――言われてみると、レディースでも「ミニマルな内観」が増えています。

鴨志田「それはそれでいいのかもしれません。ただ、メンズでクラシックな、味わいのあるアイテムの場合は違います。一つ一つは極めてベーシックなアイテムでも、色合いであったり、季節を感じるものであったり、スタイリングによって、そのブランドらしさがにじみ出ますし、着る人らしさが出る。それが男の楽しみ。そうしたメンズショップの原点を表現したんです」

ディスプレーに表れる「店の個性」

――考え抜いたディスプレーにはブランドのにおいが感じられます。

石津「もともと男の服はデザイン勝負ではないんだよ。だって形は100年変わっていないのだから。ここにあるものも、僕が服の業界に入った60年前から扱った覚えのあるものばかり。それをどう見せておしゃれ心を刺激していくか、販売員の腕の見せどころなんですよ」

「ディスプレーを示してお客さまとスタイルについて話す。そんなメンズショップの原点を大切にした」と話す鴨志田さん(右)

――ディスプレーは、ワザを披露するステージみたいなものですね。

石津「男のアイテムはいつの時代も変わらないけど、ブランドや販売員の合わせ方によって、スタイルを変化させることができます」

鴨志田「そうなんです。ここにある何てことのない茶色のスリッポンでも、ほかのブランドだったら、デニムに合わせるかもしれません。でもポール・スチュアートでは、こじゃれたスカーフと合わせている。すると、全然見え方が違うでしょう。そういう楽しみ方をしてほしいんですよね」

「僕は、VANやテイジンメンズショップ、メンズクラブなどを通して、男の服を楽しんだり、学んだりしてきました。自分が経験してきたことをそのまま、店で表現しています。(壁のディスプレーを指して)こういう帽子とスカーフを組み合わせた見せ方は以前は普通でしたが、いまはほとんどないんですよね」

――ネクタイもこうして他のアイテムとともにテーブルに並べると、すてきだな、触ってみたいな、と思わず手が伸びます。

鴨志田「空間でコーディネートを表現するのは絵や彫刻と一緒です。この丸いテーブルの中で、どう間を取るか、どう描くか。これが店の個性なのです。とはいえ経験値やその人の趣味がものをいう側面があり、売り場のスタッフに作りなさい、といってもなかなか難しいんですよね」

スモーキーな色調のプリントネクタイはシャツだけでなくグローブ、ハットと合わせる。丸テーブルの中に絵画を描くように並べて
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「遊び」教わるのも店の楽しさ
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