勝負に出なかった」
「遊び」教わるのも店の楽しさ
――確かに、ネクタイが個性的で楽しいですね。トラッドなのに、攻めたプリント柄。
鴨志田「イタリアのプリント地を使っています。ネクタイは普通ジャカードがメーンですが、重いでしょう。プリントでしか出せない軽やかなエレガンスってあるんですよ。僕はネクタイはあえて個性的なものを出しているんです」
石津「トラッドの店でネクタイコーナーがひどいな、と感じるところがあります。もう、なんとかしろよ、という感じで。でも、それを修正できる人がいないの」
――どうひどいのでしょうか。
石津「トラッドネクタイのABC、といった50年前のセオリーがそのまま続いている。でもね、男の服って襟幅でもネクタイでも、ミリ単位が勝負。ネクタイも7センチなのか、8センチなのか、8.5センチがいいのか、そこを考えないと。でも在庫を無駄にしたくないから、そろばん上、細部のデザインを変えたくないんだろうね」
――きょうの鴨志田さんのネクタイは、タイバー(ネクタイピン)とピンホールカラーでVゾーンが立体的ですね。
鴨志田「僕は貴金属ものがあんまり好きではなくて、タイバーも若い頃は絶対しませんでした。でも、ちょっとこう、“わざと”っていう演出もポール・スチュアートらしさなんですよね(笑い)。このアイテムは最近見かけませんから、新鮮かなと思います」
石津「僕もアンチタイバーではありません。実はたくさん持ってるの、タイバー」

――男の服で惟一「役割」が無くて遊べるものがネクタイ、というのが石津さんの持論ですよね。
石津「小物で遊んでもいいよね。そんなことを教わるのも店の楽しさ。やっぱり要は人だな。僕は、鴨志田さんが毎日店に立ってくれているなら、いつでも来たいな」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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